3月24日、英SymbianのCEOであるナイジェル・クリフォード氏の来日に合わせ、シンビアンは記者向けの説明会を開催した。
ナイジェル氏は、2005年を振り返るとともに、今後の戦略、日本市場の位置づけなどについて話した。最も重要な話題として取り上げたのが、Symbian OSのライセンス料についてだ。
携帯電話の性能がまだシンプルだった頃には、メーカーが独自のリアルタイムOSを端末に載せるケースが多かった。しかし携帯電話の高機能化が進むにつれて、汎用OSを採用するメーカーが主流になってきている。
Symbian OSは高機能端末を中心に採用されている汎用OSの代表例だ。ナイジェル氏も「我々は携帯市場のマーケットリーダーであり、スマートフォンのリーダーでもある。特に3G市場では成功しており、3分の1がSymbian OSを採用している」と胸を張る。高機能端末が多く、3G化が進んでいる日本はSymbianにとって重要な市場であり、2005年に出荷されたSymbian OS採用携帯の出荷台数のうち、約12%を日本市場向け端末が占めている。「2005年下半期に発売された18機種のうち、9機種が日本向けだ」(ナイジェル氏)
高機能端末の好調を受け、今後は低価格帯向け端末にもSymbian OS搭載を目指す。Symbianは2月に、Symbian OSのライセンス料を見直し、従来の固定価格制に加えて、変動価格制の料金システムを追加、3種類の料金体系から選べるように変更した(2月9日の記事参照)。「次の市場へ進むための戦略変更だ」とナイジェル氏が話すように、新しい料金体系を導入したのは、低コストなマスマーケット向けの端末へ、Symbian OSの採用を進めるためだ。
従来の価格体系では、販売台数が200万台までは7.25ドル、それ以上は5ドルだった。新しい料金体系では、ライセンシー(端末メーカーなど)は「出荷する端末の卸値の割合による変動価格」または「ライセンシーの年間総出荷台数によって下がる変動価格」から料金を選択できる。出荷する端末の数が多ければ、ライセンス料金を下げることができ、最も安い場合では1端末あたり2.5ドルになる。7月1日以降、Symbian OS v9で新価格体系に対応する。
「汎用OSは今後世界的に伸びていく」とナイジェル氏は自信を見せる。
根拠はいくつかある。1つは、より高機能な端末が求められるようになると予測され、それにはリアルタイムOSよりも汎用OSのほうが適しているためだ。携帯市場は飽和しているのでは、という問いに対しても「市場が飽和しているということは、端末メーカーは差別化のためにより多くの機能を提供しなくてはならないということであり、我々にとってそれはむしろプラス」(日本シンビアン社長の久晴彦氏)、「日本の携帯市場は飽和しているかもしれないが、『日本の3G市場』は飽和していない。人口は増えなくても、買い換えニーズはなくならないので、5000万の潜在市場があると考えている」(ナイジェル氏)とする。
もう1つの汎用OSの強みが、統一プラットフォームをサポートすることにより、開発期間を短くする効果を望めることだ。久氏はSymbian OSを“ハンバーガーのパテ”に例える。
「上下のパンの部分、つまりドライバなどハードウェアに近いところや、逆にユーザーに近いUIなどの部分は迅速なカスタマイズが求められる。しかし間に挟まれたSymbian OSは、多様な機種やプラットフォームをサポートすれば(そのままで)いい」
UIやハードウェアのカスタマイズを早くするために重要なのが、共通の統一プラットフォームである。シンビアンは、ドコモが定義するFOMA向けプラットフォーム「MOAP」(Mobile Oriented Applications Platform)に協力している(2003年12月3日の記事参照)。
また低価格モデル向けには、1チップソリューションをサポートする。フリースケールが開発している「MXC300-30」は、W-CDMA向けにベースバンドチップとアプリケーションプロセッサを1チップ化したものだ(3月7日の記事参照)。
MOAPもMXC300-30も、サポートするOSはSymbian OSとLinux。今後、端末メーカーが統合プラットフォームを採用しようとすれば、ハイエンドでもローエンドでも、汎用OS採用端末は増える見込みだ。
ナイジェル氏は、ACCESSが携帯電話向けOS「ACCESS Linux Platform」を発表したことについて「ACCESSの戦略はマルチプラットフォームということで変わっていない。競合というよりはパートナーであり、今後もこの関係は変わらないだろう」と話した。
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