どうしたら人の気を引き付けられるのだろう?518日間のはい上がり(1/3 ページ)

禁煙法の読者を獲得するため、メルマガをはじめようとした主人公の金田。ところが、メルマガを登録することになったら何となく気が進まない。「俺はなんのためにこんなことをしているんだろう」

» 2011年04月06日 15時40分 公開
[森川滋之,Business Media 誠]

連載「518日間のはい上がり」について

 この物語は、マイルストーンの水野浩志代表取締役の実話を基に再構成したビジネスフィクションです。事実がベースですが、主人公を含むすべての登場人物は作者森川滋之の想像による架空の人物です。

前回までのあらすじ

 会計事務所の事務員として働いていた主人公の金田貴男。職場に反発して起業したものの、あえなく倒産。1500万円の借金を負う。酒とパチンコだけの引きこもりだったが、一念発起して禁煙に“成功”。友人の禁煙も手助けしたところ、意外なビジネスチャンスを感じた。あとはメールマガジンで見込み顧客を獲得するだけ。メルマガの登録ボタンを押そうとするが、そこに迷いが生じた――。


 登録のボタンが押せない原因が分かってきた。

 自信がないからだ。

 メルマガから、どうやって商材販売に結び付けていくかということは研究して、納得した。だからと言って、このとおりにやっても売れるとは限らない。それなら苦労はないはずだ。

 以前、会社を興したときもそうだった。自分では、必勝パターンだと思っていた。でも、必勝パターンだからほっといても売り上げがあがるだろうと思って、けっきょく会社を潰してしまった。あのときのことが、どうもトラウマになっているらしい。

 必勝パターンであっても、何かが足りないと売れない。世間に相手にされない。今回は何なんだろう? 俺は先日やった皮算用のメモを見直した。

 そうそう2000部売らなきゃいけないんだった。仮にメルマガを読んだ人の10人に1人が買ってくれるとして、2万人の読者が必要!?

 10人に1人が多いかどうかは今の俺には良く分からないが、けっこうな率だという気がする。それでも2万人! 今は、もちろんゼロ。どうやったら2万人なんかになるんだ!?

 いや、漠然と分かっていたんだ、本当は。実際の数字を思い浮かべるのが怖かっただけ。これが押せない原因だったんだ。2万人はおろか2000人だって、いや100人の読者を獲得するのだって自信がない。

 だって、ちょっと前までほとんどプータローでパチスロで食ってたんだぜ。かみさんにも相手にされずに、酒びたりだったんだ。そんなやつに、俺のメルマガをみんなが待っているなんて自信、どうやって持てというんだ。

 じゃあ、止めるか。止めちまおうか。どうせ、今まで逃げてきたんだ。また逃げたって何も変わらない。今までと一緒。俺は所詮、それだけの人間だったってことで、いいんじゃないか?

 いやいやいやいや、いやいやいやいやいや。

 それなら、ここ数カ月何のために将来を考え、何のために一生懸命教材を作ってきたんだ。

 ん? 何のためだったんだろう? あれ? 分からない。どうやら、ここから考え直さないといけないようだ。

 教材を一生懸命作ったのは、しがみつける実績ができたからだ。実績は、タバコをやめたことだけだけど、それになんとかしがみつこうと思ったんだった。でも、それだけではあれだけがんばってきた理由としては弱い。

 何か気持ちが切り替わるきっかけがあったはずだ。なんだっけ?

 そうそう、タバコのせいでやけどしたんだった。それで、このままでは焼け死ぬかもと思ったんだ。で、やりなおさなきゃって思ったんだ。そして、タバコをやめられたんだ。

 うーん。これは確かにそうなんだけど、単にタバコをやめたきっかけであって、教材販売を始めようと思ったときの気持ちが何かあったはずだ。

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