日本人は数学的思考が苦手?【図解】人生の大問題(1/2 ページ)

理数系に強くないと金持ちになれない? フォーブスの長者番付では若きエンジニアが名を連ねました。一方、日本の工学部志望者はこの10年間でおよそ半減しているという事実もあるのです。

» 2012年01月19日 11時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 本連載は「人生の大問題を図解する!」(光文社)の内容からポイントだけをピックアップしています。読者の皆さんのライフプランを見直し、後悔しない人生を送るための手助けになればと願っています。

 人生の重大事の中から、「お金」「語学力」「仕事」「家族」「思考力」という5つのテーマで衝撃的かつ客観的なデータをいくつか紹介します。

 第5回は「人生の大問題、衝撃的な事実リスト【数学的思考が苦手(?)編】」です。

日本人は数学的思考が苦手(?)の大問題ヘッドライン

  • フォーブスの長者番付に若きエンジニアが集結。理数系に強くないと金持ちになれない?
  • 理数系に学ぶ学生は減り、日本人の数学力は1位から9位へ低下
  • 技術立国の日本を脅かすアジア諸国の高い数学力、論理力。優れたエンジニアは外国にヘッドハンティングされていく

理数系に強くないと金持ちになれない?

 ビジネスで活躍するために経済学や経営学は欠かせません。しかし、それらを理解するための基盤は数学や論理力です。近年、ビジネスパーソンの間でロジカルシンキングや数字分析力に関する関心が増えたのもそうした背景があるのだと思います。世界でもエンジニア出身の多くのビジネスパーソンが成功をおさめています。

 例えば、世界有数の資産家である元マイクロソフトのビル・ゲイツは、小学生のときから算数と理科が大好きで、高校時代には友人と作った交通量計測システムを州政府に納入するほどだったといいます。その後、彼はハーバード大学在学中にMS-DOSをIBMに売りつけたことをきっかけに、マイクロソフトを立ち上げました。

 今や、フォーブスの長者番付にランクインする若き成功者の多くが、技術出身者なのです(2011年度)。40代ではDellの創業者であるマイケル・デル(テキサス大学医学部中退)、Amazon創業者のジェフ・ベソス(プリンストン大学物理学と計算機科学専攻)、中国バイドゥのロビン・リー(NY州立大学計算機科学)30代ではGoogle創業者のセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ(共にスタンフォード大学の計算機科学専攻)、Facebookのマーク・ザッカーバーグは中退しているものの、ハーバード大学の計算機科学専攻でした。

 言うまでもなく日本の中核産業は製造業です。その代表格であるソニー創業者の故井深大氏、ホンダ創業者の故本田宗一郎氏などなど主な製造業のファウンダーは多くの場合、技術畑の出身。技術立国の日本を支えてきたのはエンジニアであり、理系出身者が多かったわけです。

 創業者のみならず、経営コンサルティングの分野でも理系出身者は、その論理的、数学的分析力で大きな成果を出しています。ボトルネックの発見と管理によって収益を向上させる制約理論で有名なエリアゴールドラッド博士(日本ではベストセラーとなった「ザ・ゴール」の著者としても有名)は物理学者ですし、元マッキンゼーの大前研一氏は原子力の研究者(元日立製作所)です。論理的、数学的思考は経営にとって欠かせない素養だといえるでしょう。

日本人の数学力は1位から9位へ低下

 OECD国際学力テストの2006年アンケートによれば「科学関係の仕事に就きたい」と回答した日本の高校生はわずか7.8%で、対象57カ国地域中、最も低かったと報告されました。本当に人気ありませんね、科学が。

 この状況は大学生でも変わりません。文部科学省の調査によると、日本の工学系の学部志望者は2001年の約37万人から2011年の約29万人に減少しています。顕著な比較でいうと、1995年から2005年の10年間では57万人から33万人へおよそ半減しました。

 日本の理系離れは大学生だけではありません。OECD加盟の先進諸国で行われている高校生の国際学力テストのスコアを2000年と2006年度で比較してみると、日本の平均スコアは理科では2位から6位に、数学では1位から10位、読解力では8位から15位とものすごい落ち方をしています。学生においても、論理的、科学的に物事を把握する力が極端に低下しているという問題は大変憂慮すべき兆候です。

 読売新聞は社説でこの問題を取り上げ「理数系の落ち込みに対する危機感が足りない」として文科省やゆとり教育政策を批判、波紋を呼びました。2009年の国際学力テストでは、理科が5位、数学が9位、読解力が8位といくぶん回復しましたが、世界に冠たる技術立国の日本としてはなんとも心もとない結果です。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ