こうしてチームは「熱狂」し始めた(2/3 ページ)

» 2013年12月20日 10時00分 公開
[近田哲昌,Business Media 誠]

「熱狂」の源はリーダーが掲げるビジョン

 期初の営業戦略を立てるとき、リーダーはまず会社のビジョンを踏まえた、自分が所属する部門のビジョン作成に取り掛かると思います。そのときに私が意識するのは、「どのようなビジョンだったら、部下に熱く語ることができるか」だけです。そもそも、リーダー自身が本気になれない言葉を部下の前で堂々と語ることなんてできません。

 私が部下に伝える言葉は「頑張ろう!」ではなく、このビジョンなのです。そして、ビジョンは一度ではなく、繰り返し伝えます。

 マネジャー、局長時代に私が掲げていたビジョンは、「西日本事業部は、西日本市場で圧倒的ナンバーワンを目指す!」です。

 「西日本で圧倒的ナンバーワンになると言うからには、競合他社に勝つだけではなく、すべて撤退させよう。1社でも競合他社でネット広告を出している会社があったら、それは自分たちの力が至っていない証拠。すべての仕事を自分たちに任せてもらうんだ! そのために、1人ひとりがナンバーワンの営業になるんだ!」

 と、部下を繰り返し鼓舞していました。

 「熱いビジョン」をつくる理由は、もう1つあります。チームに「熱いビジョン」が浸透することによって、チームが「指示」でつながる関係から「目的意識」と「価値観」でつながる関係に発展するからです。

 社外の人に、よく「サイバーエージェントは社内の雰囲気が明るく、社員のモチベーションが高い」と言われます。会社に深くコミットすることを避けがちな若者が多いなか、なぜこのような雰囲気がつくれるのかと言えば、社長の藤田のリーダーシップはもちろんですが、会社のビジョンも大きな役割を果たしていると思います。

 サイバーエージェントのビジョンは、「21世紀を代表する会社を創る」。

 今、日本を代表する会社と言えば、ホンダやソニーなどが挙げられます。これらの会社に共通するのは、誰に聞いてもその会社を知っていて、グローバルに影響を与えていることです。

 また、その会社に対して外部から見たら素直にスゴイ会社だなと思えますし、そこで働いている社員は自分の会社に誇りが持てます。

 “そこそこ”では当然ダメ、ナンバー2でもダメ。

 サイバーエージェントは、つねにナンバーワンを目指しているのです。社長の藤田は、会社の規模が小さい頃から一貫してビジョンを語り続け、そして自分自身で「本気で成し遂げたいんだ!」という姿勢を示し続けています。

 そのことによって、社員の1人ひとりが「自分たちの会社が、本当にホンダやソニーのようになったらスゴイかも!」と次第に本気になっていきました。そして、会社全体に「チーム・サイバーエージェント」のような雰囲気が生まれ始めたのです。

 チームにビジョンを伝えるときに、同時に伝えていることがもう1つあります。

 それは、自分の「想い」です。

 ビジョンを伝えただけでは、部下はビジョンに対するイメージを深められません。そこで、自分の会社への「想い」と、仕事への「想い」もチームに伝えることで、ビジョンのイメージを固めるのです。

 具体的には、次のような問いの答えとなるようにします。

  1. 自分は仕事で何を成し遂げたいのか?
  2. 成し遂げることでこの会社はどうなるのか?
  3. 自分が目指している会社像はどういったイメージか?
  4. 自分はそのための戦略をどのように考えているのか?
  5. 自分はそのための課題をどのように考えているのか?

 自分の想いを部下に表明し、その次に部下との本音の議論につなげてお互いにイメージを固めていきます。

 「過去」に縛られた愚痴よりも「未来」を語る。そして、そのための「今」を語り、「ビジョン」と「目標達成」について語り合う。熱狂するチームをつくるには、リーダーが部下に繰り返し熱く語り、「指示」でつながる関係を超えて「目的意識」と「価値観」でつながる必要があるのです。

ビジョンが固まると「ブレないリーダー」になる

 ビジョンを語り続けていくなかで、

 「なんで?」
 「ナンバーワンになってどうするの?」

 と、部下が疑問を抱いたり、反発したりすることがあります。

 それでも、ビジョンについてだけは、部下に一歩たりとも譲りません。ビジョンに対して、チームでもっとも当事者意識を持った存在がリーダーでなければならないからです。

 いかなるときも、私は部下の前ではブレない態度を貫き通すことができます。私の部下への答えは、たった1つだからです。

 それは、「サイバーエージェントが、つねにナンバーワンを目指す会社だから」。

 会社がナンバーワンを目指しているのだから、その会社の営業チームも当然担当エリアでナンバーワンを目指さなければならないということです。

 このときに、部下に、

 「○○君が疑問に思う気持ちはよく分かる。俺も本当はいいと思っているわけじゃない。上からの指示で仕方なく言っているだけだから、よろしく頼むよ」

 などと返してしまうと、肝心のリーダー自身がそもそも当事者意識を持っていないわけですから、部下だって当事者意識を持ってくれません。

 どんな状況においても、ブレずにビジョンを熱く語り続ける。「目的意識」と「価値観」の浸透には、このリーダーの姿勢が欠かせないのです。

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