第2回 「聞き役に徹する」というブログコミュニケーション企業ブロガーの転ばぬ先の杖(2/3 ページ)

» 2008年12月03日 12時20分 公開
[シックス・アパート 中山順司,ITmedia]

コメントは2ポイント、トラックバックは3ポイント――数字を目標にせず、物言わぬサイレントマジョリティーを知る

 ブログを書くようになると、無意識のうちにコメントやトラックバックの数を、「外部からの反応指数」とか「投票ポイント」みたいにとらえてしまう瞬間があります。私も自分のブログへのフィードバックを、バスケットボールみたいに、勝手に「コメントは2ポイント、トラックバックは難易度が高いから3ポイント」みたいな脳内計算をしてしまうことがあります。

 このようにブログでコミュニケーションといわれると、条件反射的に「コメントとトラックバックが指標なのだ」と考えがちで、数を集めることに躍起になってしまうこともあるようです。でも企業でのブログの場合、それらはあくまでバロメーターの1つ程度だと考え、数字が目的化しないように注意してほしいのです。

 それよりも重視してもらいたいのが、目に見えないサインです。それは物言わぬ大多数、サイレントマジョリティーです。サイレントマジョリティーとは、読むだけでリアクションしない層、通り過ぎるだけの大多数です。大半の読者がそれに当てはまりますので、サイレントマジョリティーではなく、サイレントエブリバディと表現してもいいくらいでしょう。

 そのサイレントマジョリティーが何を感じ、何を考えているかを知ることのほうが、コミュニケーションする上でコメントを集めるよりもはるかに重要になります。

「話してから聞く」よりも、「聞いてから話す」のススメ

 通常、ビジネスブログを通じたコミュニケーションというと、積極的な情報発信が前提です。

 一般的な順序としては、

  • ビジネスブログでの発言に対し、外部からのコメント、トラックバックがある
  • 企業の発信に対し、消費者が反応する

 となります。しかし、その「情報を大量に頻繁に発信せねば」という固定観念が、コミュニケーションを停滞させる原因になることもあります。

 「いや、でも企業からメッセージを送るとか、消費者に声をかけるのが当然の順序でしょう」

 「コミュニケーションを始めるには、まず企業から話しかけないと。待っていたって何も始まらない」

 と考えたいところですが、一企業のネット上のつぶやきに対し、世間のレスポンスを期待するのは、考えてみれば困難な話です。

 そこでご提案したいのは、外部のアクションに対し、企業がリアクションするという逆のパターンです。(自分が)話してから(反応を)確かめるのではなく、(反応を)確かめてから(自分が)話すという考え方です。

高く飛ぶために、いったんしゃがむ

 「消費者の声に対し、企業が反応する逆のスタイルって、成立するのか?」

 「そもそも、消費者が何も言ってこないのに、いったい何を始めればいいのか?」

 そこで考え方を、「消費者のネット上ですでにある発言に対し、自社のビジネスブログで答えていく」と180度変えてみてください。土俵を自社のWebサイトに限定せず、ネット全体を俯瞰(ふかん)するイメージで、ネット上での声に耳を澄ましてみましょうという提案なのです。

 少しでも調べてみれば、いやでも消費者たちが何に興味を示し、疑問を感じ、不安を覚え、不満を持ち、期待を抱き、誤解しているのかが見えるものです。それに対し、自社ブログで、疑問に答え、不安を解消し、誤解を解き、期待に応え、怒りを受け止めていく。リアルでは成立しない時間も場所もずれたこの会話は、ネットでは立派に成立します

 初めに聞き役になることは、遠回りではありません。高く飛ぶために、いったんしゃがむようなものです。

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