空気を読みすぎる日本人の議論がチームを弱くする?――最強チームの作り方(後編)ベストチーム・オブ・ザ・イヤー(2/2 ページ)

» 2014年02月25日 11時00分 公開
[ベストチーム・オブ・ザ・イヤー]
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―― ざっくばらんにアイデアを出し合える議論にするには、齋藤先生ならどうしますか?

齋藤氏: 「相手に対してネガティブなことを言わない」というルールを作っておくといいですね。日本人は反対意見を言われると、「むっとする」か「しゅんとしちゃうか」なんですね。一方、西洋古代の議論の礼儀は「相手に対してきちんと反論すること」、それはプラトンの本を読むとよく分かります。

 日本と西洋では根本的に議論の感覚が違いますので、日本人の場合は「対立した意見ではない」ことを議論の場で示し合うように、アイデアを重ね合わせていく姿勢が大切です。

―― まずはルールを決めてしまう。その後はどうすれば?

齋藤氏: ホワイトボードを使って議論をしてみましょう。ポイントは、議論の意見だけを書くようにすることです。

 例えば部長Aの意見に対して、メンバーBが意見を出している。参加者がこのやりとりを客観的に見ると、「うーん、じゃあ部長の方が正しい」と賛同してしまいがちです。「誰対誰」という構図ができ、意見の中身ではなく人格に対して賛同するという判断が伴うからです。

 一方、ホワイトボードに意見だけを書くようにすると、「誰の意見か」ではなく、その中身だけで議論できるようになります。人格を切り捨てた意見だけを、冷静に判断できるようになるんですね。ホワイトボードのない議論は、必ず破綻につながります。

「アイデアを出し合う、相手を否定しない」議論でチーム力を高めよう

―― 正しい議論をすることが、チーム力を高めることにもつながりそうです。その他、リーダーが心掛けるべきことはありますか?

齋藤氏: 「今はアイデアを出し合っている」とリーダーが言葉に出して言うことも良いです。「意見」ではなく「アイデア」を出し合っていると意識する。アイデアは「誰が出してもかまわない」ものですが、意見は「誰が言ったか」が重要になってしまうからです。

 僕はこれからの議論には、「意見ではなくアイデアが必要」と思っているんですね。例えばトラブルがあった場合は、「それ避けるためのアイデアを出して」とメンバーに伝えると、現実を変える手段が見えてくると思います。

―― これはすぐにでも意識して、実践できそうです。

齋藤氏: 後は「相手の意見を絶対否定しない」ことも大事ですね。一人の意見に頼るのではなく、みんなが次々と出したアイデアを褒め合うといい。その時に拍手をするといいですよ。「そのアイデアはいいね」と手を叩く。反対意見にも拍手をしながら「それはあるけど、このアイデアもどう?」と盛り立てていくんです。

 こうやってアイデアを持ち寄れば、最後の意思決定時にアイデアを生かせます。出たアイデアを見渡せるようにして、西洋の議論のように対立構造を作らないようにすると、どんどんアイデアが出てきます。これをホワイトボードで整理しましょう。

 「アイデアを出し、論点を整理する」ことが議論で大切なところです。黙っている人には「1個アイデアを出してね」と当ててみる。これを繰り返すことで、空気を極度に読んだり、消極的になったりするメンバーは段々少なくなっていきます。

 リーダーはチームの時間と空間を管理する人だと思うんですね。ですから、「時間を1分取るので考えてください、1分後にアイデアを出してくださいね」というように、議論をリードしていくと良いと思います。

―― 今までの日本式の議論では、チーム力は上がらない。

齋藤氏: 日本のチームは、蹴鞠(けまり)をやってきたんですね。絆があって、お互いに蹴鞠のパスを回し続けてきた。でも誰もゴールを狙わない。

 一方これから大事なのは、ゴールを決めることですよ。ゴールとは、みんなのアイデアで現実を変えるように動くということです。どんどんとシュートを打っていくということですね。

―― 正しい議論ができるチームは、結果として強いチームになりそうです。

齋藤氏: 日本人は議論力がないのではありません。アイデアを生み出すためにクリエイティブな関係性を作り出したことがない、チーム作りという「スポーツ」をやったことがない。それだけなんです。ですから、スポーツと考えてチーム作りに取り組んでみることをお勧めします。

(取材・執筆:藤村能光/撮影:橋本直己)

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