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» 2006年01月25日 11時00分 公開

健全な成長を続けるau。懸案は固定事業の不振 神尾寿の時事日想:

KDDIの第3四半期決算が発表された。au事業は好調、特に注目は「契約者数を増やしつつ、データARPUの向上している」点だ。なぜauではデータARPUの成長を維持できているのだろうか?

[神尾寿,ITmedia]

 1月24日、KDDIが2005年度第3四半期の決算を発表した(1月24日の記事参照)。移動体事業のauが好調な同社は2005年度通期の売り上げ見通しを期初の2兆9760億円から3兆410億円に上方修正した。

 KDDIの決算発表で注目なのは、au事業の健全性だ。ここ数年、auは純増シェア獲得において業界最大手のドコモを上回っている。だが、重要なのはむしろ「契約者数の増加をしながら、ARPUを上昇させている」ことだ。特に同社が、率先してパケット料金の値下げや定額制を打ち出しながら、一方でARPUを向上させているのは特筆に値するだろう。

 周知のとおり、携帯電話キャリアのARPUの中で、変動する要素が大きいのがデータ通信のARPUである。パケット料金定額制の導入前は、データARPUは一部の利用量の多いユーザーが平均値を引き上げる構図だった。しかし、各キャリアの定額制開始後は、パケット利用量の多いユーザーからの収入は頭打ちになる。また第3世代携帯電話ではパケット単価も下がるため、ユーザーの利用量が変動しなければ、自動的にデータARPUは下がってしまう。キャリアビジネスに重要なポイントが、ハイエンドユーザーの利用量をさらに伸ばすのではなく、これまでパケット利用量が少なかったユーザーを「いかに定額制に加入させるか」という“底上げ”に変化しているのだ。

 それを踏まえてKDDIの決算発表を見ると、WIN利用者が順調に伸びており、その中で定額制契約率が81%と極めて高い点が特徴的だ。ライバルのドコモは、パケット料金定額制をあくまでハイエンドユーザー向けと位置付け、ミドルユーザーやエントリーユーザーにはパケット料金割引のプランを用意している。一方、auは「WIN移行=ダブル定額」という路線を作り、事実上の定額制への一本化を狙っている(2005年3月23日の記事参照)。ダブル定額加入者は支払い上限がある安心感からか、パケット利用量が増加する傾向があるため、auの「間口を広げる」施策は収益面でも奏功していると見ていいだろう。

 一方、au事業における今後の注目は、「ツーカーからの移行ユーザーの多くをWIN=ダブル定額に加入させて、ARPUの底上げができるか」だ。これはKDDIがMNPに前後して新たな顧客を獲得してもARPUを下げずにすむか、という今後の健全性の試金石になる。

固定事業の苦戦は不安要因

 「量の拡大と質の向上」を両立させ、好調ぶりが目立つau事業に対して、KDDIの固定系事業はふるわない。固定系分野ではADSLの成長期が一段落し、FTTHが伸び盛りになっているが、KDDIはどちらも出遅れている。特に今後の成長分野であるFTTHで、すばやく加入者数を増加できるマンションタイプで出遅れているのが痛い。

 固定系事業では現在、「インターネット」「IP電話」「放送」のトリプルプレイに加えて、「モバイル」との連携が次のトレンドと目されている。固定系の通信事業者に端を発する携帯電話新規参入事業者はもちろん、NTTグループもNTTドコモとNTT東西が接近する中で、苦戦するKDDIの固定系事業は将来への禍根になる危険性がある。特にFTTH事業は重要だ。中長期的な視野に立てば、KDDIの光プラスシリーズがどこまでNTT東西に迫れるかは、携帯電話産業の視座からも注目しておく必要があるだろう。

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