放送と通信の連携により新たな収益獲得を目指すKDDI(2/2 ページ)

» 2006年02月06日 23時59分 公開
[園部修,ITmedia]
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放送メディアをトリガーにして、携帯電話からアクセスさせる

 神山氏は、現在KDDIが提供している「EZ FM」や「EZテレビ」のサービスを例に挙げ、放送メディアと携帯電話がうまく連携できることを説明した。

 EZ FMは、現在放送中のFMラジオ放送が聴けるだけでなく、オンエア中の曲名とアーティスト名を表示する「Now on Air」機能を持つ。端末に表示されるこの情報からは、着うたや着うたフル、CDなどの購入サイトに誘導する仕組みになっている(2004年8月27日の記事参照)。その結果、曲名検索利用者の着うたフルダウンロード数は、非利用者の2倍に上り、放送により購買が喚起されている様子が如実にうかがえるという。逆に、EZ FMの楽曲名表示機能があるからこそ、音楽情報に敏感な若年層がFMラジオを聴くようになっているという事情もある。KDDIにとっては売り上げの向上、FM放送局にとってはリスナーの増加という、双方にメリットがあるサービスになっている。

 アナログテレビの番組が試聴できるEZテレビでも、主題歌やCM楽曲などの曲名が検索できる「聴かせて検索」、放送局が広告やキャンペーン情報を記載した画像を表示できる「お知らせウィンドウ」などを用意し、テレビの視聴からモバイルコンテンツの利用を喚起する仕組みを用意した。この結果、ある音楽番組で「着うたランキング」が発表されると、「EZ Music!」の検索機能へのアクセスが平時の3倍に増える、といった関連性が見られるようになったという。「テレビによる触発効果は大きい」(神山氏)

 このためKDDIは、4月1日から本放送が始まるワンセグに大きな期待を寄せる。ワンセグ放送では、ゴーストや雑音がなく、アナログ放送よりずっときれいな画質でテレビが視聴できる。しかも、BML(Broadcast Markup Language)を用いたデータ放送サービスが提供されるため、放送から携帯コンテンツへの誘導が容易だ。「放送によってユーザーが何かに興味を持ったら、すぐ情報収集や購買行動にまで持っていくことができる」

Photo 放送がトリガーになって、携帯電話を用いてアクションを起こす、という図式を目指す。テレビで見たものを携帯電話から買う、といった効果を期待する

 位置情報サービス「EZナビウォーク」やEZチャンネルなどとの連携も図り、情報や商品へ簡単にアクセスできる仕組みを作り上げたい考えだ。放送を契機として携帯電話を用いて情報にアクセスさせるという図式は、クロスメディア広告などにも応用していきたいとする。

 「KDDIは、放送局に対し、ワンセグ端末や課金・決済システム、物販やGPSナビなどのプラットフォームを提供することで、放送局の事業拡大の土台を提供する。放送局はこのプラットフォームを利用して新たな収益を獲得できる」と結んだ。

Photo 放送業界は影響力を行使し広告主や視聴者から収益を上げる。通信業界はプラットフォームを提供することで新たな収益を得る
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