原発再稼働の判断、権限は国か地方か――マイケル・サンデル教授の「民主主義の逆襲」5000人が白熱した特別講義(4/6 ページ)

» 2012年06月21日 17時30分 公開
[上口翔子,Business Media 誠]

原発か、それとも代替エネルギーか

サンデル 他に議論にこの参加したい人、いませんか? 再稼働に賛成の人。

チエ 私は原発に反対です。理由は、今回の震災で甚大な被害を受けてしまったことが政府の予想外だとか言われていますが、やはりその最悪の事態は誰でも予測できたはずです。それについての対策を怠ったことも問題ですが、それが起こり得ることは変わらないので、原発があること自体が問題です。もしまた地震があったとき、今回のような甚大な侵害を引き起こしてしまう可能性がゼロでは絶対にありません。次また起こったら、そのときは今回の失敗をまた繰り返したことになります。

 さっき前の人がおっしゃったんですけど、いま原発がないから電力不足で困っている状態であるのは確かかもしれません。でも日本はまだまだ技術革新も進んでますし、工夫次第でまだ節電できる部分がたくさんあります。工夫次第でいくらでも電力はまかなえると思います。

 あと、私は核自体に反対なのですが、その理由は核を許してしまうと核兵器など核を使ったもっと新しい技術が進んでしまうようなことが考えられるからです。だから私は核が存在していること自体がすごく反対です。(会場拍手)

サンデル 分かりました。お名前は? チエですね。原子力、エネルギーへの依存はもう永久にやめるべきだということですか?

チエ 詳しいところまでは分からないのですが、例えば先進国では、かなり無駄な電力を使っています。人間が生きていくうえで必要のないところに電気を使っていると思うんですね。それで発展途上国とか、貧困地域とか、もっともっと電気もガスもしいていないところでは、本来必要であるはずの電力が供給されていません。例えば東京やNYなど、他の国ではエンターテインメントとか、一部のお金持ちの人たちが楽しめるような生きていく上では必要のないところにたくさんお金を使いこんでいます。そういうところをもう一度見直して、本当にお金が必要なところだけ、再分配していったらもう少し有効的な電力の使い方ができるのではないかと思います。

サンデル いまチエから強い意見が聞かれました。原子力は全て放棄すべきだと。ではそれに反対の人、今チエが言った意見に反論したい人いませんか? チエに向かって直接発言してください。

タケ 非常に強い憤りというか、非難の思いを感じました。核が究極的になくなることには大賛成なのですが、原発を稼働することで日本のエネルギー自給率はようやく40%に届いているという現状です。これが原発を全て廃止してしまうと、実際に非常に低いエネルギー自給率となります。そしていま、中東の経済情勢などは非常に不安定で、そこに全て依存しなければならないという状況を果たして私たちは作りだすべきなのでしょうか。

 また、太陽光や風力など代替エネルギーの案がありますが、世界3位の経済大国がそういった自然エネルギーでまかなえるような国作りができるのかどうかは、非常に強い疑問を感じます。(会場拍手)

サンデル お名前は? タケですね。ではチエはタケにどう反論しますか?

チエ 具体的な案というか、今すぐに原発による電力を代替エネルギーでまかなうという案は思い浮かびません。でも、いまの現状を考えると、原発を再稼働することに対して市民は必ず反対していると思うんですね。日本全体の利益からしたら、再稼働はいいのかもしれませんが、やはりそれは原発をそれぞれの地域で運営している、何か災害があったときに直接の被害を被ってしまう特定の少数の人たちがいると思うんです。

 そうした人たちはやはりみんな原発は自分の町に置きたくないはずです。原発を再稼働すること自体が私は難しいと思っているし、私自身のアイデアはありませんが、日本はここまで発展してきたので……。

サンデル それでは別の質問をしましょう。タケが紹介した新たな考え方があります。自給率です。エネルギーの自給率が低くなってしまうのではないか、短期的にも中期的にも原子力なければあまりにも低くなってしまう、中東にあまり頼るのは危険だという話がありました。自給率というポイントについてはどう答えますか?

チエ 自給率を考えると、厳しいかなというのはあります。日本国内ではまかなえるエネルギーは限られていると思いますし、今の現状ではかなり原発に頼っている部分は多いと思うので。私はいま理想をすごく重視してディスカッションに参加したんですけど、現実を考えるとやはり難しいかなという思いはあります。

サンデル 理想と現実で意見が対立しているのですか?

チエ はい。

サンデル そのように理想と現実が衝突をして板挟みになるとき、民主主義社会の市民としては決めなければなりません。理想と矛盾する現実があるときに、どう決定したらいいでしょうか?

チエ それは、今の日本の社会システムの中では多数決による国会の決定に従うしかないと思います。

サンデル でも先ほどは地元住民の話が出ましたよね。おっしゃっていたのは原発が立地している地元住民から不満があるのではという話でした。原発再稼働に当たっては国会、つまり中央政府が決定をして、加えて地元社会も承認すべきだと思いますか? それとも中央政府が決定をすればそれで十分ですか?

チエ やはり地方にも意思を聞いて、それで承諾してくれるところだけを選ぶべきだと思いますし、そうでなければ不平等だと思います。権力で全てを押しつけられている感じがするので、それは嫌です。

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