1月31日、NTTドコモが第三四半期の決算を発表した(1月31日の記事参照)。昨日に続き、注目のポイントを見ていこう。
ドコモの決算発表によると、営業収益は3兆5822億円と前年同期と比べて609億円の減収、営業利益も6935億円にとどまり、その結果だけ見れば「減収・減益」だ。しかし昨年5月のコラムでも述べたとおり、2006年前半までのドコモの戦い方は「顧客基盤の強化」が中心になる。今回の減収減益の原因を見ても、すべて顧客基盤強化に繋がるもので、今期を通しての減収減益は、その内容に問題がなければ、むしろ好材料だ。特に筆者は902iシリーズが好調な点が、囲い込み効果に少なからず貢献すると考えている。
一方、最近特に注目されているのが、キャリア各社の解約率である。第3四半期の結果を見ると、ドコモが0.72%(月率)と最も少なく、auが1.11%(月率)、ボーダフォンが17.6%(年率)という結果になっている。ボーダフォンの解約率が他社よりも高いが、これは第3世代携帯電話移行の苦境期であることが主な原因だ。また、同社はプリペイド契約の解約率が高い数値での上昇傾向にあり、ポストペイド契約の解約率は減少している。ボーダフォンの解約率の現況は、3G事業への移行と健全化に伴う“痛み”の1つと言える。
さらに数値の違いはあれど、各キャリアの解約率はすべて「低下」の方向で推移している。この傾向には、大きく2つの理由がある。
1つは各キャリアのMNPを前にした「囲い込み施策」が順調に機能し始めていること。特にドコモは減収減益を辞さず、囲い込みに繋がる料金改定やサービス強化を積極的に行っている。その結果が、極めて低い解約率に現れている。
もう1つの理由が、MNPの認知がユーザーに与える影響だ。すでに一般マスコミを通じて、今年MNPが始まることは一般消費者に伝わり始めている。これが現時点での解約・キャリア変更を減少させている可能性が高い。実際、筆者が関わったクローズドな市場調査でも、MNPの認知度が高いユーザーほど、キャリアの乗り換えを控えるという傾向が見られた。特に法人・ビジネスユーザーでこの傾向は顕著だ。
現時点における解約率の低さは、嵐の前の静けさという側面がある。MNPに向かう中で、解約率は減少していくのが自然な流れだ。逆にMNP前に解約率減少のペースが著しく落ちたり、上昇傾向が見られたら、そのキャリアにとっては危険な兆候である。解約率の一点を取ってみても、MNPの戦いは静かに進展している。
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