実際iPadを使うと、どこまで業務ができるの?スマートデバイス導入のお悩み相談室

「業務効率化」と銘打って会社からiPadが支給されたのはいいものの、主な用途はメールやWeb閲覧のみ、という今回の相談者。他にどういった使い方ができるのか、iPadの業務活用について早田さんにアドバイスをもらいました。

» 2012年06月01日 11時10分 公開
[回答者:早田麻子、文:上口翔子,Business Media 誠]

本連載「スマートデバイス導入のお悩み相談室」について

スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイス端末を業務でも積極的に活用したいという現場からのニーズがある一方、管理負荷の問題やセキュリティの不安などから、企業側では導入に踏みとどまるなど、頭を悩ませています。本連載では、そうしたスマートデバイスの業務利用に関する悩みについて、複数社のスマートデバイス導入に携わってきた京セラコミュニケーションシステムの早田麻子(はやた・あさこ)事業部長に、アドバイスをもらいます。


 iPadなどのタブレット端末が発売され、「○○社、全社員にiPad支給」というニュースを見るようになりました。一部の業務をiPadに置き換えたという企業や、ソフトバンクのように夏の節電対策の一環として、電力ピーク時の業務は全てiPadで行うといった試みをした企業もあります。

 ただ実際の利用イメージとして、どこまでの業務をiPadでまかなえるのか、iPadを使った方が効率がいい業務は何なのか、明確な解答はなかなか見えてきません。今回はそうした悩みを持つ、メーカー勤務の事務職、30代男性の疑問です。

今回のお悩み:実際、iPadでどこまで業務ができる?

「業務効率化」と銘打って会社からiPadが支給されたのはいいものの、主な用途はメールやWeb閲覧のみで、いまいち使いこなせていません。他にどういった使い方ができるのか、iPadが業務で活用できる場面を知りたいです。また今後、iPadなどのタブレットがPCに置き換わることはありえるのでしょうか? PCは必要なくなるのですかね?

早田さんの回答:Web会議などに活用してみては?

京セラコミュニケーションシステムの早田麻子さん

 メールやWeb閲覧以外でタブレットが活用できる場面ですが、オススメはWeb会議などを活用したコミュニケーションです。東日本大震災後、通信・メディア業や情報サービス業などで在宅勤務を実施する企業が増えましたが、そうした企業でもコミュニケーションツールとしてタブレットが役に立ったという話を聞きました。

 また会議だけでなく、勤怠管理、安否確認という意味でも、音声・ビデオ通話機能を持つアプリケーションを利用すれば誰でも簡単にコミュニケーションが取れるので便利です。会社のセキュリティポリシーで利用できるアプリに制限があるかもしれませんが、無料のものでも十分業務に活用できるのもタブレットの魅力です。

 その他、挙げるとすればGPSを利用した位置情報管理ですね。PCと比較した場合のタブレットの特徴は、GPSやカメラなど、PCの場合は後付けしなくてはならない機能を標準搭載している点です。さらに持ち運びできるので外出先でも利用でき、起動時間も速く、バッテリーの持ちもスマートフォンよりはいいですよね。外出の多い人は自分が今どこにいるのか位置情報を確認したり、また出先で撮った写真を位置情報などとひも付けながらすぐに共有したりと、さまざまな利用シーンがありそうです。

iPadに向く業務、PCに向く業務がそれぞれある

 次に「タブレットの普及でPCがなくなるか」という話ですが、これはなくなる/なくならない、というよりも会社側がなくすか/なくさないかの判断で結果は全く異なってくると思います。私が担当している範囲では「PCをなくそうとして全社一括でタブレットを導入したけど、結局なくすわけにはいかなった」という事例が多いですね。

 その理由は、やはりタブレットというのは何かを見せたりプレゼンテーションに向いている端末であって、現状では何かを入力したり、作成したりする用途には向いているとはいえないからです。キーボードがないのもそうですが、PCを使っている人はマウス操作に慣れている場合が多いので、どうしてもそこがネックになってしまいます。

 現状でWindows PCを使用している場合は、iPadだと今使っている業務アプリが使えなくなってしまいますよね。それを会社側がどこまで対応するか、業務アプリをどこまで作り込むかによってもPCの置き換えが可能かは異なってきます。Windowsタブレットの場合はその辺のハードルが下がりますが、やはり入力面で上記のような課題が残ります。

 またもしも本当にPCをなくすのであれば、会社の仕組みから変える必要があると思います。例えば営業職であれば、見積もりや提案書の作成業務をする選任部隊を作り、その人たちはPCで作業をする。そして完成物を持って外回りをする部隊はタブレットを持って業務をする、といった具合です。

 しかしつき詰めて行くと、勤怠のルールであったり、給料の話であったり人事面での仕組みも変えなくてはならない会社もあると思います。そういう意味ではPCがすぐになくなるとは思いにくいですね。

早田麻子(はやた・あさこ)さん

 京セラコミュニケーションシステム(KCCS)ICT第1営業本部ビジネスイノベーション営業統括部事業部長。京都市出身。1994年、同志社女子大学学芸学部日本語日本文学科卒業。同年、山一證券入社。1996年、KCCS入社。1997年、情報通信営業部東京営業部のグループ長に赴任。2001年、首都圏営業1課課長。2004年、IPサービス事業本部 IPイノベーション営業部 部長に就任。2007年、東日本ICT 営業本部 東日本ビジネスイノベーション営業部 事業部長。2011年、組織変更に伴い現在の役職に至る。1女児の母。

 スマートデバイス導入に関しては、モバイル通信の普及当初からリモートアクセスサービス事業に携わり、その後MVNO事業の立ち上げに従事。最近は大手企業向けのスマートデバイス導入プロジェクトにもかかわり、その経験を基にスマートデバイス関連のセミナーで数多く講演。自身もモバイル環境を活用して積極的に仕事をこなす傍ら、母親としてのワークライフバランスを実践している。


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