プライド、お金――「守る」ための怒り「正しい」怒り方、教えます(2/2 ページ)

» 2008年09月24日 14時10分 公開
[平本あきお(構成:房野麻子),ITmedia]
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2.正論不要――「イヤだ! いらない!!」攻撃を

 2つ目の「物理的権利を守る時」というのは、例えば何かの勧誘を断る時です。

 「生命保険に入りませんか」「○○を買いませんか」などの勧誘に、明らかに必要ないものなのにノーが言えない人が多いですね。だから、渋谷なんかで若い人が、何十万円もするエステのローンを組まされてしまう。最初の話と違うことになっているのに、なぜか怒らないんです。

 これではダメです。


 「こんなのおかしいですよ。あなたは30分1000円って言ったからここに来たのに、それがあと80万円ってなんですか! そんなのおかしい!!」

 そう言って、怒らなくちゃいけません。怒りの内容は、なにも理路整然としてなくていいんです。あちらは会話のプロなので、正論をぶつけてもかわされてしまうだけ。勝てません。

 だからこそ、唯一対抗できるのが怒りなんです。逆に冷静になっては駄目です(笑)。「イヤだイヤだ! いらない!!」と怒って、相手に「ああ、コイツうるさい」と思わせればいい。

 物理的権利にはお金がかかわってきます。自分でしっかり守りましょう。

3.子供を守るため――ハッキリと「ダメでしょ!」を

 3つ目の「第三者の権利を守る時」というのは、例えば、子供が道路に飛び出した時「何やってるの!」と怒って止める、というようなことですね。これが「駄目よ〜」とのんびりしていたら本当に轢(ひ)かれてしまいますから。

 それに、ハッキリと危険だと教えておかないと、子供自身が、危険なことを自覚した上で止まることができません。だから危険なことをしたら、怒っ。て本人に学ばせなくてはいけませんね。

 怒らずに全部お母さんがやってあげていると、子供は好き勝手に行動し、下手すると他の人を傷つけないとも限りません。最近は他人に自分の子供が注意されると「ウチの子になにを言うんですか!」と怒る親もいるそうですが、よそさまに被害が及ぶようなことをしたら、ちゃんと怒って止めさせて、教えないと駄目です。この場合の第三者とはよそさまのことですね。

 もっと言えば、その子が将来、他人に迷惑をかけても平気な人間に育ってしまうと、結局はその子自身が苦労します。だから、第三者に迷惑をかけないために怒るということが大事になります。

「くそー! 見てろよ」――怒りのパワーを建設的行動に変える

 自分を奮い立たせるために、怒りを使った方がいい場合があります。

 例えば、新しい環境で緊張していて、自分らしく行動できないような時に、「自分はいったい何してんだ!? こんなことをするために、ここにいるんじゃないぜ!」といった感じで奮い立たせる。

 私も怒りで奮い立ったことがあります。昔、別荘が500棟くらいある清里のレストランで、ウエーターになって皿洗いをやったことがあります。ウエートレスが11人いて、皿洗いは私1人。11人のウエートレスが皿を持って駆け込むようにやってきます。洗っても洗ってもキリがない。かといって、もう持ってくるなとも言えないですよね。

 最初はただ必死に洗っていたんですが、そのうち段々腹が立ってきて、「くそー! 皿の5枚や10枚、割れてもかまわん!!」という勢いで洗い出したら、全部洗い終えることができました。時間がかかったり徹夜になったりする仕事の時には、冷静にやらない方がやる気が出るでしょうね。

 怒りと似ている感情で、復讐(ふくしゅう)心などでも奮い立たせることができます。

 例えば、すごく頑張ったのに、思ったほど給料が上がらなかった。ひどく落ち込んで、査定した上司に対しても腹が立っている。そして、会社を辞めようかなという気持ちになった矢先に、ノルマが1.5倍になったとします。

 あれだけやって認められないのにノルマだけ上がると思ったら段々腹が立ってきて、「見てろよ〜! 絶対達成して、給料上げろって言ってやるっ!」と決意して、急に仕事がバリバリできるようになる、というようなこともあり得ます。本当に復讐してしまうなど、後ろ向きな行動に使ってはいけません。あくまで建設的に使うべきなのです。


 次回は、怒った方がいい3つ目の場面についてお話ししていきます。

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ピークパフォーマンス 代表取締役

平本あきお(ひらもと あきお)

 1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は、『すぐやる! すぐやめる!技術 ― 「先延ばし」と「プチ挫折」を100%撃退するメンタルトレーニング』。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。


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