英語の読み書きのために“インターネットそのものを表現辞典として活用”するという、実用的な手法を、丁寧に紹介する一冊。
安藤 進 著 『翻訳に役立つGoogle活用テクニック』(丸善刊)
実務の現場で英語を読んだり書いたりするときには、英語の意味がわからず頭をかきむしったり、的確な英語表現が思いつかず苦吟したりすることが多いものです。インターネットそのものを表現辞典として活用すれば、大半の問題が瞬時に解決できます。
意味のわからない英語に出会ったら、そのまま丸ごとフレーズ指定で検索してみることです。実際によく使われている表現なのか、それとも特殊な例外的な表現なのか、ヒット件数をみればすぐわかります。(p.115)
その名の通り、英語を攻略する武器としてのGoogle活用法を提言する。基礎編・演習編・まとめ、の3部からなり、特に第2部の演習編が本書のキモとなる。
「翻訳に役立つ」とあるが、英日だけでなく日英、すなわち英文を書く必要に迫られている人にも有益なガイドとなるだろう。例えば、本書で紹介されている、日本語を英訳する際の代表的な手順は以下の通りだ。
全く白紙の状態から書き始めるのは困難なため、取っかかりを得るために「エキサイト翻訳」などの機械翻訳を活用するわけだ。
いうまでもなく機械翻訳の結果は、不自然な直訳になったり、意味不明な英文になったりしがち。そこで、Googleを使ってその「英語らしさ」を検証し、補正をかけるわけだ。具体的には、フレーズ検索を通して、翻訳結果が実際に使われている表現なのかどうかをチェックする。
その上で、原文の日本語を修正しながら機械翻訳を重ねていき、最後はイメージ検索やワイルドカード検索など、Googleを使い慣れた人にとってはおなじみの特殊検索を駆使して、より自然な英文に仕上げていく。
イメージ検索は、使われている英単語が目的の英文の文脈に合致するかどうかを確かめるための手段だ。本書では、「建設現場では、ヘルメットと安全靴の着用が義務付けられている」という文を例に英訳手順が紹介されているのだが、この文脈における「ヘルメット」は「helmet」ではないことがイメージ検索によって確かめられる(正しくはhelmetではなくhardhatである)。
ほかにもさまざまなケースを挙げながら、事例とともに英訳や和訳の方法が解説されている。
BOOK DATA | |
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タイトル: | 翻訳に役立つGoogle活用テクニック |
著者: | 安藤 進 |
出版元: | 丸善 |
価格: | 1680円 |
読書環境: | ×書斎でじっくり ◎カフェでまったり △通勤でさらっと |
こんな人にお勧め: | 英語の読み書きの必要に迫られている人。 |
2003年10月刊行ということで、やや古さはあるものの「インターネットそのものを表現辞典として活用する」という考え方そのものは今でも変わらない。体系的にまとめられた本書を一読しておくことは、今すぐ英語を必要としている人にも、今後学ぶ必要に迫られる人にもその素地(そじ)を作る上で助けになるはずだ。
なお、本書では「エキサイト翻訳」が紹介されているが、現在では「Yahoo!翻訳」や「Google翻訳」という選択肢もある。また、用例検索に特化した「英語例文検索 EReK」も必要に応じて活用するといいだろう。
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