やる気は「出す」ものではなく「出る」もの「職場がツライ」を変える会話のチカラ(1/2 ページ)

自分はやる気があるのにほかのスタッフがやる気がなく、「やる気を出そうよ」といってみても、冷たい目で見られるだけ……。楽しく仕事ができる「働きやすい職場」には、仲間のやる気が大事です。「褒める」をテーマに、仲間のやる気を引き出す会話の方法を伝えます。

» 2010年09月29日 10時20分 公開
[竹内義晴,Business Media 誠]
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 あなたは「職場のスタッフがやる気を出してくれない……」と悩んでいませんか。そして「スタッフにやる気を出させよう」と頑張っていませんか?

 今回は「褒める」をテーマに、スタッフのやる気を、無理に「出させよう」としなくても、自然とやる気が「出てくる」ようにするためのヒントを紹介します。

編集部からのお知らせ

リーダー層に加え、スタッフの皆さんでも、職場の雰囲気や環境、人間関係を改善し「自分にとって働きやすい職場」を作っていくために、すぐに実践できるヒントを記したのが、『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』(竹内義晴 著)です。本連載では、同著の一部を加筆・修正し、掲載しています。


「目標」を持てば「やる気」が出るのか

 自分はやる気があるのに、ほかのスタッフがやる気がないので、噛み合わない。「やる気を出そうよ」といってみても、冷たい目で見られるだけ……。そんな職場では、だんだん働くのがイヤになってしまいます。

 楽しく仕事ができる「働きやすい職場」にするには、やはり「仲間のやる気」も大事。そこで今回は「褒める」をテーマに、仲間のやる気を引き出す会話の方法を伝えます。

 まずは「やる気は、どこから生まれるのだろう?」ということについて、考えてみたいと思います。

 一般に、やる気を出すには「夢や目標を持て」などといわれますね。でもわたしは、世間でいうほど「目標」と「やる気」に関係があるのか、疑問を持っています。なぜなら、わたし自身が、目標を持ったからといって「やる気が出る」というタイプではないからです。

 わたしもこれまで、何度か目標を持ったことがあります。例えば、以前勤めていた会社には「目標管理制度」というものがありました。年度始めに「資格を取る」など自分なりの目標を立て、その目標に向かって1年間努力し、年度末にその達成度を評価するという制度です。

 仕事の上でとはいえ、自分で立てた「目標」ですし、達成度に応じて昇給や昇進などもあるわけですから、一般論でいえば「やる気」が出るはずです。しかしわたしの場合、これで「やる気が出た」ことはあまりなく、あるのはむしろ「やらされ感」でした。年度の終わりには、えんぴつを舐め舐め、いかに帳尻を合わせるかを考えていました。

 もちろん、目標を持つことがまったく効果がないとはいいません。例えば自分の興味のある資格をとるために勉強している間は、わたしだってそれなりに「やる気」になります。でも試験が終わると、やる気もそれでおしまい。やる気が長続きした試しがないんです。

 ここから分かるのは、目標を持つことはとても大切だけど、なんでも「目標」があれば「やる気」につながるのかというと、そういうわけではないのかもしれない、ということです。

自然と「やる気」が出てくるのはどんな時?

 そんなわたしですが、今も「やる気」がないのか? というとそうではありません。自分でいうのはなんだか照れくさいですが、いまのわたしは、これまでの人生の中で一番やる気に満ち溢れています。目標も持っています。もちろん時にはやる気が出ない日もありますが、平均点で表わせば80点くらいのやる気があります。

 なにも「やる気がない自分」を反省し、「やる気を出そう!」「目標を持とう!」と思ったわけではありません。そんなことをしても、わたしの「やる気」は出ません。むしろその逆で、あることから「気持ちが満ち足りて」きて、そうしたら自然とやる気になり、その結果、目標もできたという感じなのです。

 つまり、やる気を出そうと思って自分で「出している」わけではなく、気がついたら自分の内側から「出てきた」のです。

 では、わたしを満ち足りた気持ちにしてくれた「あること」とは、なんでしょうか。それは、コーチングをしているクライアントさんからの「ありがとう」「いつも感謝しています」といった言葉や、メールマガジンなどの記事を読んだ方からの「とても勉強になりました」などという言葉。これらの「感謝の言葉」で気持ちが満たされ、自然に「やる気」や「目標」が湧き出てきたのです。

 これは、わたしだけのことでしょうか? きっと違うと思います。少し想像してみてください。もしあなたがまわりから「やる気を出せ」といわれた時と、「ありがとう」といわれた時では、どちらが「やる気」が出るのかを。

 やる気の元って、実はこんなにシンプルなものなんです。

 やる気は「出す」ものというよりも「出る」もの。これを考えれば、仲間にやる気を出してほしい時にも、どんな言葉をかければいいのかが見えてきます。

日常のささいな褒め言葉を大切にしよう

 わたしたちは日々の仕事の中で、自分の成果を上司や仲間から認めてほしいし、褒めてほしいと思っています。わたしもそうですし、きっとあなたも同じでしょう。そしてそれは、あなたの仲間も同じだと思います。

 認めてもらえれば、胸の奥のほうが満たされた感じがします。

 褒められれば、やる気も出てきます。

 みんな「がんばってるね」のひと言が欲しいだけなのです。「よくやったね」といってほしいだけなのです。なのに、現実に耳にするのは、「なぜ、このミスに気づかなかったの?」といった指摘や、「もっとやる気を出して仕事をしなさい」といった叱責。聞けばやる気をなくしてしまう言葉ばかりです。

 もちろんミスの指摘は、再発を防ぐ上で大切です。スケジュールに遅れが出ていたら、いわゆる「喝」を入れる叱咤(しった)も必要です。でも、みんなが意欲を持って働くことができ、チームとしての成果も出せる職場にするには、もっと大切な会話があるはずです。

 わたしがM社に常駐して新規システムの立ち上げに参加したと時、納期や品質に対するプレッシャーがたいへん厳しく、心身ともに疲れ果ててしまいました。でも、もしあのとき、「がんばってるね」などのねぎらいのひと言があったなら、身体を壊すほどにストレスをためることもなかったのではと思います。

 けれども、実際にあった言葉は、「このミスは、竹内さんにスキルがないからですよ」でした。このひと言には、正直へこみましたね。

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