相手の気持ちを読んで会話をする――。スムーズな会話をする上で欠かせないポイントなのですが、これが意外と……というか、なかなか難しい話なのです。今回は相手の期待に応えるコミュニケーションについて考えてみます。
職場で感じるストレスの原因は、うまくコミュニケーションがとれないことによるものが多いようです。本連載では、伝え方や接し方、聴き方に至るまで職場でよくあるエピソードをもとに、仕事や物事がより円滑に進むようなコミュニケーションのヒントをご紹介します。言葉を受ける側の立場や気持ちを理解し、自分が発する言葉について見直してみてはいかがでしょう。
悪気はなくとも相手を不愉快にさせてしまう。正しいことを言っているはずなのに、相手が怒らせてしまう……。そんな人を見たことはありませんか?
もちろん悪意はないのですが、こうした行動を繰り返していくうちに、本人に自覚がないまま、周囲に人が寄りつかなくなってしまいます。逆に、スムーズに楽しい会話ができる人の周りには、多くの人が集まり、有益な情報や知識が交換されるなど、価値ある場ができやすい。
今回は職場の話から少し離れ、仕事でもプライベートでも大切な“相手の期待に応える”コミュニケーションについて2つのケースを基に考えてみます。まずは、新幹線で耳にした、会社の先輩と後輩と思われる2人のやりとりです。
先輩: そういえばさ、先日のA社の案件、どうなった?
後輩: あ! ありがとうございます! 実はやっと決まったんですよー。
先輩: おぉ、そうなんだー。でもさ、ここだけの話、あの会社は要求高くて大変だよな。
後輩: え? えぇ、はい。
先輩: 担当者もさ、変わるたびに水準厳しくなるもんなぁ。でも、コスト抑えろって言うし。僕も担当していたときは、しょっちゅう終電だったよ。でもまぁ、がんばれよ!
後輩: えぇまぁ、はい……、がんばります。
このような流れで会話が進み、案件が決まって嬉しそうだった後輩の様子は、どんどんトーンダウンしていきました。もう1つの例は、カフェでのカップルと思われる2人のやりとり。
女性: 上司がすごくめんどくさいのよ。全部把握しなきゃ嫌なタイプらしくって。タスクの1つ1つも、全部納期チェックしてきてさー。言われなくても仕事くらいするっていうのにさー。
男性: 上司がタスクチェックするのは、当たり前なんじゃない?
女性: でも、そこまで? って思うことまでいちいちチェックするの。そんなにチェックに時間使うなら、違う仕事してって思うよ。
男性: チェックすることで、ミスをなくしたいんじゃないかな。君もチェックしてもらって、助かったことあるんじゃないの?
女性: そりゃ、なくはないけど……でも。
男性: 結局のところ、何がマズいの?
女性: ……。
この場では、女性は最後黙ってしまいました。納得した沈黙ではなく、口を開いたら「そうじゃなくって!」と、ケンカを始めてしまうような沈黙でした。
さて、どちらのケースでも話し相手のトーンは下がってしまっています。いったい、この会話のどこが間違っていたのでしょうか。
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