個人からチームへ――課題解決のアプローチが変わる中、リーダーの役割も変わりつつある。支えるリーダーもいれば、細やかな配慮に長けたリーダーもいる。カリスマである必要はない――。こう話すのが明治大学教授の齋藤孝氏だ。
チームで仕事やプロジェクトを進める際の考え方やヒントを探る本記事「最強チームの作り方」は、「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー」より転載、編集しています。
ベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、その年に最もチームワークを発揮し、顕著な実績を残したチームを毎年表彰するアワードです。サイトでは日本の組織が持つべき「チームワーク」について、精神論ではなく、組織とメンバーがともに成長できる論理的な方法を考え、提案しています。
「リーダーになりたくないと言うことは、仕事をしたくないということと同じ」「誰もがスティーブ・ジョブズのようなカリスマリーダーを目指さなくてもいい」――。こう話すのは、ベストチーム・オブ・ザ・イヤー実行委員会 委員長に就任した 明治大学文学部 齋藤孝教授。若手ビジネスパーソンが抱えるチーム作りの悩みを解消してもらいます。
―― 齋藤先生は新著『人はチームで磨かれる』を出されましたね。今、チームが改めて見直されている理由は?
齋藤孝氏: この20年で急速に仕事の質が変わり、ビジネスの課題が絶えず生まれ、処理すべき情報が膨大になっています。そこで問題を見つけ、解決していく姿勢こそが、仕事の本質になりつつあります。いわば、非常に早い潮の流れを泳ぎきれる人間が求められているのです。
今、仕事で本当に必要なのは「新しい意味や価値を生み出すチーム」を引っ張っていける力だと思うのです。プロジェクトは特別なものではなく、日々の業務がプロジェクト的になっています。チームが直面する課題ごとに、誰もがリーダーになって課題を解決していく――そんなチーム作りが必要であり、与えられた仕事をするだけでは不十分なのです。
与えられた仕事をちゃんとしていれば、みんながうまくいく日本経済の時代がありました。高度経済成長期の波に乗れた時代だったんですね。でも今は、新しい価値を生み出せなければ、それは仕事と呼べなくなってきています。簡単な業務はPCでできますし、アウトソーシングで外注することも可能ですから。
―― 個人の力ではなく、チームで課題に対応する力が求められている。
齋藤氏: ええ、ビジネスにおいて必要なチームは、サッカーから学べます。サッカーはピッチに立った全員が動き、守りますよね。チーム全員がゴールに向けたアイデアをその場で共有しながら、チーム全員で攻守を一体化していく。メンバーごとにこれをしなさいと決めるのではなく、全員がその場でそのつど判断し、連動して動くことが求められているのです。
今の時代が仕事やチームにリーダーシップを要請しているのなら「リーダーシップなくして仕事はない」ということです。誰か一人にリーダーシップがあればいいのではなく、全員がリーダーシップを持っておく必要がある。これがポイントでしょう。
―― ベストチーム・オブ・ザ・イヤー実行委員会が若手ビジネスパーソンに調査を実施したところ、回答者の7割が「リーダーになりたくない」と答えました。
齋藤氏: 「リーダーになりたくないということは、仕事をしたくない」という表明と同じではないでしょうか。今の時代がリーダーを求めていて、誰もがリーダーとして意識を持つ必要があるにもかかわらず、このような回答になる。ここに大きなギャップがあります。
ここは考え方をすっきりと改めて、「リーダーシップなくして仕事なし」「リーダーになる覚悟がなければ、仕事をしたくないということだ」と考えてみると良いでしょう。
―― 「自分なんてどうせ偉大なリーダーにはなれない」と挑戦を避けてしまう傾向があるのかもしれません。
齋藤氏: 「カリスマをリーダーと思うな」と伝えたいですね。リーダーにはさまざまな形があって、支えるリーダーもいれば、マネジャー的な細やかな配慮に長けたリーダーもいます。カリスマである必要はまったくないんですよ。
大切なのは、当事者意識を持つことです。チームの目の前にある課題を自分の問題と考え、自分の責任で問題を解決する。独立採算的な考え方で現況を乗り越える覚悟を持つということです。
―― 偉大なリーダーになれないと考える必要はないと。
齋藤氏: ええ、「自分がリーダーに向いているかを考える時間は無駄だ」ということですね。なぜなら誰もがリーダーという自覚を持って、チームを回していくことを求められているからです。
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