忙しいときに真価を発揮する理由――「1日1箱」の習慣とは:あなたの不安、見積もります
「1日1箱」という仕事術は、今日やれる分だけの仕事を箱に入れ、それ以上はどんな仕事が舞い込んできてもその箱には入れない、つまりその日のタスクにしないという考え方です。でもそれで、忙しい時に仕事は回るのでしょうか。
以前、『残業ゼロの「1日1箱」仕事術』(中経出版)という本を上梓したとき、読者から、こんな質問をいただきました。
ビジネスパーソンの気になる疑問
忙しくなっても、「1日1箱」で仕事が回っていますか?
結論から言うと、もちろん仕事は回っています。「1日1箱」という仕事術は、仕事量を見積もり、1日にできる仕事を箱に入れるイメージ。ポイントは、今日やれる分だけの仕事を箱に入れ、それ以上はどんな仕事が舞い込んできてもその箱には入れない、つまりその日のタスクにしないという考え方です。
質問した読者はきっと、1日の仕事量の上限を決めてしまったら、それ以上に忙しい場合、1箱からタスクがあふれてしまい、仕事が回らなくなるのではないかと思ったのでしょう。
そもそも、忙しくなったら回らなくなるような仕事術など、何の意味もありません。1日1箱であれ、タスクシュートであれ、ひまなときにはそれほど意味をなさないのです。時間が有り余っていて、余裕しゃくしゃくの時には、やるべきことはきちんと頭の中で整理できていますし、ダブルブッキングなどにも見舞われないものです。
時間に追われ、余裕がなくなってきたときにこそ、不安に見舞われ、やるべきことを思い出しそびれ、血の気も失せるダブルブッキングをやらかしてしまう。そういうものです。
「自分が何をやっているのか」しっかり見据えられているときに、「1日1箱」の原則など順守していても、たいして意味がないように思えるはずです。
しかし、余裕のあるときに、自ら確立したルーチンシステムをしっかり回しておくと、忙しくなったときに、機械的に動くだけで、嵐をやり過ごすことができます。ひまなときに自分なりの仕事術になれておくことは、ある意味で、防災訓練のような役割を果たします。
わたし自身には、毎日片付けるべき仕事が、少なくとも5つあります。
- Gmailの受信トレイ
- 1日分の書類ファイル
- 1日分の財布のレシート
- 1日分のメモ
- Evernoteの受信ボックス
これらを夜、仕事の最後に「ゼロ」にします。1日の終わりのタイミング以後に入ってきた分については、その後に処理する。そういうルーチンです。普段からロボットのようにこのシステムを守っていれば、いざというとき、何がどうなっているかが自分では見えなくなっていても、致命的な事態には見舞われないものなのです。
筆者:佐々木正悟
心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。著書に、『スピードハックス』『チームハックス』のほか『ブレインハックス』、『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』、『やる気ハックス』などがある。「シゴタノ!−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。ブログ「ライフハックス心理学」主宰。
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