ブラザーのモバイルスキャナを試す、見た目はシンプルだが実力は?仕事耕具(3/4 ページ)

» 2012年08月08日 17時30分 公開
[森田秀一,Business Media 誠]

用紙サイズ自動検出はなし

 気になったのが、用紙サイズの自動検出機能がない点だ。市販されているスキャナーの多くは、読み込み原稿サイズを「自動判別」「自動検出」といった設定値にしてさえおけば、A4原稿でも名刺でも特に問題なく読み込め、さらに原稿のない余白部分を自動でカットし、本来の原稿サイズにぴったり合わせたデータを出力してくれる。

 しかしながらMDS-600とMDS-700Wには、この機能がない。スキャン実行前にきちんと設定をしておかないと、例えば名刺を読み込んだのに出力されたファイルはA4相当で、しかもほとんどの部分が真っ黒(原稿がない部分が黒くなる)ということになる。

 ただMDS-600とMDS-700Wには「余白除去機能」がある。当初はこの機能が用紙サイズ自動検出機能の意味かと思ったが、どうやら違う。これはおもにページ頭やページ末の予約部分を除去するためのものらしい。取扱説明書にも余白除去機能については詳しく書かれておらず、筆者の憶測交じりでもあるのだが、PC中級者がマニュアルレスで簡単に利用できるレベルでないとは断言できる。


用紙サイズの自動検出機能がないため、このようにA4サイズ設定で名刺を読み込んでしまった場合に黒枠ができてしまう(画像=左)。他社製品では採用例が多い機能だけに、ないのが残念。また、規定の用紙サイズ設定が少ないのも不便だ(画像=右)。例えばA5横長の原稿をスキャンするにもわざわざカスタム設定を行わなければならない。横長名刺もほぼ同様

 もちろん、用紙サイズの自動検出機能はどのメーカーといえども100%正確ではない。あえてマニュアル設定したいという人も、もちろんいるだろう。それであれば、スキャンを実行してから実際のファイル保存をするまでの工程の途中で、ユーザーによる目視確認ができればと思うのだが、この点についても残念ながら十分ではない。連続して原稿スキャンするかを問い合わせるダイアログがでるだけで、原稿の天地を回転させるとか、保存範囲をマウス操作で変形させるといったことも不可能だ。

 スキャン実行中に表示されるをプレビューを見て「あ、失敗した」と思った時にすぐさま画面上のボタンを押せばキャンセルはできる。しかし、完了確認ダイアログがでる段階までいってしまうと、何らかのファイルが必ず生成されることになる。「(スキャンの)継続」「完了」ボタンを表示するだけでなく、「中止」ボタンを追加するだけで、ファイルを削除する手間も軽減できるはず。ぜひソフトのバージョンアップで改善してほしい。

スキャン実行中はプレビューがセミリアルタイム表示されるが……
完全にスキャンが完了してしまうと、逆にキャンセルできなくなる。プレビューを見ながら、原稿の上下を変えたりできれば便利だったろう

 両面同時スキャンできるMDS-700W限定で見た場合は、白紙面のスキップ機能がない点も気になる。両面読み取り設定のまま、片面印刷原稿を読み込むと、真っ白な2ページ目が追加されてしまう。読み込み原稿に合わせて、Mobile Document SCANメイン画面でチェックボックスのオン/オフを切り替えればもちろん防げるが、面倒だというのも本音だ。、もし自動白紙検出が難しいのであれば、これもやはりスキャンからファイル保存の工程時に目視確認してその対応を変えられるようにしてほしかった。

 肝心のスキャン速度については、まさにカタログ値通り。MDS-600でA4の片面カラー原稿(裏面白紙)を読み込んだ場合、スキャンスタートからPCの画面上で保存確認ダイアログが表示されるまで66〜67秒ほど。同じ原稿をMDS-700Wで両面スキャンした場合は150秒ほどだった。ADF搭載ドキュメントスキャナーと比較した場合、同解像度ではさすがに負けるが、1枚読み込みのシートフィードスキャナーであれば、十分だろう。スキャン時に異様に大きな音がするといったこともない。

付属ソフトでOCR機能を追加

 さて、ここからは筆者のワガママでもあるのだが、Mobile Document SCAN単体ではOCR系の機能がほとんどない点も残念だった。近年のスキャナの中には、書類スキャン時にOCR処理を施し、全文検索対応のPDFを生成できるものも多い。

 MDS-600とMDS-700Wにおいては、Mobile Document SCANではなく、もう1つの付属ソフト「Presto! PaグラムeManaグラムer 9」を使うことでOCR系の機能が利用できる。用途に応じてソフトを使い分けて欲しいとの意図だとは思うが、Mobile Document SCANはなんといってもメーカー純正アプリ。スキャン実行に特化したシンプルな仕様であるため、個人個人で異なるデスクトップ環境にも組み込みやすい。今後とも継続的に強化していってほしいものだ。

 ちなみに、Mobile Document SCANはWindows専用ソフト。Mac OS X環境でMDS-600/MDS-700Wを使う場合はPresto! PaグラムeManaグラムer 9を使うか、好みのスキャンソフトを別途用意する必要がある。

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