中小企業を元気にするスマホ導入の極意――成功企業の社長に聞いた誠 Biz.IDセミナーリポート(1/3 ページ)

スマホユーザーが増えるのと比例して、ビジネスシーンでのスマホ利活用が進んでいる。ただし、スマホを導入したら「終わり」という話ではない。成果をきっちり出している先行企業に共通するものとは?

» 2014年03月26日 12時00分 公開
[宮田健Business Media 誠]

 誠 Biz.ID編集部は、主催セミナー「成功企業に学ぶ “仕事に効く、スマホ導入の極意”」を2014年2月14日に横浜市で、2月21日に広島市で開催した。参加者は、スマートフォンやタブレットといったスマートデバイスを活用する企業の成功事例の紹介やスマートデバイスを導入・運用するうえで注意すべきセキュリティのポイントを熱心に聞いていた。今回は活用事例を紹介した第1部を中心にリポートする。

セミナーの内容
スケジュール 講演タイトル
【第1部】成功事例を学ぶ 「経営のスピードアップ、多様化する働き方への布石、スマートフォンの業務活用とは?」
【第2部】安心・安全を学ぶ 「自社だけの問題じゃない――モバイルセキュリティ対策が必要なただ1つの理由」
【第3部】役立つサービス紹介 「ビジネスmoperaあんしんマネージャーで何ができるのか?」

渋谷のシェア40%強! スマホと足で稼ぐ――山崎文栄堂の場合

 横浜会場で成功事例として登場した山崎文栄堂は、1925年に町の文房具店として渋谷で創業した。現社長の山崎登氏が家業を継いだときは赤字続きで倒産の危機にひんしていた。

 だが、現在では取引社数3万社、売り上げも45億円を突破。従業員数40人にも満たない中小企業に何が起きたのか。1つは、山崎文栄堂のビジネスモデルをオフィス文具の通販代理店に切り替えたこと。もう1つは、ITの積極的な全社活用にある。

山崎文栄堂 住所が大きく目立つ、山崎文栄堂のオフィス

 その成長を下支えしているのは、同社が積極的に取り入れたスマートデバイスの力だ。内定者を含む全社員にスマホ、タブレットを配布。電動アシスト自転車を使って渋谷区内の企業を訪問し、オフィス文具の営業を行うというデジタルでアナログな商売を続けている。

 主に利用しているのは、グループウエアや地図・経路情報アプリ、バックオフィス系のツールなど、どの会社でも使っているような一般的なものだ。ただし、山崎文栄堂の全社員がこれらのツールを使いこなしていることは特筆すべき点だろう。

 「スマートデバイスはあくまでもツールです。導入することが目的ではなく、社員がムダな作業をしなくていいようにするためのITでなければダメです。そのためには、導入しようとしているツールが『全員で等しく使える』ものであることが一番大切なんです」(山崎氏)

山崎文栄堂 自転車にのって外回り営業をする社員は、タブレットを首からかける専用ケースを使っている

 山崎文栄堂には、デジタル世代の若手社員もいれば、IT活用になじみの薄い中高年社員もいた。どうしたら、社員全員が使えるようになったのだろうか?

山崎登 山崎文栄堂の山崎登社長

 「必要なのは『粘り』。システム部門の粘りもそうですが、最後の1人まで使わせるんだという社長の粘りですね。ITを使える人はすぐ使いこなします。一方で、なかなか使いだせない人もいる。そのような使っている人と使っていない人がいる状況では、社員の間に不公平感が生まれてしまいます」

 山崎氏はまず、全社員が3週間先までの予定をグループウエアに必ず入力するルールを定めた。もちろん、社長本人もこのルールからは逃げられない。山崎氏は定期的に全社員のスケジューラをチェックしていて、「未入力の社員がいるグループは全社員に食事をおごる」といったゲーム感覚のルールも導入した。

 「最後の1人までケアして、みんなで使っていけるように。全員でやれば会社全体の生産性を上げられることを実感できる、そういう自信を持って導入しました」(山崎氏)。

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