【番外編】元任天堂のメンバーが作ったフィギュアコミュニティー「fg」ひとりで作るネットサービス(2/4 ページ)

» 2008年12月24日 12時57分 公開
[田口元,ITmedia]
「起業したからには自分でクリエイティブなものを」と話す岡本基さん

 そしてデザートが出てきた時にふっと岡本さんの頭をよぎったのが、「フィギュア写真のSNS」だった。岡本さんの任天堂時代の後輩がフィギュアの原型師になっていたり、知り合いのデザイナーがフィギュアのディーラーをしていたためフィギュアの話が頭に引っかかっていたのだ。

 ふと思いついたアイデアだったが、検討し始めるとどんどん良いアイデアのように思えてきた。まずフィギュアの愛好者は年齢層が高い。感情的になりがちな若年層と比べると、落ち着いた雰囲気でコミュニティーが運営できるのではないだろうかと考えた。また可処分所得も高い。将来何らかのビジネス化を考えた時にも有利に働くのではないか、という下心もあった。

 知り合いからフィギュア愛好者人口について話を聞いていた岡本さんは、フィギュアの人口がアニメのざっと10分の1程度ということも知っていた。コミケの来場者がだいたい40万人とすると、フィギュアのファンが集まる「ワンフェス(ワンダーフェスティバル)」の来場者規模は4万人程度。「どんなにユーザー数が多くても数万人ぐらいなら、小さな会社でも十分運営できるのではないか」と岡本さんは考えた。

 すでに12時間のブレストを行っていた松本さんと亀田さんは、「疲れていて反応が全然良くなかった」そうだが、まずはこれに取り組んでみようということで3人の意見が一致した。亀田さんがPHPのフレームワーク、CakePHPを使ってSNSの骨組みを作り上げることになった。

 「以前SNSを作ったことがあったので、骨組みまではわりとすんなりいけました。参考にさせていただけるサイトも多かったですし」。亀田さんを中心に開発が進められ、1カ月程度で形ができてきた。「ただ、骨組みを作った後が問題です。フィギュアSNSならではの機能を付け加えないといけません」

 独自の機能は2つ考えた。1つは“さまざまな角度から撮影した写真をさっと切り替えて見られるようにする機能”だ。フィギュアの写真は作品1つにつき、角度を変えて何枚も撮影するのが普通だ。そうした写真がさっと見られることが重要になる。そこでほかの写真を縮小画像にしておき、マウスオーバーするだけで瞬時に切り替わるようにした。

 もう1つ付け加えたのは、写真の好きな場所にコメントできる機能だ。flickrやAmazonでよく見るインタフェースである。「Amazonのフィギュア販売ページを見ると、熱心なユーザーが写真にコメントをつけていることに気づきました。『この腕のここが……』『この目の部分が……』。どれもマニアックなコメントばかりですが、愛のこもっているものばかりです。この機能は絶対に必要だと思いました」

300のWebサイトへ、一通一通告知

 こうした機能を追加し、恐る恐るβ版をリリースしたのが2008年10月。まずはユーザーを集めないといけない。そのためにワンフェスの参加者が開設しているWebサイトを探し出し、公開されているメールアドレスのリストを作った。300名ほどのリストを作り、一通一通、サイト名を入れながら「こういうサイトを作ってみました!」という招待メールを出し続けた。「本当は自動でサイト名や相手の名前を差し込んで送信してくれるソフトがあると思うのですが……。ここは気合だと思いました」

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