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韓国携帯事情:

KTの携帯「KT PCS」、KTFとどう違う?

韓国には「KT PCS」と呼ばれている携帯電話がある。韓国最大の通信会社であるKTが提供している携帯電話だ。1999年7月から販売されており、加入者数は200万人を超える。
2006年02月20日 11時08分 更新

 KT PCSはその名の通り、KTが販売しているPCS方式の携帯電話だ。KTといえば電話やブロードバンド回線を提供する通信会社だが、そんなKTを通じて携帯電話を購入することも韓国では可能だ。

 韓国において携帯電話関連の事業を規定している「電気通信事業法」には、「別定通信事業者」という項目がある。別定通信事業者は、自社でネットワークを持っておらずとも基幹通信事業者の回線を借りて電話サービスを提供したり、加入者を募集したりすることが可能だ。KTは、この別定通信事業者にあたり、携帯電話サービスを提供している。

KTFのネットワークを借用

 KTは子会社であるKTFの回線を借用して、携帯電話のサービスを提供している。その際「1分あたり88.99ウォンのネットワーク利用料をKTF側に支払うこととなっている」(情報通信部傘下の通信委員会担当者)。同じネットワークを利用しているので、KT PCSとKTFとの通話音質などに差はない。料金制度もKTFと同じだが、顧客管理をKT側で行っているため機種変更などの顧客サービスはKTFでなくKTの代理店に行って受ける必要がある必要がある。ちなみにKT PCSとKTF間での機種変更はできないので、どちらか一方からどちらかへ事業者を換えたい場合は、いったん解約してから新規加入しなければならない。

豊富な資金力でユーザーを誘致

 実は韓国の中でも、KT PCSの存在を知らない人は意外と多い。KT PCSはKTFのような大々的な宣伝が行われているわけではなく、ユーザー自体もそれ程多くないためだ。

 今年1月時点でのKT PCSの加入者は251万55人程度。これは、KT PCSも含むKTFの総加入者1237万3047人の約20%に相当する。さらに携帯電話の総加入者中では6.5%程度にとどまる。数値だけで見るとKT PCSユーザーは決して多いとはいえない。ただし広告を目にしない日はないほど莫大な広告費をかける他キャリアと、これとを比べることはできない。KTF内で20%を占めるという事実を、単に数字だけで低いと評価することはできないのだ。

 KT PCSの存在は口コミや店頭などで知ることが多い。加入の決定打となるのは、KTという企業自体の知名度。そしてKTFとサービスは同じでも、新規加入時に若干だが端末がKTFより安めであることだ。価格の違いはほかでもない、補助金が出されているためだ。

 「韓国では基本的に補助金は禁止だが、KTだけでなく携帯電話キャリアからも補助金は出されている(2005年3月22日の記事参照)。占有率が低いKTは、より多くの加入者を誘致しようとほかより多めに出しているのだろうし、またそれほどの資金力もある企業だ」と通信委員会担当者は語っている。

 同担当者がこう語るほど補助金については既に暗黙の了解になっているような状況だが、それより問題なのは「KT PCSの場合、KTFとの関係が深いためネットワーク利用料を、本来定められている額よりも低めに渡していること」(通信委員会担当者)だ。また暗黙の了解とはいえ、補助金が過度なほど出ればやはり問題となる。

 上記に関しては昨年も通信委員会による調査が行われ、28億ウォンもの課徴金がKTに課されたこともある。また国会などでもKT PCSや別定通信事業者の存在自体を議論するような話題が何度か上っている。

 資金力のあるKTがこのままの調子で携帯電話を販売し、市場における占有率を上げていけば他キャリアの脅威にもなり得る。またネットワーク利用料の差分によって莫大な利益を上げ続けるのであれば、いっそ1つのキャリアとして独立した方がよほど公正だろうという議論も増えるかもしれない。“第4のキャリア”KT PCSは、再考の必要がある存在だ。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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