分業制でプロジェクトを進める場合、絶対に知っておきたい情報は「どの作業が自分に影響するのか」ということです。それだけを的確に知るにはノートのほうが便利かもしれません。
チームで取り組むプロジェクトが「いま、どうなっているか」を知るための情報は大切です。しかし、メンバー全員がお互いの細かな進捗をチェックするのは難しいことです。
チームメンバーの1人として、どうしても知りたい情報というものは「自分に影響する作業の進捗」ではないでしょうか? 例えば、ほかのメンバーが進めているAという作業が終わらないとBという自分の担当分に着手できないといったケースが考えられます。しかし、作業Aが遅れた結果、当初1カ月かけてやるはずだった作業Bの期間が1週間になってしまったら、たまったものではありません。
そのためにプロジェクトマネージャーという役割があるのですが、機能しなかったり、そもそも不在だったりします。メンバーとして知っておくべき状況を早めに知るためにできることはないのでしょうか?
海老名久美さんは、テクニカルライターや翻訳者として「CNET Japan」「シゴタノ!」「iPhone女史」といったメディアで連載を執筆しています。3カ月に1回くらいのペースで、5〜6人のチームで翻訳する仕事もあります。海老名さんがこの翻訳プロジェクトの管理に使っているツールが、何と「yPad」というアナログなノートだと聞いて驚きました。
yPadは、iPadとだいたい同じ大きさの横長のスケジュール帳です。左ページには1日のスケジュールを、右ページには複数日にまたがるスケジュールを記入できます。そして何より特徴的なのは、日付が印刷されていないということ。必要に応じてユーザー自身が日付けを記入して使います。
簡単にyPadの良いところをまとめると以下のような感じです。
海老名さんといえば、ガジェットやライフハック系アプリに非常に詳しい人です。実際、OmniFocusやOmniplanといったプロジェクト管理ツールはもちろん、Liquidplannnerという「それっぽいもの」まで一通り試したと言います。ところが、最後にたどりついたのがyPadでした。筆者は、なるべく仕事からアナログを遠ざけるようにしているので、この流れにはショックを受けました。
海老名さんは、このアナログなツールの良い点を「詳しく知りたいところと、そうでないところをはっきり分けられるから」だといいます。確かにデジタルのツールは、あらゆる工程をなるべく同じように扱いがちです。つまり、デジタルでは自分の作業工程だけを詳しく書き込み、自分にあまり関係ない人の工程は事実上無視するといったことがやりにくいのです。少なくとも紙のほうがはるかに簡単です。
彼女が知りたかったのは、プロジェクト全体の工程や進捗ではなく「自分はいつごろ忙しくなるのか」「誰の作業が遅れると自分にしわ寄せがくるのか」ということです。極端にいえば、それだけが分かれば十分であって、yPadはぴったりだったというわけです。
プロジェクトの中でどの作業が自分に関連するのかを明確にするには、プロジェクトリーダーに直接聞いてしまうことが手っ取り早く、一番確実です。その場合、自分がどんな情報を欲しているのかを分かりやすく示すことも必要です。
そのとき、リーダーの手元に企画全体の工程表がないかもしれません。もしもノートに企画全体のざっくりとした工程表を書いてあれば、それを見たプロジェクトリーダーが「いま、どういう状況にあって、いつごろどうなるのか」を伝えやすくなります。
yPadのようなアナログツールの有利な点は、わざわざ情報を取り出して「印刷」しなくてもよいというところです。普段から持ち歩いているものを持っていて見せるだけですから。
チームメンバーとしてちょっとしたプロジェクト管理をするには、デジタルツールを使うよりもアナログツールを使うほうが便利になることがあります。なぜなら、
という2つの特徴があるからです。「アナログツールはいまひとつ苦手」という人でも、状況によってはyPadのようなノートを使ってみるのも一考の価値がありますね。
心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。
著書に『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』『クラウド時代のタスク管理の技術』などがある。
ブログ「ライフハック心理学」主宰。
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