前編 写真と動画で“見る”「ポメラ」の開発秘話仕事耕具(1/2 ページ)

いよいよ発売日の11月10日が目前に迫ってきた、キングジムの「ポメラ」。テキスト入力だけという単機能に賛否両論が沸き上がった話題のマシンだ。開発を担当したキングジムの立石さんに話を聞いた。

» 2008年11月06日 20時13分 公開
[鷹木創,ITmedia]

 先週のランキングを席巻した「ポメラ(で書くポメラ日記)」。いよいよ発売日の11月10日が目前に迫ってきた。2万7300円という定価も賛否両論だったが、一部店舗では1万円台での販売も行われるようで、これを機に「買う」と決めた人もいるのではないだろうか。

→ポメラのまとめ記事はこちら

 さて、このデジタルメモだけの単機能が特徴のポメラ、発売までには試行錯誤があったようだ。開発を担当したキングジムの立石幸士さん(開発本部電子文具開発部開発課)に“試作機”などを見せてもらった。写真を交えながら開発秘話をお届けしたい。

ポメラを手にする立石さん。左はキングジムのイメージキャラクター、キングファイル君
(左)ポメラのモック。発泡スチロールを削り出したものだ。(右)製品版と比較してみた

社内の“モバギ信者”も応援

いわゆるDOSモバギ(MC-MKシリーズ)

 元々「Let's note LIGHT CF-R5」のユーザーだったという立石さん。会議や出先にノートPCを持ち運ぶモバイルユーザーだったのだが、「PCは起動するのに時間がかかるし、バッテリーも持つようにはなりましたが、それでも電池切れが怖くてACアダプタも必ず持って行きました」。なんでもできるPCだが、持ち運び先でやることといったら議事録取りやメモ書きぐらい。それなのに長い起動時間を待ったり、電源の心配をしなくてはならないPCに不便を感じていた。

 実は社内に“モバギ信者”がいたのも、彼を後押しした。モバギすなわちNECの「モバイルギア」である。いわゆるDOSモバギ(MC-MKシリーズ)は、245×122×24.5ミリと持ち運びやすい本体サイズ、横長画面、モノクロ液晶、デスクトップPCに近いサイズの打ちやすいキーボード――など、ポメラにそっくり。開発に影響を与えたことは間違いない。

 モバギのようなPDAに影響を受けたポメラだが、その後は対照的。どんどん多機能になって行ったPDAに対して、立石さんはメモ書きに特化することにこだわった。「これ(メモ書き機能)だけあればいいのに。なんでそういうPDAが存在しないんだろうと思いました。やっちゃう? やっちゃおう! ということで始まりました」

1人の役員が言った――「これならお金を出しても欲しい」

 ただ、あまりにもシンプルだったため、社内でもなかなか賛同者が増えなかった。開発の許可を得るために社内プレゼンテーションを行った役員会議だが、賛否を決める15〜6人のうち、賛成は1人だけ。

 でも、この1人が「これならお金を出しても欲しい。俺は買う」と言ってくれた。それを聞いた社長が決断する。「この人数(15〜6人)の中で、お金を出しても欲しいという人が1人でもいるということは、少ないかもしれないが世の中にもある程度のニーズがありそうだ」――。こうしてポメラの開発が決まったのである。

 当の立石さんは「たとえ否決されても認められるまで開発プランを出し続けようかと思った」と笑う。実物で説得したかったために「自分だけの試作機を作ってしまおうか」とも思ったほどだ。

デザイン案

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