サービス業が抱えるマニュアル主義の盲点とは?トップ1%の人だけが実践している思考の法則(2/3 ページ)

» 2013年02月13日 16時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

2ちゃんねるで広まったディズニーランドの感動秘話

 このエピソードは、東京ディズニーランドの感動秘話として、そして泣ける話として2ちゃんねるを中心にネット中に広まったものです(※あくまで2ちゃんねるに出ていたエピソードなので、真偽のほどは分かりません)。ディズニーランドのそのお店では「お子様ランチは9歳以下」とマニュアルにはしっかり記載があったのですが、レストランの青年は子ども連れではない若い夫婦からお子様ランチの注文を3人前受けたのです。彼は、困りました。その上でその夫婦に聞いたのです。

 「どなたがお子様ランチを食べられるのですか?」

 すると、若い夫婦が「死んでしまった娘の命日に、3人でお子様ランチを食べるまね事をしたかったんです。娘は亡くなる前、ディズニーランドに来て、お子様ランチを食べるのを夢見ていたので……」と言うのを聞き、絶句したそうです。

 そして彼は、マニュアルに反して注文を受けただけでなく「子どもさんはこちらに」と子ども用のいすまで用意して、彼らを「家族連れ」としてもてなしました。若い夫婦は、亡くなった娘に思いをはせながら、3人分のお子様セットを食べて帰ったそうです。

 その後、ディズニーランドには、この夫婦からお礼の手紙が届きました。

 「お子様ランチを食べながら涙が止まりませんでした。まるで娘が生きているように家族の団らんを味わいました。こんな娘との家族団らんの体験を東京ディズニーランドでさせていただくとは、夢にも思いませんでした。これから、2人で前を向いて生きていきます。また、2周忌、3周忌に娘を連れてディズニーランドに必ず行きます。そして、私たちは話し合いました。今度はこの子の妹か弟かを連れてきっと遊びに行きます。本当にありがとうございました」

 この感動秘話は2ちゃんねるで話題になっていた話なので、真偽のほどは分かりません。ただこの話がディズニーランドの逸話の1つとなってかけめぐり、高いホスピタリティにあふれた夢の国、という強力なブランド価値を作り上げることになったといえるでしょう。

上質の顧客サービスを支えるリッツ・カールトンのクレド

 本当に素晴らしい顧客サービスはマニュアルだけからは生まれません。むしろ、マニュアルには載っていない、スタッフそれぞれの考えるカスタマー対応にこそ、人を感動させ、ファンにさせる部分が詰まっているといえるのです。

 接客マニュアルが充実しているマクドナルドでさえ、「マニュアルだけ盗んでも同じことはできない。サービスを提供するのは人だから」(原田泳幸社長談)と言っているくらいです。顧客満足は、スタッフの教育、特に理念の共有なしには達成できないと考えて間違いないでしょう。

 顧客満足度の向上を重視するサービス業では、マニュアルの代わりにクレドをかかげている企業もあります。クレドとは「信条」といったものです。マニュアルが「作業」や「操作」を標準化しているのに対して、クレドは「行動理念」の指針を提示しているものです。

 接客クオリティの高さで知られる高級ホテル、ザ・リッツ・カールトンのクレドカードには、シンプルに次のように書いてあります。

 「リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命と心得ています。私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナルサービスと施設を提供することをお約束します。リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たす心地よさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしてお答えするサービスの心です」

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