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» 2005年08月24日 21時25分 公開

OFDMとは何か? 1 塩田紳二のモバイル基礎講座 第7回: (2/3 ページ)

[塩田紳二,ITmedia]

複数の搬送波を使う「マルチキャリア通信」

 前回、より多くの情報を送ることができる通信方式として多値変調について解説しました(6月13日の記事参照)。同じように多くの情報を一度に送る通信方式として「マルチキャリア」があります。

 マルチキャリアとは簡単にいえば、複数の搬送波(キャリア)を使って同時に複数データを送る方法です。多数の通信を同居させる周波数多重分割(FDMA)とよく似ていますが、マルチキャリアは1つの通信を複数の搬送波で同時に送信するための方法なので、個別の搬送波だけを受信しても情報としては意味を成さないものになってしまいます。

 マルチキャリア方式は、それぞれが別々の周波数になっているため、特定の周波数に影響する伝搬障害に強いというメリットはあるものの、占有する帯域が大きくなってしまうという問題があったため、これまではあまり利用されてきませんでした。逆にいうと、キャリア同士の間隔を狭めることができれば、全体の占有帯域を小さくすることができるわけです。これを実用化したのがOFDMなのです。

“直交”関係にあるものは、合成されても元に戻せる

 さて、いよいよOFDMを説明することにしましょう。OFDMとは、Orthogonal Frequency Division Multiplexingの略で、「直交波周波数分割多重」という意味です。

 このときの多重とは、“複数の周波数を同時に使って並列的に通信する”という意味です。簡単にいえば、この通信方式では、複数の周波数で同時に複数のビットを送信できるため、転送効率が高いのです。ただしこれは周波数分割(FDM)と違って、個別の通信を共存させるための技術ではありません。広い意味では、マルチキャリア通信の1種で、変調方式の1つです。

 複数のキャリア周波数で同時に通信を行うためには、その周波数同士の干渉を避けなければなりません。前述したように、あるキャリアを変調した変調波は周波数的な広がりを持つため、これが近くの周波数にまで及べばほかのキャリアの信号を妨害してしまいます。通常は、このためにキャリア周波数を一定以上離さなければなりません。

 さて、ここで、先ほどのデジタルデータのスペクトラムを見てください。

 所々、ゼロになっているところがあります。つまり、デジタルデータで変調した変調波は広がるものの、その強さがゼロになっているところがあるのです。周波数がこのような関係にあることを「直交」しているといいます。

 直交(直交関係あるいは直交性などともいいます)とは、ベクトルが直角に交わることをいいます。直交関係にあるベクトルを合成したベクトルを作ったとき、簡単に元の2つのベクトルに戻すことができるのです。

 数学では直交を「2つのベクトルの内積の結果がゼロになること」として定義します。これがベクトル以外に拡張されてさまざまなものに対しての「直交」が定義されます。このため、2次元や3次元のベクトルでは、直角に交わるという視覚的だった「直交」が、波(三角関数)や行列といったものにも適用され、視覚的なものではなくなってしまいました。ここでは、とりあえず、「直交関係にあるものは、合成されても元に戻せる」、あるいは元に戻せるような関係にあると理解しておいてください。

 さて、話を戻せば、このようなゼロになるところにほかのキャリア周波数を設定すれば、ほかの信号からの影響を小さくすることができます(図)。しかもデジタルデータなので、受信側は1か0かを判定できればいいため、アナログ信号などに比べると多少は、ほかの信号と重なっても受信が可能なのです。このようなスペクトラムの「隙間」を使うため、OFDMでは、狭い範囲に複数の信号を入れることができるのです。

OFDMでは、デジタル信号のスペクトラムの中でゼロになっているところに次のデータの中心周波数が来るようにサブキャリアを並べていく。こうすることで、ほかの信号の影響を受けずに複数のサブキャリアで同時にデータを送れる

 なお、通常のOFDMでは、個々のキャリアは、QAMなどで変調し、1つのキャリアで同時に複数のビットを送ることができるようにします。これをサブキャリア変調と呼びます。このため、OFDMを使うことでより多くのビットを同時に送信できるようになり、結果的に転送レートが高くなるのです。

 OFDMでは、サブキャリア変調で同時に複数ビットが送信され、さらにサブキャリアの数だけ、それらが同時に送信されます。サブキャリア変調で同時に変調されるビット数をnとし、データの送信に使うサブキャリアの数をmとすれば、n×mビットを同時に送信できます。これがOFDMの1シンボルになります。

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