反応がない…… 誰も読んでいないのか?518日間のはい上がり(1/3 ページ)

一念発起で始めた“禁煙成功のためのメルマガ”だったが、3000人の読者を集めたのに読者からの反応がない。心配になった主人公の金田が取った行動とは――。

» 2011年07月06日 08時10分 公開
[森川滋之,Business Media 誠]

連載「518日間のはい上がり」について

 この物語は、マイルストーンの水野浩志代表取締役の実話を基に再構成したビジネスフィクションです。事実がベースですが、主人公を含むすべての登場人物は作者森川滋之の想像による架空の人物です。

前回までのあらすじ

 会計事務所の事務員として働いていた主人公の金田貴男。職場に反発して起業したものの、あえなく倒産。1500万円の借金を負う。酒とパチンコだけの引きこもりだったが、一念発起して禁煙に“成功”。友人の禁煙も手助けしたところ、意外なビジネスチャンスを感じた。あとはメールマガジンで見込み顧客を獲得するだけ。さっそくメールマガジンでの顧客獲得を目指した。



 今年は寒い。夏もぜんぜん暑くならず、秋は普通だった気がするけど、11月になって急に冷え込み、北日本では大雪が降った。驚いたのは、どちらかというと暑いので有名な熊谷で11月に初雪が降ったこと。俺の住む東京の西のほうもかなり寒い日が続いた。だけど、俺の心の寒さに比べたら、寒さもあまり感じないほどだった。

 柄にもなく今年の天候など振り返っていたら、携帯に電話がかかってきた。竹下からだった。

 「金田、すごいじゃん。メルマガなんか出しちゃって」

 「あ、なんだ、気づいてたの?」

 「何言ってんの。登録してくれってメールが来てたじゃん」

 そうだった……。知り合い全員に連絡してたんだった。まがまがは、誰が登録しているか分からないようになってるんで、すっかり忘れていた。

 「そっか。登録してくれたんだ、ありがとう」

 「発行部数を見たら3000部を超えてたんで、驚いて電話したんだよ。すげえなあ」

 これには、我ながらびっくりだったんだ。あれだけ登録するまでためらったのに、登録したら3日で500部、1週間で1000部を超えた。さっき確認したときは3252部。そんなにも多くの人が、俺のメルマガを購読してくれてると思うと、ありがたいと思うとともに、最近は書くのが少しプレッシャーになっていた。

 竹下にお礼をあいまいに言うと、俺は早々と電話を切り上げた。

 俺の心が寒いのは、実はこの発行部数のせい。書くのがプレッシャーだから? いや、それはどちらかというとうれしい悩みだ。俺が悩んでいるのは、発行部数の割には、まったく感想などの反応がないことだった。

 メルマガを出し始めてから1カ月ちょっと。週1回発行しているので、すでに4回出している。その間、1回も感想をもらったことがなかったんだ。みんな読んでるんだろうか?

 悶々とした気持ちで、さらに2号書き続けたが、やはり感想はこなかった。登録部数も毎日増えたり減ったりして、3500部前後で落ち着いている。俺の皮算用では、2万部の登録があり、そのうちの10人に1人がやがて発売するであろう教材を買ってくれるという計算だった。ぜんぜん遠い……。

 このままでは、ダメだ。俺にいま残されているものは、たった1つ。この禁煙法のノウハウだけなんだ。これがダメなら、俺は這い上がれない。どうしたらいいんだ!?

 1人で悩んでいても答えが出ないのは明らかだった。俺は、今朝から降り始めた雪の中、一張羅のコートを着てマフラーを巻き、新宿の大書店に調査をしに行くことにした。幸い電車は動いているようだ。

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