『日本電産 永守イズムの挑戦』――会社を蘇らせる6つのステップ:藤沢烈の3秒で読めるブックレビュー
日本電産の永守重信CEOは、当代を代表する経営者。その経営手法を余すことなく記したのが『日本電産 永守イズムの挑戦』である。会社を蘇らせる6つのステップを紹介しよう。
日本電産は日本を代表する小型モーターメーカーであり、20社以上のM&Aを通じて急拡大してきた。その原動力が、創業者でありグループCEOの永守重信氏。当代を代表する経営者の1人である永守氏の経営手法を余すことなくつづったのが『日本電産 永守イズムの挑戦』である。
日本企業を蘇らせる6つのステップ
買収企業の立て直しを数多く陣頭指揮してきた経験から、永守社長は企業再建を定石化させている。
- 戦略・企業買収。競合に対する技術を持っているかを見極める。
- 再建の第一歩は経費削減。1円以上の支出をすべて永守社長が決済することで、コスト意識を高めさせる。
- 購買費削減。永守社長を含めて、内部で3〜5段階のチェック体制を設けることで、費用削減の取り組みを徹底。
- 業務効率化。役員含めてトイレ掃除を自分たちが行い、窓枠のホコリすらもチェックする。指標が60点を越えると黒字化、80点を越えると最高益になるとの相関があるという。
- 労働生産性改善。雇用と給与は維持する代わりに、社員には出勤率を90%以上、出勤時間も長くして成果を出させる。
- 経営人材転換。買収先企業が最高益を出す際には、何かの事業分野は大きく伸びている。その事業担当者を、次の社長に抜てきするのだ。
短期間で意識も業績も変えてしまう
共通しているのは「意識変革」だろう。自力(技術力)がある会社ならば、足元の経営改善で短い帰還で収益の改善が図れる。その実績を見せつつ、社員全員の仕事への意識を変えさせることで、利益を生める会社へと変貌(へんぼう)させている。また経営陣を自社から出すことで、自信も回復させている。
日本では暗い雰囲気が漂うが、まだまだ地力はあるはず。今の日本に必要なのは、経営者だろう。
著者紹介 藤沢烈(ふじさわ・れつ)
RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在1200冊超。
関連記事
- 連載バックナンバー
- 経営コンサルタントの仕事とは――藤沢烈さん(前編)
「これからの日本に必要なのは、革新的な経営感覚を持った若き経営者だ」――そう考え、有望な人材の発掘・育成のサポートに日々邁進する経営コンサルタントがいる。藤沢烈、33歳。マッキンゼー出身、現在は独立してベンチャー企業のコンサルティングを行う、彼の日常とは? - 1人シリコンバレー創業プロジェクト、そして――藤沢烈さん(後編)
「エゴは罪悪ではない」「200年先を見据えて考える」――思案しながら藤沢さんが選びだす言葉は非常にユニークだ。その彼が企画したのは“起業経験がない若い人に、1億円出資します”という一大プロジェクト。彼の思いは、そこに至るまでの人生とは……?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.