部下を育てるキモ「受け入れて、認める」を実践するための3つのQ&A部下をやる気にさせて育てる指導術(2/4 ページ)

» 2008年09月22日 08時30分 公開
[水野浩志,ITmedia]

認める要素を見い出せない部下を認める方法

読者 実践するのは根気がいりそう。「1から10まで説明したのに1もできない部下」に対してとか、認める要素を見い出すのが難しい。


 まずはこちらから。「ほめても叱っても部下は育たない」で説明した、「受け入れて、認める」という「うみの言葉」は理解できるけど、部下によっては実践するのが難しいのではないか――そんな読者からの質問です。


 そうですね。確かになれていないうちは、根気が必要になるでしょう。また、認める要素を見い出すことも、最初は大変難しいことだと思います。

 私自身、最初にこの「受け入れ、認める」ことをやり始めたときには、大変でした。この方のように、「この人のこの結果の、いったいどこを認めてやればいいんだ?」と頭が真っ白になることも結構多かったんですよね。「それって、さっきちゃんと説明したでしょ! なのに何でできてないの?」と、思わず口に出しかかってしまうようなことも日常茶飯事でした。


 水野さんでもそんなことがあったんですね。結局、どのように認めたらいいのでしょうか。


 認めがたい事が起きたとき、私は自分の中の心理状態をつぶさに観察するようにしているのですが、何回かそのいらだちを経験したところ、そうなってしまう状況に一定のパターンを発見しました。

 1つは「受け入れる前に認めようとしてしまう」こと。「受け入れ、認める」ことに慣れないうちは、ついつい認められるところを最初に探そうとしてしまいます。しかし、探していると「こいつ人の話聞いてたのか?」と思ってしまうような、相手の欠点やミスが往々にして目に付いてしまいます。そうなると、相手を受け入れる事も認める事もできなくなるのです。


 なるほど。確かに「認めて」から「受け入れ」るようなパターンに陥ってしまいがちです。特に仕事の場合は、「こいつできるのかな?」などと受け入れもせず判断しがちですね。


 ですから、まず最初は、相手の認められるところを探そうとしないようにしましょう。もっと極端に言えば「認める」ことを一旦忘れてしまい、100%ひたすら受け入れるということに努めるのです。

 念のために、改めて説明しておきますが、この話をするとたいてい何名かは「あんな人、受け入れられません!」と感情的になる人がいます。ですが、「受け入れる」という行為には、感情を伴わせる必要はありません。

 受け入れるとは「好感を持って相手を受け入れる」ことではなく「ああ、あの人はそう考えるのだ」と、感情を交えずに受け止めることなのです。

 例えば、人に暴力をふるう人がいたとしたら、その行為の善し悪しや好き嫌いはまず脇に置き、「この人は、人に暴力をふるいたい人なのだ」と受け止めること。受け入れるとはそういうことです。このプロセスで感情的になってはいけません。この点は誤解のないように注意して下さい。


 ふむふむ。受け入れる、というよりは受け止めると考えた方がいいのかもしれませんね。


 その通りです。受け入れる、ということに抵抗がある方は、まずは、その事実を受け止めるところから始めてみてもいいでしょう。そうやって、マイナスの感情を廃して事実を見つめることを続けていくうちに徐々に相手を受け入れる気持ちも持てるようになってきます。


 でも水野さん、こちらが手取り足取り教えているのにうまくいかない場合があります。そうなると、何度も何度も教えることになったりして、やっぱりイライラして受け止めることが難しくなってしまいます。そういう場合はどうしたらいいでしょう?


 もちろん、そういうパターンもあります。このパターンは指導する側が「自らに非はない」と思い込んでしまうということ。「自分は1から10まで説明した」ということで自分自身を正当化し、「なのにあいつは」と考えてしまうと、やはり心穏やかではいられません。

 しかし、自分の説明で部下ができなかったという厳然たる事実を理解しましょう。まずはそれを受け入れた上で、この事実に変化を起こしたいと考えるのです。この場合、部下の能力はすぐに変えることは無理ですから、自分自身の部下に対しての指導方法を見直すということが、問題解決の一番の早道になるはずです。

  • 本当に自分は1から10まで教えたのかな
  • 1から10だと難しい? 1から3くらいにした方がいいのかも
  • 本当に1から10だけでいいのか? 0や100も教えておいた方がいいのかも
  • 1から10ではなく、AからZのような切り口で教えた方がいいのかも

 上記のように指導方法にも、見直すポイントは沢山あります。私自身も指導プロセスを常に見直し、上手く伝わらなかった部分や思うように理解してもらえなかった部分をきちんと見直すようにしています。受講者の理解力に頼るよりも、自身の指導方法を変えていく。そうやって、受講生にきちんと受け止めて理解してもらうレベルを、日々高めているのです。

 このように、指導をするにあたり、「自分の指導が部下に上手く伝わらなかった、という事実も感情を交えずに受け入れて」、そして部下に伝わる指導の工夫をしてみるということが、ストレスをためずに根気よく続けていく部下指導の秘訣(ひけつ)かもしれません。

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