プレゼンのアイデアをマトリクスのパズルから考えてみる:プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術
プレゼンに入れ込むアイデアをどのように考えるか? すでに聴衆が答えを持っていて、それを具現化すればいい場合。問題解決型の時は、わりとこのパターンが多いです。もう1つは、独創的なアイデアが欲しい場合。今回は、そんな場合にマトリクスの組み合わせを使って、アイデアを生み出す方法を紹介したいと思います。
問題点の改善に集中するのか、まったく新しい価値を提供するのかの違いはあれど、アイデアを効率的に作るためのツールは変わりません。
私の場合、発想の道具として重宝しているものとしてマトリクス、マインドマップ、ブレストがあります。アイデア発想法は世の中に400種類以上あるといいますが、根本的な部分はさほど変わりません。アイデアはいきなり生まれてくるものではなく、何かに触発されて連想したり、何かの組み合わせによって新しいイメージができたりするものです。
ですから、連想や組み合わせによる新しいイメージを促進させるための発想ツールを持っておくとなにかと便利です。私の場合は、それが先ほどのマトリクス、マインドマップ、ブレストなのです。
アイデア発展「3種の神器」――マトリクス、マインドマップ、ブレスト
- マトリクスでアイデアを組み合わせる
- マインドマップで自由に連想する
- ブレストで他人のアイデアに触発される
アイデアを大量生産するために一番有効なのはマトリクスを使うこと。マトリクスは縦軸、横軸に異なる項目を設定して、その交点(つまり2 つの組み合わせ)からアイデアを発想します。どのような項目を設定するかが、アイデアが面白くなるかどうかのポイントです。
縦軸と横軸に異なる要素を配置するマトリクスでは、その交点のセルに組み合わせから発想するアイデアを描き込んでいきます。要素がはっきりしている場合に向いているかもしれません。
逆にマインドマップは、1つのアイデアやテーマから、連想するものをどんどんツリー状に描き加えて、放射状に展開するものです。中央から外に広がるため、連想の自由度も高い気がします。
ブレストは、少人数によるアイデアミーティング。他人のアイデアをさらに発展させたり、他人のアイデアに触発されて自分のアイデアを磨き上げる点が、1人で考えるよりも新しい可能性を秘めています。
マトリクスから突拍子のないアイデアが生まれる可能性が高い
マトリクスは、縦軸と横軸の要素の組み合わせから発想するため、自由な発想を限定する反面、アイデアを思いつきやすいというメリットがあります。マインドマップが自由な連想による発想ツールだとすると、マトリクスは強制発想的なツールです。
また、組み合わせる要素に意外性があればあるほど、従来にはない発想も可能となり、面白いアイデアが出てきます。「異種混合」によるアイデアアプローチには特にマトリクスが適しています。
あなたが新作ドラマの脚本家なら……?
主演がキムタクと柴崎コウだと決まっているドラマがあるとします。このとき、各々の役柄が「刑事とその同僚」「若手実業家と恋人」などではありきたりで面白くありません。そこで、脚本家のあなたはマトリクスを使います。縦軸に俳優名、横軸に意外性のあるテーマを置き、そこから浮かんだ役柄を交差するセル上に描き込んでいくのです。
テーマも適当に新聞のニュースや雑誌記事から抜いてくればよいのです。「つぶれかかった老舗のラーメン屋」「ロケットを飛ばそうとする町工場」「大病院が医療ミスで謝罪」「証券会社が誤発注」など、なんでもありです。
例えばこんな筋書きはどうでしょうか?
証券会社の元エリートサラリーマンで過去の忌まわしい出来事によってパニックに陥って誤発注し、会社を追われた男に木村拓哉さん、その事件の背後にある会社ぐるみの問題を取材する記者に柴崎コウさん――。
結構面白いと思うんですが、いかがでしょう。
集中連載『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』について
パワポの前に「図」で考える――。ベストセラー『頭がよくなる「図解思考」の技術』の第2弾となる本書は、プレゼンテーションの根幹とも言える「メッセージをどう作り、どのように伝えるのか」を図で整理する方法を解説しています。
「見栄えのいいスライドを作ること」や「説得力のある話し方をすること」も当然大事ですが、プレゼンの目的(メッセージ)そのものが洗練されていなくては、聞き手の心には届かないからです。営業プレゼンテーションや講演に限らず、ちょっとした説明や商談、または報告などにも応用可能で、あらゆるビジネスシーンで活躍するはずです。
目次
- 第1章:残念なプレゼンは、なぜ眠たくなるのか?…面白いプレゼンの秘密とは?
- 第2章:考えがスッキリまとまる図解プロットの技術…自分の考えを整理する方法
- 第3章:「合体ロボ作戦」でシナリオに磨きをかける…プレゼンの流れを作り出す
- 第4章:魅力的なスライドラフを描いてみる…ハイクオリティなラフ描きの技術を公開
- 第5章:図解プロットに挑戦!…実際に、考えをまとめ、シナリオを作り、ラフを描く
- 第6章:魅力的なアイデアを作り出す10のテクニック…使えるアイデア発想法
著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
連絡先: nagata@showcase-tv.com
Webサイト: www.showcase-tv.com
Twitterアカウント:@nagatameister
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 筆者別記事一覧:永田豊志関連記事
プレゼンにどのくらいの時間をかけるべきか?
プレゼン内容をしっかり伝えるには、聞き手の集中力を考慮しましょう。聞き手が興味をもって持続して聞ける最適な時間はいったいどの程度でしょうか? そのヒントが「10/20/30ルール」です。
要注意! そのプレゼン、ストライクゾーンはどこですか?
プレゼンテーションで失敗しない予防策は、前回の「聴衆分析」と聴衆のストライクゾーンを知ること。ストライクゾーンを事前に、正確に把握しておきたいところです。このため、先方とのヒアリングが重要になりますが、どうやってヒアリングをすればいいのでしょうか。
プレゼンがうまい人の「聴衆分析」――3つのポイント
プレゼンで真っ先に考えるべきは「どのような人々がそれを聞くのか」ということ。これが「聴衆分析」です。例えば、福島原発の問題や計画停電における東京電力の記者発表も1つのプレゼンでしたが、聴衆分析はできていたでしょうか? われわれ国民の知りたいことに答えていたでしょうか?
失敗しない永田式プレゼンの「ラフ」ギャラリー(グラフの注意点編)
スライドのラフを描かずに、PowerPointやWordでいきなり提案書を作っていませんか? 何事も、アウトラインを固めてから作業に移ったほうが、最終的に効率がよくなるものです。今回はグラフを書くときの注意点を紹介します。
失敗しない永田式プレゼンの「ラフ」ギャラリー(グラフ編)
スライドのラフを描かずに、PowerPointやWordでいきなり提案書を作っていませんか? 何事も、アウトラインを固めてから作業に移ったほうが、最終的に効率がよくなるものです。


