えーっと、そう言えば……。竹下たちの妨害にも負けずに、禁煙をやりとげて、俺って昔からやればできるといわれ続けてきたけど、ようやく本当にやれたという感激があったんだった。でも、これも教材販売をしようと決心したきっかけではなかった気がする。
そうだ、竹下だ。竹下にA4で10枚のリポートを書いてあげたんだった。それで、竹下が禁煙に成功して、俺にお礼を言ってくれたんだよ! そのとき俺、不覚にも涙ぐんじゃったんじゃないか!
この気持ち、これ、これだよ。人の役に立てたという気持ち。それで俺、取らぬたぬきの皮算用を始めたんじゃないか。なんでかというと、すごく感動したし、すごく快感だったから。なので、これで商売ができればって思ったんだよ。
俺は人の役に立ちたいという気持ちで、教材販売をはじめようって思ったんだ!
我ながら、ちょっと感動した。今まで本当に自分のことしか考えない人間だったのに、改めて商売をはじめようとしたきっかけが、人の役に立てて、涙ぐんだことだったなんて。
でも、これって強い気持ちだと思う。最初のステップ、メルマガ発行でもはやくじけそうだったのに、これを思い出しただけで、やる気がわいてきたんだもん。
よし、人の役に立とう。とりあえずは儲けのことは頭から追い払おう。俺が出そうとしているメルマガが本当に人の役に立てるものになっているのか、もう一度点検してみよう。
その前に人の役に立つってどういうことなのかを考えないといけない。
人のためになるアドバイスや提言をすること、だよな、たぶん。そういう意味では、俺のメルマガは、タバコという「百害あって一利ないもの」――俺は考えに考えて、そう感じたからやめたんだ――を、ストレスなしに止めるためのアドバイスや提言に満ちている。
この点は合格だ。だったら、俺は何をためらっているのだろう?
30分ほど考えに考えてヒントが浮かんできた。正論だったら伝わるんだろうか? 役に立つことなら、みんな受け入れてくれるんだろうか?
俺はいろんな人から、以前の自分を直すように言われてきた。でも、まったく受け入れてこなかったじゃないか!
まず、受け取る側のことを考えないといけない。そして、その人たちがどうしたら受け入れてくれるかを考えないといけない。これなんだ!
俺が適当に入れようとしたメルマガのタイトルは「究極の禁煙法」だった。これで興味を持つ人もいるだろう。でも、それは多いのか? こんなタイトルで多くの人が振り向いてくれるのか?
このタイトルから想像するのは、今までにもあった、お説教タイプの禁煙法じゃないのか? 俺のは、そうじゃない。お説教ぎらいの俺が、ストレスなくやめられたんだ。それをまず打ち出さないといけない。
「誰でも10日間でやめられるラクラク禁煙法」。うん。最初のタイトルよりはかなりいいぞ。実際、俺は1週間、竹下も10日でやめられたんだから、うそじゃない。
ん? でも10日でメルマガを読んで、禁煙に成功しちゃったら、俺、困らないか? それに、やめられなかったぞという人からクレームがきたらどうしよう。
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