家電量販からリユース業へ、ワットマン社長の決断がもたらしたもの社長の決断、社員の変化(1/3 ページ)

家電量販からリユース業へ――業種転換という社長の大きな決断から4年目を迎えていたワットマン。従業員数、店舗数ともに最盛期の3分の1となったが、成長性を見込めるリユース業への挑戦は社員の意識を変えたという。

» 2008年10月10日 12時00分 公開
[一柳麻衣子,ITmedia]

社長の決断が会社を変え、社員を変える――。時代の流れが速くなっていると言われる現代、ダイナミックな変化を遂げた会社の社長を追う連載「社長の決断、社員の変化」が始まります。


ワットマン清水一郷社長。レイスの「社長名鑑」で動画インタビュー

 2004年に家電量販店からリユース業へ業種を転換し、成長を続けているのが神奈川県・横浜市に本社を置く、ワットマンだ。

 1992年にジャスダックに上場した。売り上げ500億円、店舗数約50店舗を誇る家電量販店だったが、上場を維持したまま家電量販業界から完全撤退し、新業態であるリユース業に業種転換。現在は、新古書、中古PC、中古衣類の3本柱である。

 実はこの転換、ワットマンにとっては2度目。現社長の清水一郷さんは25年前、当時社長であった父親の右腕として地元の家電店(当時:電化センターシミズ)から郊外型の家電量販店へ業態転換を経験していた。

 「経験済みと言っても、25年前は家電の業態を郊外型の大型家電店に転換しただけなので、今回とは全く違います」と清水さん。だが、市場の変化に合わせて転換したのは昔も今も同じだ。「今では当たり前のように目にしますが、25年前に郊外型の家電店はまだ少なく、競争相手が少ない。結果としてはよい決断でした。当時は収益も倍々で成長していきましたから」

 業界自体が成長の波に乗ったこともあり、競合企業も出店ラッシュ。当然ワットマンも大きく成長したが、店舗間の価格競争が激しくなっていった。

小さくても成長する新しい市場で勝負する

 成長期があれば成熟期も訪れる。家電量販店の大型化も値下げ合戦も、過当競争になった。このままでは大きな成長は見込めない。清水さんは過去の経験から成長性のある市場での勝負に挑む決断を下した。

 「大きな池の中でほかの企業と競争していくより、まだほかの企業がいないような小さな池で勝負したほうが、効率が良いと思います」。清水さんは業種転換の理由をさらりと話す。

 清水さんの言う“小さな池”とは「リユース(=中古)市場」のことだ。車や不動産のリユースはすでに確立されている。そこで、清水さんが目をつけたのは「洋服」だった。

 現在、ブックオフ(新古書・中古ソフト)、ハードオフ(中古パソコンなど)のフランチャイズも手がけているが、ワットマンの中では店舗数、売り上げともに最も多いのが中古衣類を扱うオフハウスだ。

経常利益ベースでは2006年上期から黒字化

 結果に反映されているように清水さんもこの洋服類のリユースには大きな成長性を確信しているという。なぜなら、洋服は誰もが持っていて、新しいものがすぐに出てくるサイクルの短い商品だからだ。

 自動車は持っていない家庭もあるし、持っていても一家に1台が平均的。不動産の所有率は車よりもさらに低い。リユースの要はどれだけお客様が売ってくれるかが、1つのポイントなのだ。

 プレミアが付く古着などではなく、一般の洋服のリユースはまだ定着していないからこそ、清水さんはこのリユースに大きな可能性を感じているという。

 経営者のタイプとして自分自身は「トップダウン型とボトムアップ型のバランスタイプ」だと清水さんは言う。現場も経営も熟知するが、効率よく収益を出すために戦略的な思考を重視する。「戦術はナンバー1じゃなくてもいいけど、戦略はナンバー1を狙って引っ張っていかなくてはいけない」(清水さん)。この戦略がリユース業への転換だったわけだ。新しい市場だからこそ、収益性の高さが望めるし、まだ他社の参入も少ないためナンバー1になれる可能性が大きいのである。

 戦略がぶれない一方、局所的な戦術については、必ずしもこの方法(仕組み)が唯一の正解だと決め付けることはない。売り方、買い方、店作りなどは日々試行錯誤してベストな方法を探って行くことが成長市場では重要。むしろ現場の意見をいかに吸い上げるかが大事なのだ。現場の試行錯誤を生み出す意味でも、むしろ社長は、戦術や戦闘はナンバー1でなくてもいいというのである。

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