動物のサイズと生態を紹介する『ゾウの時間 ネズミの時間』。この中の「島の法則」が示唆深い。ゾウは大陸では大きくなり、島では小さくなるという。世界は次第に狭くなっているが、日本は島国化するのか、はたまた大陸化するのか――。
大きな動物ほど心臓はゆっくり動き、寿命が長い。小さな動物は心臓は早く、寿命は短い。組み合わせて考えると、面白いことに一生における心臓を打つ回数は、ほ乳類は皆20億回であるという。とすれば、100年生きるゾウも、数年しか生きないネズミも、一生の時間感覚はさほど変わりないのかもしれない。こうした動物のサイズと生態をさまざまな角度から眺めたのが『ゾウの時間 ネズミの時間』である。動物生理学の研究者である本川達雄氏による1冊だ。
本著で説明されている「島の法則」が示唆深い。
大陸では、肉食獣に食われないためにゾウは必要以上に体を大きくし、ネズミは物陰に隠れるため体を小さくした。しかし、体が大きくなると一世代の時間が長くなるため、突然変異は起きづらくなる。突然の環境変化に適応できず、やがて滅びる運命となる。また体が小さすぎると、いつもエサを食べ続ける必要が出るため飢えて死ぬ可能性が高まる。
島ではエサが少なくて肉食獣は生きていけない。そのため、ゾウは子牛ほどの大きさに小さくなり、逆にネズミは猫ほどの大きさとなるという。
「島の法則」を人間の世界に当てはめてみる。アメリカは競争の激しさゆえに、天才科学者や技術者が生まれるが、一方で一般のサービスレベルは低い。日本では突出した天才は生まれないが、一般人の能力は高いという。
著者は、地球はしだいに狭くなって島的になるから、日本人がつちかってきた島の知恵が有効になるという。しかし別の見方をすれば、世界がフラット化して競争が激しくなるため、島であったはずの日本も大陸的になるとも言える。
日本は大陸化できるのか、はたまた島国を維持しようともがくのか――。
RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在1200冊超。
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