MVNOの実態と課題──MVNOフォーラム(2/3 ページ)

» 2005年12月26日 13時29分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

Virgin Mobileは唯一の成功例

 MVNO事業者にはどんな例があるだろうか。MVNOの成功例として最も有名なのは英Virgin Mobileだ。T-Mobile UKのGSMネットワークを使い、レコード販売のVirgin Megastoresなどを使って携帯電話を販売。通信インフラは借り物でも、ビジネスが成り立つことを示した。

 Virgin Mobileの成功は熾烈な競争を生み出したことから、日本でも“MVNOを導入すべき”証拠として話されることが多い。しかし“海外で成功している”ことは、日本にもMVNOを導入すべき理由としては弱い。

 1つは成功例が多いとはいえないことだ。ADSL事業でネットワークインフラに特化することで成功したイー・アクセスは、携帯事業でもMVNOに成功の目があると踏む。しかし、ことはそれほど簡単ではない。「海外でもVirgin Mobileが唯一の成功例と呼ばれる。MVNOはまだまだビジネススキームとして確立していない」(イー・アクセスの携帯事業会社、イー・モバイルの諸橋知雄執行役員)

 2つ目は、データ通信先進国である日本の状況だ。Virgin Mobileの成功は、そのブランドだけでなく音声通話を中心とした価格戦略にある。日本でのMVNOは、音声ではなくデータ通信が中心になると見られており、その点でも未知数だ。「海外のMVNOは音声だけ。日本型のMVNO──3Gシステムの違いによる可能性の広がりがあるだろう」と、ボーダフォン法務省外統括部の西野茂生課長は話す。

多数のブランド同士が競争──多彩なニーズに応える

 とはいえ、MVNOにビジネスチャンスを見いだす事業者は数多い。その1つが、さまざまな携帯電話ブランド登場の可能性だ。2005年の端末市場がそうであったように、携帯に対するユーザーニーズの多様化は著しい。しかし、メガキャリア3社はそれに応えられていない。「横並びで似たようなサービスしか出てこない」──現在の携帯3社にこんなイメージがつきまとうのは、業界構造のせいでもある。

 MVNOに積極的なボーダフォンは、「ユーザーニーズが多様化するなか、キャリアだけではやれることに限界がある」(西野氏)と話す。MVNOは、打開手段の1つだ(11月16日の記事参照)

 コンテンツから販売、ネットワークインフラまですべてを自社でまかなう垂直統合モデルの場合、“マス”を狙わざるを得ない──。そう指摘するのは、インフォシティの岩浪剛太社長だ。「垂直統合モデルは、汎用性のある少数のブランドしか存在できない。個別ユーザーのニーズに応えるのは困難だ」

 この理由はネットワークインフラが設備集約型だからだ。しかし自社でネットワークを持たないMVNO事業者であれば、ニッチに特化したブランドを立ち上げることも可能になる。細分化したユーザーニーズに応えられる事業者環境が現れることが、MVNOへの期待の1つだ。

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