若者の「習っていません」発言に40代以上が「やる気がないのか?」と思うワケひといくNow!―人材育成の今とこれから―(1/2 ページ)

OJTで仕事を覚えた人が大半の40代以上は、若者が言う「習っていないから知らない」発言に受け身な印象を持ちます。一方で若者がそうした発言をするのには、ある社会要因が関係しているようです。

» 2013年07月31日 18時13分 公開
[原田由美子,Business Media 誠]
誠ブログ

 先日、40代半ばを過ぎて初めて人材育成に携わるようになったある人が次のようなことを言っていました。

 「最近若手が、すぐに『習ってない』と言うんだよね。これって、みんなそうなんですか? 私たちの世代は『習ってない』というのは禁句だったので、すごく違和感を感じるのですが……」

 実は私、この気持ちがとてもよく分かるのです。

 そこで今回は、若手の人には上司の考え方を。そして「やる気がないのか?」と感じる人には、若手とのコミュニケーション上のポイントを紹介します。

40代以上の価値観――20年前の仕事の覚え方

 私が20代のころの経験が、上司世代の価値観を知る上で役立ちそうなので述べていきます。

 新卒入社した生命保険会社は、人材育成システムがしっかりしていました。入社3年目までに身に付けなければならない知識やスキルの基準と方法、得なければならない情報は常に用意されていて、それを一定期間で身に付け次のステップを目指していくのです。そして売上成果を上げるための支援役として、5〜6人のチームに1人のトレーナーが付き、配属後3カ月間はほぼつきっきりでした。

 半年目以降は、自立して行動しつつ必要なサポートが得られます。常に、何を求められているのか、何をすればよいのかが非常に分かりやすい環境でした。また、身近に世代の近い先輩や同期も多いので、分からないことや困ったことがあれば聞きやすくもありました。

 その後、人材育成企業に入社しますが、その会社での人材育成の中心はOJTでした。といっても上司は全員役員で、コンサルタント。常にオフィスにいるわけではありません。指示がなくても動かざるを得ないOJT環境でした。そのような環境下で仕事を覚える方法は4つでした。

 1つ目は、上司の担当企業先に同行させてもらい、そこで打ち合わせ〜研修実施の現場を肌で感じること。

 2つ目は、上司が手書き(当時はまだPCが普及しておらず、上司はワープロが苦手)で書いた原稿をワープロ入力する過程で、研修運営の構造を理解していくこと。

 3つ目は、社内にある既存の企画に目を通すことや、参考文献を読むこと。分からないことは図書館で調べること。

 そして最後に、顧客先に1人で行き、会話の中で分からないことを書き留め、戻ってから上司に教えてもらったり、自分で調べたりしながら身に付ける。

 これが、仕事を覚える方法でした。

 そして、社内の専門分野以外の知識や情報(世の中の動向や営業手法のトレンドやノウハウ)は、書店に行き、売れている雑誌や本をチェックしたり、何となく「ピン!」ときた書籍を手に入れたりして学んでいました。

 生命保険会社と人材育成会社。ある程度決まったことをシステムにのっとって仕事を覚えさせる会社と、常に新しい状況に対応しながら仕事を覚える会社。全て用意された中で手際よく対応することを求める会社と、常に未知のテーマを与えられ、試行錯誤しながら取り組むことを求める会社。当時はただガムシャラに取り組んでいたので全く気が付きませんでしたが、置かれた環境により、仕事の覚え方も異なるわけです。

 実は、今の40代以上の多くは、OJTで仕事を覚えてきた人達が大半です。その人達にとって仕事を覚えるとは、きっかけをもらいながら、自分でつかみ取っていくもので、誰かが教えてくれるまで待つという感覚が希薄です。そのため、誰かが教えてくれることが前提となる「習っていない」という表現に違和感を覚えます。その理由は、この表現からとても受け身な印象を持つためです。

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