岡田ジャパンに学ぶ、強いチームの作り方(1/2 ページ)

スポーツの中でも、特にチーム力が重要といわれるサッカー。好成績を出すには、メンバー同士の信頼関係や個々の強みを生かすことが欠かせません。W杯決勝トーナメントへの進出を決めた岡田ジャパンを例に、「強いチームの作り方」を考えます。

» 2010年06月28日 17時04分 公開
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 岡田ジャパンがついに決勝トーナメントへの進出を勝ち取った。政治、経済、社会、何かと暗いニュースが多かった最近の日本ではあるが、その様な暗雲を払しょくするような快挙である。前評判が芳しくなかっただけに、喜びもひとしおである。最初の勝利では、海外メディアの酷評も目立ったが、さすがに今回は海外メディアの評価も概ね良好である。真のチーム力なのか、それとも幸運のなせる技なのか?

サッカー日本代表監督の岡田武史氏

技術に長けた選手を集めただけでは強いチームはできない

 サッカーはあらゆるスポーツの中でも突出してチーム力が結果に大きく影響するスポーツである。何気なく見ているサッカーも緻密に組まれた布陣が勝負の行方を左右することが多い。要するに、サッカー技術に長けた選手だけを集めれば最強のチームになるわけではない。それぞれの個性を生かし合うような相乗効果を生み出すチームメンバーの構成が組めるか否かが重要になってくる。

 岡田監督は、大会直前にチームづくりの方針をがらりと変えたのである。それまでは中村俊輔を軸にパスをつなぐ攻撃重視の布陣であったのが、今大会では、阿部勇樹を守備ラインの前にアンカーとして置き、守りを重視しながらも個性の強い本田圭佑をトップに置く布陣をとった。敵前で隊列を変えるようなリスクもあるチャレンジングな布陣である。

 結果良ければすべて良し、とは言うが、これは、テストマッチ4連敗の課題から戦略的に生み出した布陣であり、メンバーの個性をうまく活用した布陣である。最強のチームが出来上がったといっても過言ではない。

チームが成長・発展する4つの段階

 チームは、4つの段階を経て成長・発展していくと言われている。第1段階は、フォーミングと言い、お互いのメンバーがそれぞれの力量を見極めようとする様子見の段階である。第2段階はストーミングと言い、個々が意見を出し行動するがまとまりがない状態で、個性がぶつかりあう段階である。実はここまでは自動的に進行する。当然、ここまでの段階では、チームのシナジー(相乗効果)は生み出されていないのである。

 そして、第3段階は、ノーミングと言い、メンバーがそれぞれの役割を認識し、一つの方向に向かう、チームとして機能する段階である。この段階に至って初めてシナジー(相乗効果)が生み出される。さらに、この状態が加速すると、最終段階である第4段階、トランスフォーミングと言われる段階に至る。信頼関係が強固にでき、協働意志が強い最強チームが出来上がった状態である。

 サッカーでも、チーム状態が良くない時は、第3段階に入りかけると、個人プレーが出だし、チームとしてのシナジーを生み出せない状態、要するに、得点を積み重ねられず、守りも脆く得点を取られやすくなる。今回の日本チームは間違いなく第四段階に至っている。

 この第四段階に至るには、技術力や行動力をもとにビジョンを共有し勝利という目標に向かっていくことだけでなく、メンバー同士がお互いに配慮し、信頼し合うことによるリレーションの高まりがもたらすエネルギーの結集が機能してくるかが重要なポイントになる。このような組織の2つの機能をパフォーマンスとメンテナンスと言う。成果を追い求めるとき、パフォーマンスに注目しがちであるが、継続したパフォーマンスを生み出すためには、実は、メンテナンスが非常に重要になってくる。

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