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» 2006年01月20日 11時55分 公開

端末とサービスのバランスがよいau春モデルの布陣 神尾寿の時事日想:

3日連続で行われた各キャリアの春モデル発表会。最終日となったKDDIのラインアップは、実によく練られた内容になっていた。どこが優れているのか?そのポイントを見ていこう。

[神尾寿,ITmedia]

 今年の各キャリア春商戦モデルは、ドコモボーダフォン、auと3日間連続で発表されることになった。最終日に発表したKDDIの内容は「春商戦の真打ち」と呼びたくなるほど充実していた(1月19日の記事参照)

 何よりもまず、ラインアップの構築が見事だ。今回、auは「欲しい携帯は必ずauにある」をコンセプトに(1月19日の記事参照)、個性重視のフルラインアップ路線をさらに強化した。これはFOMA開発環境の熟成でドコモの902i/702iシリーズでも実現しているが、auは全機種共通のキーワードとして「着うたフル」と「LISMO」、「GPS」を搭載することで、メリハリのある“機種ごとの個性”を訴求する一方で、“auならではの魅力”をしっかりと打ち出している。

 各セグメントへの配置もよく考えられている。今回、ハイエンド向けになるのが「W41T」と「W41H」で、前者がHDD搭載、後者が地上デジタルワンセグ対応という特徴的な高機能を持つ。そのため「販売価格はやや高めでスタートする」(KDDI)という。「W41CA」と「W41K」、「neon」はミドルレンジを担当し、その中で“機能的なスタンダード”、“カメラ重視”、“デザイン重視”を受け持つ。「W41S」と「W41SA」はエントリーモデルになり、その中で“音楽”や“コンパクト”といったニーズを吸収する。

 この布陣が分かりやすいのが、「おサイフケータイ」と「PCサイトビューアー」の配置である。この2つの機能は「W41H」と「W41CA」、「W41S」に搭載されており、ハイエンド・ミドルレンジ・エントリーのどの層からでも選択できるようになっている。

 また、今回の7機種の中で、ボリュームゾーンを担当するのは「W41CA」になるだろう。同機はスタンダードモデルに位置するが、特殊な機能を除けば“全部入り”。「販売価格を考えると、最もお買い得になるのではないか」(KDDI説明員)と話す。W41CAはそつのないデザインとパッケージであり、ブラック・ホワイト・オレンジという3色を持つことで、コンシューマーからビジネスまで広い守備範囲をカバーする。実際、+D QUICK POLLでもW41CAの人気は高く、“ボリュームゾーン”をしっかり押さえていることがわかる。

音楽とバックアップを軸に、“接続と連携”の世界を作る

 春商戦に向けたauの強みとして、サービス面の強化もあげられる。それが「au LISTEN MOBILE SERVICE」(愛称:LISMO)である。このサービスはデジタル音楽分野で盤石とも言える「iPod+iTunes」モデルに挑戦するもので、“音楽のau” というブランド戦略に大きく貢献するだろう。

 また今後を睨めば、LISMOがFMCの布石になっている点も注目である。KDDIはauの強みである「音楽」を最初のきっかけにして、ケータイユーザーにPC接続やサービス連携のリテラシーを広めようとしている。

 あまり注目されていないが、LISMO向けのPCソフト「au Music Port」(1月20日の記事参照)では着うたフルやリッピングした音楽以外にも、EZコンテンツやアドレス帳、スケジュール、フォト、ムービー、Eメールなどのバックアップが可能であり、さながら「音楽を軸足にした総合ケータイ管理ソフト」になっている。携帯電話のバックアップという側面からも、PC連携を訴求している点は興味深い。LISMOの当面の狙いはデジタル音楽市場での成功であるが、中長期的には様々なFMCサービスを見据えた布石がいくつも隠されていそうだ。

端末とサービスのバランスではau有利

 MNPを前にした今年の春商戦は、例年にも増して重要になる。その結果はふたを開けてみなければわからないが、端末ラインアップと新サービスのバランスではauが有利ではないか、と筆者は見ている。LISMOがサービスとして成功するかは今後にかかっているが、一般ユーザーに対する目新しさとブランドイメージ効果だけ見てもインパクトが大きい。

 一方、902i702iを擁するドコモは、端末ラインアップの布陣が厚く、バリエーション感においてauを上回る。特にスライド型やストレート型など、形状において選択肢が多いのはポイントが高い。しかし、702iシリーズ向けに新サービスが投入されず、902iシリーズ向けの新サービス「プッシュトーク」「トルカ」、「iD」などは、ユーザーに理解されるのに時間がかかる。春商戦に向けたキャリアの訴求ポイントが、やや端末側に偏っている印象だ。個々の端末の訴求力を販売につなげることが、春商戦におけるドコモの戦い方になるだろう。

 ボーダフォンは、端末とサービス面で着実によくなってきているが(1月18日の記事参照)、現時点で3Gの出遅れを取り戻せる段階まではきていない。端末ラインアップの数が少なく、投入された新サービスは価値はあるが堅実なものにとどまる。Love定額は引き続き同社の訴求力になるが、総合力を鑑みれば「春商戦は善戦すれば成功」だ。ドコモやauの脅威になるには、もうしばらくの時間がかかるだろう。

 むろん、筆者の予想は現時点の端末・サービス・料金プランを見てのものにすぎない。実際には各キャリアの営業力や販売促進の取り組みも大きく影響する。春商戦においてどのような嵐が吹くのか。今年は特に見逃せない戦いになりそうだ。

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