青色申告と白色申告はどう違う? 個人事業主の確定申告について増税サバイブ術(4/5 ページ)

» 2013年02月19日 13時36分 公開
[奥川浩彦,Business Media 誠]

青色申告とは

 青色申告を選択する理由は特典が得られることだろう。逆にためらう理由は記帳などのハードルの高さではなかろうか。この2つを天秤にかけ特典に利があると思えれば青色申告を選択すればいい。では特典からみていこう。

 青色申告の特典の代表的なものは「青色申告特別控除(65万円または10万円)」「青色事業専従者給与」「赤字の3年繰り越し」「減価償却の特例」だ。

青色申告特別控除

 青色申告特別控除は複式簿記で記帳し、貸借対照表、損益計算書を添付して3月15日までに確定申告を行えば65万円の控除を受けることができる。白色申告と同様な単式簿記で記帳すると10万円の控除だ。仮に所得税の税率が復興増税分も含め20.42%の人なら65万円の控除が受けられると13万2730円の節税となる。住民税の10%と合わせると19万7730円の節税だ。地域によって差はあるが国民健康保険も下がるので20万円以上得をする可能性がある。青10の10万円の控除だと、所得税で2万420円、住民税で1万円、合計3万420円の節税となる。当然税率の高い人ほど節税効果は大きくなる。

青色事業専従者給与

 青色事業専従者給与とは家族に対して払った給与を経費にできる制度だ。従事する期間、年齢などの要件を満たせば、常識の範囲で給与を経費とすることができる。例えば喫茶店などのお店を手伝ってもらったり、帳簿の入力を任せたりして毎月15万円の給与を払えば年間180万円を経費とすることができる。ただし、配偶者控除、扶養控除の対象から外れるので38万円の控除が差し引かれる。

 それでも差し引き142万円控除が増えるので、所得税の税率が20.42%の人なら28万9964円、住民税をプラスすると43万1964円もの節税となる。

 白色申告の場合は奥さん(配偶者)であれば年間86万円、子どもなどであれば50万円という制限がある。例えば就活に失敗した娘に仕事を手伝ってもらっても、給与を払ったことにできるのは年間50万円だけだ。扶養控除の38万円を差し引くと控除の増額は12万円。これならどこかにアルバイトに行ってもらったほうがトータルでプラスになるだろう。

赤字の3年繰り越し

 次は赤字の3年繰り越しだ。例えば喫茶店を開業したとしよう。店舗の改装などで初年度は500万円の赤字、2年目は100万円の黒字、3年目は200万円、4年目は500万円の黒字となった場合、白色申告で赤字の繰り越しができなければ初年度は所得税を納税しなくていいが、2年目からは納税義務が発生する。青色申告をしていれば、2年目、3年目も納税する必要がない。4年目は500万円から200万円を引いた300万円が利益となり納税額は大幅に減ることとなる。初期投資が必要な業種や大きな設備投資が必要な業種ではメリットがありそうだ。

減価償却の特例

 最後は減価償却の特例だ。詳細は次回紹介する個人事業主の節税で説明するが、青色申告をしていると10万円以上30万円未満の資産を「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」により、その年に全額経費として処理することが可能だ(合計額に制限あり)。

 例えば25万円のデジタル一眼レフカメラと24万円のPCを仕事用に購入したとしよう。通常カメラは5年、PCは4年に分けて経費とする(減価償却)。この場合カメラは毎年5万円、PCは毎年6万円が経費となる。常に一定のもうかり具合で税率が一定なら、特例により1年で全額経費にしても数年に分けて経費にしてもトータルすれば同じだが、浮き沈みが激しいのが個人事業主の宿命という現実もある。

 大きな買い物をするのは、もうかっている時となる可能性は高い。例えば購入した年の税率は20.42%だったが、翌年から売り上げが減り課税所得が下がり税率も下がった場合をシミュレーションしてみよう。

減価償却シミュレーション(青色申告)

税率 経費額 節税額
1年目 20.420% 49万円 10万0058円
2年目 10.210%
3年目 5.105%
4年目 10.210%
5年目 20.420%
合計 10万0058円

減価償却シミュレーション(白色申告)

税率 経費額 節税額
1年目 20.420% 11万円 2万2462円
2年目 10.210% 11万円 1万1231円
3年目 5.105% 11万円 5616円
4年目 10.210% 11万円 1万1231円
5年目 20.420% 5万円 1万210円
合計 6万750円

 この例では5年間のトータルで約4万円の節税となった。このようにもうかった年(=税率の高い年)に全額経費とすれば節税効果は高い。

 個人事業主といってもさまざまな仕事があるので以上の4つが必ずしも当てはまるわけではない。筆者の場合は過去6年間で「青色申告特別控除65万円」「減価償却の特例」の恩恵はあったが、「青色事業専従者給与」「赤字の3年繰り越し」は縁なしだった。これからも同じだと思われる。ご自身の環境と照らし合わせて特典による利がどれくらいあるかを類推していただきたい。

インフレ時代の確定申告

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