事業の採算性を計算する方法そろそろ脳内ビジネスの話をしようか(1/2 ページ)

サービスの企画などを考えるとき、結構面白いものを思いつく社員でも、それが事業として採算を取れるかどうかの計算になるとまったく苦手だったりします。今回は具体的な仮想事例をもとに、損益分岐点の計算をしてみましょう。

» 2012年12月12日 15時05分 公開
[島田 徹Business Media 誠]
誠ブログ

 お客様のためにWebサービスの企画などを考える機会が多いのですが、面白いサービスが事業として採算が取れるかどうかになると話は別です。

 私の会社でも社員が出してくる企画書に、「損益分岐点は年間売上450万円」などと書いてある場合がありますが、

 「へえ。それで、これどうやって計算したの?」

 と聞くと、これが極めて我流な計算方法のこともあります。「ふうん、じゃあ、単価を10%上げたらどうなるの?」と聞くと、もう本人も訳が分からなくなってしまいます。

 それで私が1から教えることになるのですが、1度まとめておきます。ちなみに、私は非公認会計士ですのでこのあたりのうんちくは自己責任にて信じてもらって構いません。

損益分岐点を算出する

 確かに事業の採算を考える上で、損益分岐点の算出は非常に重要です。損益分岐点とは「それ以上売れば黒字になり、それ以下だと赤字になる」という分岐点です。これが年間売上500万円なのか、それとも1500万円なのかによって、その事業がどれくらい険しい道なのかを知ることができます。広告や効率化、原価の見直しなどのアクションを検討できるので、事業のスタート時には必要不可欠の検討要素です。

 ということで、具体的な仮想事例をもとに損益分岐点の計算をしてみましょう。今回は例として、以下のケースを検討します。

モデルケース:

自宅でカレーを作り、住宅街に持っていって「あっ、大岡越前見てる場合じゃなかった! もうこんな時間。今日の夕飯何にしよう!?」という、お茶目でグウタラな主婦にまとまった量のカレーを売りつける事業。


 損益分岐点分析で最も重要なのは、「総費用線を出来る限り現実に近く、正確に書く」、このひと言につきます。言葉でいってもなかなかピンと来ないと思うので、図で表します。

 先にこのオレンジの線を、イメージとして頭の中に書いておいてください。この線を書くことが、損益分岐点分析そのものといってもいいでしょう。しつこいようですが何度もいっておかないと、多くの方がすぐ我流の方法で計算し始めてしまいます。


 総費用線とはその名の通りすべての費用の線なのですが、この書き方にはルールがあります。汎用性を求めれば求めるほど抽象的になり、実務では扱いにくくなってしまいますが、「事業の採算性を検討し、スタートするかどうか決める」という目的であれば、以下のように計算します。この方法は、Webサービスでも人材派遣でも、どんな業種でもだいたい応用できます。

  • すべての計算は1カ月単位で行う
  • 仮の販売単価を決定する

 まずはこの2つです。後のチューニングで動かすかも知れませんが、まずここを決めておかないと人知を超えた計算になってしまいます。例えば、

販売価格
商品 価格
カレー 1000円(10皿分)

 と、仮定します。そして、次は「具体的に費用を算出する」のですが、その1000円のカレーを1パック売るためにかかる費用(売らなければかからない費用)と、売れようが売れまいが固定でかかってくる費用は性格が異なるのできっちり分けて考えます。前者を変動費、後者を固定費と呼びます。

変動費
仕入れ 価格
100円
ニンジン 30円
タマネギ 40円
カレールー 25円
光熱費 5円
容器代 80円
合計 280円

固定費
費目 コスト
調理人の給与 20万円
販売用車両の減価償却費 2万5000円
ガソリン代 7000円
合計 23万2000円

 減価償却費は、税法とかは関係ありません。投資額を耐用年数で割って月額に直せばよいです。ここでの販売用車両の減価償却費については、改装費込みで150万円の車を5年間乗るつもりで計算しています(150万円÷5年間÷12カ月=2万5000円)。

 パソコンや調理器具などの初期投資も、この減価償却費と同様に、その額を耐用年数で割って乗せます。耐用年数がない初期投資費用は、5年くらいで均等割してしまいます。

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