タスクリストは便利ですが、完璧に作り過ぎてしまうとタスク数の多さにげんなりしてしまいます。タスクと資料の関係性を見極めてみましょう。
優先的にやるべき仕事は何なのか? どの仕事から手を付ければいいのか? 効率的に仕事をこなすのであれば、まずタスクリストを作って、俯瞰(ふかん)してみることが重要です。
タスクリストを作るという作業は、「気になることや溜まっていることの洗い出し」から始めます。これは、ナレッジワーカーのための仕事術ともいえる「GTD(Getting Things Done)」にも通じるところがあります。
やってみると分かりますが、「洗い出し」という作業は、なかなかに楽しいものです。なぜかといえば、
といった心理が働くからです。
もっとも、仕事をたくさん抱えている人に共通する悩みもあります。それは、やるべきことを洗い出したはいいが、それを全部実行しなきゃと思うと気が重くなるということ。
筆者はフリーランスなので、油断すると仕事がわけもなく増えるという問題にはイヤというほど悩まされています。タスクの洗い出しで一時的にスッキリしたとしても、次の瞬間には現実に引き戻されます。「全部処理するなんてどうすればいいんだ」と。
しかし、長年のタスク管理の経験から、さまざまな知恵がついてきました。「タスクが多すぎるならば、必ずしもやらなくてもいいこと」を外していけばいいのです。そして、外したタスクは「資料」としてリスト化しておきます。
原稿を書くことは「タスク」ですが、そのために必要な参考資料は文字通り「資料」です。簡単に区別できそうな気がしますが、実はあいまいになりがちです。例えば、「原稿を書くために、片っぱしから参考資料を読む」はどちらでしょうか?
正解は、タスクです。「アイデアメモ」は資料ですが、「アイデアを試す」のはタスク。「関係者リスト」は資料ですが、「関係者のすべてとじっくり話し合う」ならタスクです。つまり、資料だと思っていたものは、すべて簡単にタスクになり得るのです。
このように、洗い出しで理想的な状態を追求し、完璧主義志向を強めることで、大量にタスクが並んだ絶対にできないタスクリストが完成します。
タスクが多すぎると思うなら、この逆をやればいいのです。「すべての資料を読む」というタスクを「参考資料リスト」に戻します。「○○を試してみる」というタスクをやめて「アイデアリスト」にする。
タスクでなくなれば、「時間がないなら読んだり、試したりしなくていい」と安心できます。そのうえで必要があれば「資料リストの中から1冊だけ読む」「アイデアリストに1時間以内で目を通す」というタスクに振り替えればいいのです。
チームのプロジェクトが停滞しているようだったら、「このタスクは資料にしておいてもいいのではないか」という提案をしてみるのも良いと思います。
とにかく何にでもタスク化してチェックボックスを打たないことです。チェックボックスにチェックを入れるために行動をとらなければならないという思い込みから解放されるようにしましょう。
心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。
著書に『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』『クラウド時代のタスク管理の技術』などがある。
ブログ「ライフハック心理学」主宰。
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