階層別で研修の実施方法は異なってきます。今回は中堅社員から管理職に至るまでの階層別研修についての留意点や研修プログラムの事例をみていきましょう。
今回は中堅社員から管理職に至るまでの階層別研修についての留意点や研修プログラムの事例をみていきましょう。
「中堅社員」というとかなり広い範囲の階層が含まれますが、ここでは入社3〜5年目の社員を指します。この階層の社員は最前線で業務遂行をする実務部隊です。
実務に十分通じていると同時にマンネリを起こしていることもあります。その点を考慮して、この階層に対する研修内容としては、「業務知識に一層磨きをかけること」と、「一般知識から専門知識習得への足掛かりを作る」ような研修カリキュラムが望まれます。また、組織構成の中核をなすことからチームワーク、コミュニケーション、人間関係といった「ヒューマンスキルを身につける」カリキュラムも取り入れることが適当です。
そのほかに身につけてほしい姿勢、スキル、能力としては、「問題発見・解決能力」「交渉力」「広い視野で物事を捉える姿勢」などがあります。これらは、会社の業態や業容によって優先順位をつければ良いでしょう。
「ベテラン社員」とは入社7〜10年目くらい、20代後半から30代前半くらいまでの社員を対象にします。会社の中で自分なりの価値観や行動スタイルが身についている階層です。
管理・監督職一歩手前の階層であり、組織としてはリーダーシップを発揮し、上司を補佐することが期待される階層です。役割期待(図1参照)もジョブマネジメント(職務スキル)中心からラインマネジメント(組織維持スキル)に移行していく階層です。従って、「フォロアーシップ」「リーダーシップ」「問題解決技法」「後輩指導」「コーチング」などが研修の主だったテーマになります。
前述した中堅からベテラン社員の階層に要求される階層別研修の重点ポイントをまとめると以下のようになります。
社会性を身につけさせると同時に、自分で考えられる自立人材の素地を作ることが重要です。「自社の常識が世間の非常識」とならないようなしっかりとした企業倫理観を養うことが重要です。企業不祥事が生じる原因の1つとして、この時期の人格形成上、企業においてどのような醸成がなされたかが関係しているようです。
組織における自己の立場と役割をしっかり認識させることです。つまり、気付きを与えることです。企業内での立場と役割を認識させ、その立場にあった役割貢献を果たせているかどうかを評価と研修を通じて常に気付かせておくことが重要です。リストラ人材を作らないためにも、この階層での気付きは大切です。
確かな実務・業務知識・スキルを身に付けさせて、社内でのエンプロヤビリティを高めることです。この階層が実務知識を身につけて着実な業務遂行をすれば安定した会社運営ができるはずです。また、問題解決技法など業務を効率的に運営する知識等の習得も促すことが必要です。職能別教育を十分に実施することが望まれる階層でもあります。
複線型人事体系を取り入れている企業では、専門職として歩んでいくか、管理職として歩んでいくかの選択を迫られる階層でもあります。ただし、いずれにおいても後輩指導のためのコーチング技法などを習得させておくべきでしょう。ヒューマンスキルは管理職登用時から施すのではなく、早くから身につけさせるべきです。
管理職の役割は、業績を上げるという経営の要請に応えること、そして、部下の人間としての感情や欲求・期待に応えることです。つまり、「組織の要請と個人の欲求を統合する」ことにあります。また、組織論のバーナードによれば、「リーダーの役割は、コミュニケーションの仕組みを構築し、必要不可欠な活動を確保し目的を示すこと」とあります。
これらのことは、次の4つの側面に分けられるのではないでしょうか。また、管理職教育の狙いは、これらの役割遂行上のサポートをすることです。
業務の目標・方針を設定し、計画を立案、部下に役割分担をし、指示統制していくこと。目標・方針を明らかにできないようでは管理職失格です。
問題意識を持ち、問題発見を欠かさず、業務を改善していくこと。すなわち、必要な活動を確保しながらも、不要な業務は削っていくこと。
部下のモチベーションをあげて、良いチーム作りをすること。チーム活動が機能することは目標達成の再現性を高めることにつながります。常勝軍団という言葉がありますが勝ち癖のついたチーム作りをすることです。
部下の能力を把握し、育成していくこと。経営資産の中で最も重視されるべきは人材でしょう。人材価値が上がるということは企業価値を高めることになります。
例えば、以下のようなスキル研修を行うとしましょう。
これらの研修を実施する上でのポイントは以下の通りです。
管理される側から管理する側への意識変換を必ず行うこと。トップも参加をし、管理者の責務を自覚させる場とすること
管理職が自社の経営理念・哲学といった企業存在の基本を理解し、それにのっとった組織維持管理を行わないようでは、永続的な企業運営は難しい
どのような成果が評価されるのか? どのような行動が貢献につながるのか? どのような能力・スキルを伸ばしていくことが自分の価値を高め、ひいては企業価値を高めることになるのか? これらを検証することが評価です。管理職が適切・公正は評価できなければ企業の成長は望めません。
何のための人材育成かを見極めた上でのカリキュラム構築が大切です。人材開発にも流行がありますが、それに流されないこと。自社で必要な人材開発要件を見据えることが重要です。
すべてのカリキュラムを自社で賄えるものではありません。他流試合も盛り込みましょう。きっと広い視野が得られるでしょう。
以下に中堅社員研修、管理職研修の実施プログラム例を掲示します。カリキュラム構築の参考としてください。
ニッセン(東証1部)社外監査役
ワイズ・ステージ代表取締役
高橋宜治