予算と聞くと、どうしても購入費用にばかり目がいきがち。だがプリンタを購入した後は、印刷ごとに必ずコストがかかるし、故障すれば修理費用だってかかってしまうのだ。
素材メーカーのアラレでは、「チームで使うプリンタを購入せよ」という指令のもと、プリンちゃんとターくんが、プリンタ初心者ながら所属チームのプリンタ選びに奔走。2人は予算内に収まる候補を、必要機能、印刷速度、印刷時間、解像度を元に候補を絞り込み、「最適な一台」も目前だ。
だがここで、見落としていたことが……。ランニングコストである。2人は購入前に考えておく必要があると、助言役のドクトルPに提案されたのだった――。
ドクトルP さて2人とも、プリンタを買う時はもちろん、買った後にも費用がかかるって考えたことはあるかな?
ターくん えー? ないです。
プリンちゃん 私も。でも言われてみたら紙とかトナーとか電気とか……なんかいっぱいありそう。
ターくん そっかあ……だよね。あと修理代とかもあるよ。
ドクトルP そうなんだよ。だからプリンタを購入する時は、こういった使うほどかかる費用のことも考えておく必要があるんだ。じゃあ早速、ポイントを見ていこう。
プリンちゃん&ターくん はい、よろしくお願いします!
本体価格など購入時に必要なコストを「イニシャルコスト」(または「初期投資」)という。本体価格15万という予算から始まったプリンちゃん、ターくんの2人のプリンタ選びは、このイニシャルコストのみを念頭に入れたものだ。
一方、インクやトナー、印刷用紙、電気代、保守管理費用などプリンタを導入した後に必要になるコストを「ランニングコスト」という。プリンタ選びの際は、プリンタを使えば必ずかかるランニングコストのことも、実は考慮しておく必要があるのだ。
というのは、このコストは増えることはあっても減らない。プリンタ本体価格は予算内に収めたものの、ランニングコストが予想以上にかかり、プリンタの使用を使うな、なんてことにでもなったら、プリンタを買う意味がなくなってしまうからである。そうならないために、あらかじめランニングコストのシミュレーションし、なるべくコストのかからない使い方を研究するなどしておくことも重要だ。
2人が候補に挙げているプリンタのトナーのランニングコストについて考えてみよう。
まずプリンちゃんは、最終候補に沖データのA3カラーレーザー「C8600dn」を挙げることにした。「カラー」「A3サイズ」「自動両面印刷」「ネットワーク」と、必要な機能を満たす予算内の候補のうち、7万5000円と価格が圧倒的に安く、おまけに増設ユニットのオプションを付けてもなお、価格内に収まったからだ。このプリンタ使うには、当然シアン/マゼンタ/イエロー/ブラックの各色のトナーが必要になる。
A4用紙約2000枚に印刷できる標準トナーでは、ブラックの価格が5775円、ほかの3色が各7140円だ。同様に約5000枚に印刷できる大容量トナーでは、ブラックが1万3650円、ほかの3色が各々1万4700円となる。
トナー代を印刷可能枚数で割れば、A4用紙1枚当たりのトナー代が分かる。標準、大容量のどちらがコストがかからないかを比べると――標準トナーではモノクロ印刷時が約2.9円、カラー印刷時が約13.6円、大容量トナーではモノクロ印刷時が約2.7円、カラー印刷時が約11.6円となる。
モノクロ印刷の場合、標準トナーと大容量トナーの価格差は1枚あたり0.2円。1000枚印刷しても200円の違いにしならない。数万枚の印刷枚数にならないと実感できるほどの差にはならないだろう。一方カラー印刷では、1枚当たり2円の差。5000枚でも1万円違ってくるなど、数千枚の印刷でも、実感できるコストの差がはっきり出てくるのだ。
こうした場合は、ブラックトナーは標準サイズと大容量サイズを適宜利用し、デザインやイラストの印刷でよく使うと予測されるカラーのトナーは原則、大容量トナーを使うという運用を考えておくといいだろう。
一方ターくんは、セイコーエプソンのA3モノクロレーザー「LP-S4500Z」を最終候補の1つに挙げている。必要機能を満たす予算内候補のうち、毎分40枚と、最も印刷速度が速かったからだ。こちらのトナーは、色がブラックのみで容量サイズも標準のみ。トナー色、容量サイズとも複数あるプリンちゃんよりシミュレーションはもっと簡単だ。
ブラックトナーではA4用紙に約6000枚印刷できる。価格は単体なら1万8000円、2本セットなら3万円。1枚当たりのトナー代は、単体なら3円、2本セットなら2.5円だから、1枚当たり0.5円しか違わない。だが2本セットの方が、単体を2回購入するより6000円割安となる。6000円は決して小さい金額ではないから、単体より2本セットでの運用を考えた方がいいだろう。
以上のように、ブラックとほかの色ではどの容量サイズで運用していくかを適宜変えたり、バラよりセットで運用するなど、候補のプリンタにかかるランニングコストをあらかじめ考慮しておこう。例ではレーザー式プリンタを挙げているが、インクジェット式も考え方は同じだ。インク1本での印刷枚数から1枚当たりのランニングコストを算出して比較・検討するとよいだろう。
ただしシミュレーション通りの使用頻度になるとは限らない。実際の使用頻度が分かるまでは、最小限単位のトナーやインクで、まず試してから本格運用した方が無難だ。
ドクトルP というわけで今回のポイントは――。
プリンちゃん ふむふむ。確かにランニングコストは盲点だったわ。
ドクトルP そう思ったからこのタイミングでアドバイスしたんだよ。
ターくん さすがドクトルP。7回も解説してくれてるだけあって、僕たちのこと分かってくれてますね♪
プリンちゃん ん……僕たち……って同じくくりなの? 私たち。ひどいわ、ええん……。
ターくん そんなあ。僕の方が、ええん、だよ……。
ドクトルP やれやれ……。
次回、2人はメーカーごとに異なる特徴を踏まえ、最適な1台を選ぶことに――。
ランニングコストに対してイニシャルコストというものがある。プリンちゃんもターくんも予算は15万だから、本体価格が15万円内のプリンタを探している。
プリンタの本体価格について気を付けておきたい点がある。プリンタには標準でも多くの機能が搭載されているタイプと、別途オプション品を足すことで機能強化が得られるタイプの2種類があるという点だ。前者かなら問題ないが、後者ならオプションを継ぎ足した時点で予算オーバー――なんてことも起こり得るからだ。こんな時は候補を変えるしかないだろう。
実はプリンちゃんは、この理由から候補を1つ削っているのだ。削ったのは本体の実売価格が約14万円のコニカミノルタの「magicolor 7440」。スペックを見てみると――。
標準装備ではA4用紙の印刷速度がモノクロ/カラーとも毎分25枚で有線LANを搭載、用紙の給紙容量は給紙カセットにA3で最大250枚+手差しトレイにA3で最大100枚の計350枚となっている。
あとは標準装備ではない両面印刷機能があれば、「カラー」「A3サイズ」「自動両面印刷」「ネットワーク」が必須機能だという、プリンちゃんの選択候補の1台になるはずだった。
このプリンタのオプションには「両面プリントユニット」がある。ただし標準価格は5万円。本体の実売価格が約14万円だから、このオプションの実売価格が1万円以内ならいいが、標準価格の80%オフの実売価格というのは、一般的に考えると難しそうだ。
結局プリンちゃんはmagicolor 7440をあきらめることにしたのだ。magicolor 7440の代わりにプリンちゃんが候補に挙げたのは、沖データのC8600dn。標準状態でもプリンちゃんの選択候補の筆頭で、しかも価格は7万円程度と、予算の半額未満だったからだ。増設用のユニット「セカンドトレイユニット」(4万2000円)、256Mバイトの増設メモリ(3万1500円)などオプションを足しても14万3500円と、15万円の予算内に収まった。
またC8600dnのように、本体価格が予算より大幅に下回る時は、場合よっては2台導入する方法もある。
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