へたに怒ると相手との人間関係が崩れるかもしれない――。そう思って怒りを引っ込めたことはありませんか? でも怒った方がいい場合もあります。権利を守ったり、自分を奮い立たせたりする時です。
怒りではなく、建設的な方法で目的を達成した方がいいと言いましたが、そもそも怒りが使えない人がいます。
この怒れないというのは非常にマズイですね。怒れないと、怒りがわいてきてもフタをして、悶々(もんもん)としたり、自分を責めたり、物に当たったり、酒やタバコ、ギャンブルにはまるなど、嗜好(しこう)に走ったりするわけです。その結果、アル中になってしまう人もいます。怒るだけなのはよくないし、怒れないのもマズイ。怒ることもできる。でも別の方法も選べる――というのが一番いいですね。
私自身は、怒りの代わりに建設的な手法で目的を達すること、自分の怒りの裏側にある悲しみや認めてもらいたい気持ちを自覚して行動することを大前提にしていますが、そうではないケースで、実は怒った方がいい場面もあるのではないかと思っています。
それは、(1)権利を守る時、(2)自分を奮い立たせる時、(3)本気さを伝える時の3つです。どういうことか順番に見ていきましょう。
「権利を守る時」の中には、さらに精神的権利を守る時、物理的権利を守る時、第三者を守る時の3つがあります。
1つ目の「精神的権利を守る時」というのは、侮辱されたり馬鹿にされたりした時です。
長く続くようであれば、時には「ちょっと言い過ぎじゃないですか。そんなふうな言われ方をしたらできません」と言う必要があります。特に親しい関係では、時にはビシッと言っておかないと、「アイツは舐めていいんだ」と軽く見られます。
ビジネスの場面では、立場上、難しいこともあるかもしれません。でも、頻繁にあっては困りますが、年に1〜2回だったら、腹の立つクライアントに対して、ハッキリ言ってもいいのです。相手に明らかに侮辱する姿勢があったとしたら、時には怒って、「常に侮辱される付き合い方はしたくない。こちらはキチンと良い物を作っている。今みたいな馬鹿にされたような態度では、もう一緒に仕事はできない」と言うべきなのです。
じゃあ契約終了、という可能性もありますけど(笑)、でも大抵は「お、コイツ違うぞ」となって、気に入ってくれます。ゴマをすってばかりだと、搾り取られた揚げ句に切り捨てられますね。
昔は腹を立てて言い過ぎてしまい、本当に仕事がなくなることもあったのですが、今はその対極に来ていますね。あまりにも客にペコペコし過ぎる。サービスが至れり尽くせりで、カスタマー視点が強すぎる。お客の奴隷のようになっています。
不思議と、プライドを持ってお客さんと接すると侮辱しないお客さんが来て、ボロカスに言われようともゴマをすって仕事をもらうようなところには、侮辱するお客さんばかり集まるのが面白いところですね。
「お客様は神様」ではなくて、自分がしっかりといいものを提供して、それを正当に評価してくれる人と付き合っていかないとやっていけません。一生懸命やってもさげすまれているようでは、精神的に辛いだけではなく、そのうち経済的にも成り立たなくなります。
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