『マニャーナの法則』──今日ではなく「明日やる」ことにする5分で読むビジネス書

この仕事は「今日中に」対応するべきか? 一般には、すぐやること、先延ばしにしないことが推奨されていますが、本書では「明日やること」のメリットを説きます。

» 2008年04月08日 23時02分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]
表紙

マーク・フォースター『マニャーナの法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)

 私は、この本を通じ「仕事をすべて終わらせる」ことの大切さをお話ししています。ただし、「すべて」の内容が明確でないと、終わったかどうかがわかりませんから、それがわかったうえで、毎日、その日の仕事が終わるようにする必要があります。

 今までのタイム・マネジメント術は、1日の仕事に関し、この「すべて」が何かを定義していませんでした。つまり、終わったかどうかが明確にはなっていなかったわけです。(p.170)


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 まずは、次の問いについて考えてみてほしい。解答は末尾で。

 次の仕事は「今日中に」対応するべきか?

  1. クライアントから電話。情報がほしいとのこと。資料はファイルにあるので、メールで送るだけだ。
  2. 職場の仲間からメールが届いた。内容は「このサイトは必見。プロジェクトに必要な情報がつまっている」
  3. PCの時刻表示が間違っているのに気づいた。
  4. 同僚が来て、「今日中に仕上げたいリポートがあるので、至急データが欲しい」と言う。

 「マニャーナ」とはスペイン語で「明日」を意味する。本書の内容を一言でいえば、

  • 仕事を、その発生と同じ日に手がけるのは極力避ける(p.112)

 ということになる。つまり、仕事を「明日やる」ことにするわけだ。その根底には次のような考え方がある。

  • 明日まで待てないほど、緊急な仕事はない

 つまり、「今日」行われる仕事というのは原則としてその前日以前に発生した仕事ということになる。そして、その発生源として、次の3つが挙げられている。

  • 今日届いたメール
  • 今日発生した書類
  • 今日受けた電話

 いずれも「即レス」や「即対応」が望ましいところだが、本書ではすべて翌日に回して種類ごとに、つまりメール、電話、書類それぞれをまとめて処理することが推奨されている。

 もちろん例外はある。クレームやトラブルが発生し、何らかの損害が発生している場合や、販売店の店員や消防士など常に「その場での対応」が求められる職業についている場合だ。それ以外はこの「明日やる」を原則とする。そして、この原則を貫くことによって得られるメリットは次の通り。

  • 邪魔がほとんど入らない
  • 1日の計画が立てやすい
  • 1日の仕事量と負荷が均衡する
  • 遅れの原因がすぐ分かる

 そもそも仕事は、大きく次の2つに分けられるだろう。

  1. 前日からやろうと思っていた仕事
  2. メールや書類や電話によってその日に発生した仕事

 予定通りに仕事が進まない、という状況は2の仕事によって1の仕事の時間が圧迫されることが原因といえる。そこで、2の仕事を翌日に回すことによって、2の仕事を1の仕事に変換するわけだ。

 筆者は、これを次のようになぞらえて理解した。

  1. 冷蔵庫に入った、下ごしらえの済んだ魚を料理する
  2. 断続的に入荷されて来る魚をその都度1匹ずつ料理する

 「魚を料理する」という仕事を考えた時、2の方法では量はさばけないだろう。一方、1の方法であればある程度の量をまとめて料理できる。つまり、入荷されてくる魚はとりあえず下ごしらえだけ済ませて冷蔵庫にしまい、料理をするのは翌日に回す、ということだ。

BOOK DATA
タイトル: マニャーナの法則
著者: マーク・フォースター 著
出版元: ディスカヴァー・トゥエンティワン刊
価格: 1300円
読書環境: ×書斎でじっくり
△カフェでまったり
◎通勤でさらっと
こんな人にお勧め: その日に予定していた仕事がいつも終わらない、という人。

 もちろん、入荷してその場で料理をするほうが鮮度は高まるだろう。だが、本書の主張は「明日まで待てないほど、緊急な仕事はない」、すなわち“冷蔵庫”にしまっておけば十分に明日までもつ、という前提に立っている。

 もし、それで問題があるなら、あとは組織の問題ということになる。例えば、上司が思いつきで「これ、今日中にやっておいてくれ」などという指示を部下に出すようなら、そこから改善する必要があるというわけだ。

 以上の原則を実際に仕事に適用していくためには、今までの常識を覆す必要がある。本書にはそのためのエクササイズが豊富に用意されており、これに答えていくことで、あなた自身の仕事に対する考え方はもちろん、働きかけ方によっては組織全体の考え方を改めることも視野に入ってくるだろう。

 なお、冒頭のエクササイズの解答は以下の通り(本文より)。

  1. クライアントが「至急」と言っていないので、「今日中に」対応する必要はありません。電話=至急ということではありません。
  2. 「現行のプロジェクト」の緊急性が分かりません。「今日中」に対応する必要なし。
  3. メモしておいて、明日修正しましょう。
  4. 「今日中にほしい」は「ギリギリまで放っておいた」ことの言い訳。他人の効率の悪さのせいで、自分の計画を壊す必要はありません。「明日まで無理」と答えてください。

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