社長直轄「ヤフー石巻復興ベース」は石巻の成果を全国へ発信できるか復興の現場(2/3 ページ)

» 2012年09月14日 10時00分 公開
[まつもとあつしBusiness Media 誠]

「復興デパートメント」でEC支援

――今回支援ベースを石巻に作られたわけですが、その支援の範囲は?

須永 復興支援室としては、東日本大震災被災地全般ということで取り組みを進めています。その取り組みの一環として「復興デパートメント」では、拠点がない地域の特産品も販売しています。ここで成功事例を生み出して、それを展開していきたいですね。

――先ほどの情報発信に加えて、ECが2つめの支援のポイントということですね。

須永 そうですね。その中で石巻復興ベースはここ石巻に腰を据えて、これまで名産品と呼ばれていたような食材以外にも注目しています。もともと収穫が少なく流通には向かないため地元だけで消費しているような食材ですね。例えば、石巻でワンシーズンに3日間くらいしか採れない魚や、深海魚のような見た目で売場に並べるにはちょっと……というような食材を、美味しい調理方法とともに紹介したり、ホタテの“ひも”やワカメの茎など美味しいけれど地元でしか食べないので、ほとんど捨ててしまっていたようなものを商品として販売したりしようとしています。

――復興デパートメントへの参加はYahoo!ショッピングへの出店が前提ですが、手数料などはどうなっているのでしょうか?

須永 新規申し込みは終了しましたが、国が指定する被災地域の店舗に対しては、 2012年3月末までの初期費用と月額システム利用料が無料になるキャンペーンを行っていました。キャンペーン期間中に申し込んだ店舗のロイヤリティも、売上によりますが2013年6月まで数%の減額をする場合があります。そうして出店したテナントを復興デパートメントという特集コーナーで我々がフューチャーしている、という形ですね。中でも、今回復興ベースを設立した石巻は、我々自身がより詳しく取材や企画をしています。

復興ベースは社長直轄――「経営陣の意思決定を即反映できる」

――情報発信と販売促進の両側面で支援している、ということですね。ある役員からは「黒字化するまでは帰ってくるな」という強いメッセージがありましたが、収益化を目指しつつ活動しているわけですが、ヤフーのサイトや機能自体に改変が必要な場合、東京とのやり取りや決裁権はどのようになっているのでしょうか?

須永 先日の新経営方針を受けてヤフー自体もプロジェクト単位にチームを再編し、チームごとに権限を委譲しています。ここ復興ベースでも同様に、チーム内にエンジニア・企画・営業ができるスタッフがいますので、単独で完結できるようになっています。また、通信回線含め東京同様の作業ができるようインフラを整えましたので、やり取りはスムーズに行えていますね。

石巻で復興支援にあたるヤフーの社員のみなさん

――企業が被災地に支援を目的として拠点を作る際、権限委譲が十分ではないケースもあり、また駐在するメンバーも定期的に入れ替わったりすることも多いようですが、ここ石巻で固定的なメンバーで完結できるプロジェクトである、ということですね?

須永 ヤフーは先日カンパニー制に移行しましたが、復興ベースはカンパニーに所属せず、社長の宮坂(学氏)直下の組織になっています。自律的であると同時にトップダウンの意思決定を即反映できる組織でもあるわけです。実は、ヤフーの中では5人のチームというのは結構大きい方なんですよ。

――そうなんですか?

須永 通常のサービスですと2〜3人のチームもあるんです。5人というのはある意味ぜい沢というか、ここで全ての機能が完結する狙いがあるというわけです。その分結果も求められているのですが(笑)。

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