「働きやすい職場」を作るには、誰か1人が引っ張っていくのではなく、同じ職場で働く一人ひとりが小さな工夫をして、自分ができることから変えていけばいいのです。
経済的な閉塞(へいそく)感が漂う中、多くの職場では、成果を出すことが求められています。そのため、「スタッフが一丸となってベクトルを合わせ、チームの成果を出したい」「スタッフの中から、画期的なアイデアが欲しい」「起きている問題は素早く解決したい」「活発な職場の中でイキイキと働きたい」――こう願っているリーダー層の人も多いことでしょう。
けれども、現実はどうでしょうか。「ベクトルが合わず、チームとしての成果が出せない」「指示や命令ばかりでモチベーションも自主性も下がる」「問題解決より犯人探しが優先されてしまう」「一生懸命がんばっていた仲間を突然失ってしまう」――成果を出すことが優先されるあまりプレッシャーも多く、さまざまな問題を抱えている職場も多いでしょう。このような「働きにくい職場」では、やる気が起きにくく、成果にもつながりません。
また、これらの「働きにくい職場」で働く方からすれば、「会社に、もっと具体的な手を打って欲しい」「リーダー層がもっと積極的に動くべきだ」などとと嘆きたくなります。けれども、その願いがかなうことはなかなかありません。
なかなか変わってくれない周囲の変化を待つよりも、私たち一人ひとりができる「ちょっとした工夫」をしていくことで、職場環境は早く変わり始めます。
ところで、働きやすい職場環境を作るために、さまざまな本が紹介されています。けれども、リーダー層が書いた本が中心のため、リーダー層向けの内容でスタッフの立場では現実にそぐわなかったり、専門用語が多く難しかったり、「理論的には分かるけれど、困っている現場の中で、具体的に何をしたらいいのか分からない……」という悩みを抱えている人も多いと思います。
そこで、リーダー層に加え、スタッフの皆さんでも、職場の雰囲気や環境、人間関係を改善し「自分にとって働きやすい職場」を作っていくために、すぐに実践できるヒントとして、『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』という本を出版しました。
わたしはかつて、ITエンジニアのチームを任されたものの、チームのまとめ方が分からずに悩みました。その中で、心理学やコーチングに触れ、チームを1つにまとめ、働きがいのあるチームがどうしたら作れるのかを実践してきました。本書はその体験を基に、職場の雰囲気や環境、人間関係を改善し、「働きやすい職場」を作るために、すぐに具体的な行動を起こせるよう、誰にでも分かる言葉で整理したものです。これから6回にわたり、この本から幾つかの章をご紹介していきます。
スタッフの気持ちが1つにまとまっている職場は、活気があり、ギスギスしたこともなく、雰囲気も良くて、あなたにとっても、ほかのスタッフにとっても、働きやすく、能力も発揮しやすいものです。
しかし残念ながら、そうはなっていない「働きにくい職場」もたくさんあるのが現状です。
こんな職場で働く人は、きっと毎日が楽しくないでしょうし、精神的にも肉体的にもつらい思いをしていることでしょう。あなたの職場はいかがでしょうか。
これらの多くは、わたしも実際に体験してきました。こうした悲劇を、あなたの職場では起こしてほしくありません。
だからといって、あなたがみんなの先頭に立ち、強力なリーダーシップを発揮してもらいたいわけではないのです。「働きやすい職場」を作るには、誰か1人が引っ張っていくのではなく、同じ職場で働く一人ひとりが小さな工夫をして、自分ができることから変えていくこと。それだけでいいのです。
その「小さな工夫」とは、ちょっとした会話の工夫であり、振る舞いの工夫です。まずはあなたから「工夫」を始めることで、少しずつ、まわりの人たちも変わってきます。それを続けることで、あなたが「働きやすい職場」を作っていくのです。
ところでわたしは、物事がうまくいかないときは、「いままでの逆をやろう」と考えることにしています。そして「働きにくい職場」がどのようにして発生するかは、だいたい分かっています。ですから、「働きにくい職場」を「働きやすい職場」にするには、その「逆をやればいい」のです。つまり、
こうすることで、かなりの確率で「働きにくい職場」を「働きやすい職場」に改善することができます。
そのためには、「どうやって伝えたら、思いが伝わるだろう?」「どうやって褒めたら、相手はうれしいだろう?」「どうやって問いかけたら、前向きに考えてくれるだろう?」「どうやって話を聞けば、喜んで話してくれるだろう?」と考えて、ちょっとした会話の工夫をしていけばいいのです。
キーワードは「伝える」「褒める」「問いかける」「聞く」です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.