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» 2006年03月07日 18時33分 公開

フリースケール、3G向けシングルチップ「MXC300-30」をデモ

フリースケールは、ベースバンドチップとアプリケーションプロセッサを統合したW-CDMA向けのチップ「MXC300-30」のデモを行った。

[園部修,ITmedia]

 米Motorolaの半導体部門がスピンオフして設立した米Freescale Semiconductorの日本法人、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは3月6日、3G携帯電話向けチップ「MXC300-30」の概要と、日本での販売戦略について説明を行った。

 MXC300-30は、米Freescale Semiconductorが、3G携帯電話用シングルチップとして2005年11月1日に発表した「MXC」(Mobile eXtreme Convergence)アーキテクチャベースのW-CDMA向けチップだ。

ベースバンドチップとアプリケーションプロセッサを統合

 MXCアーキテクチャの特徴は、ベースバンドチップ(DSP+CPU)とアプリケーションプロセッサ(CPU)を1つのチップに統合した点にある。さらに「H.264」などのデコードとエンコードに対応したビデオアクセラレータや、最大4Mピクセルまでのカメラが制御できるインタフェースも内包しており、外付けのアプリケーションプロセッサを必要としない。通信系の処理を行うベースバンドチップとアプリケーションプロセッサ、それに高度なソフトウェアを動作させるためのプロセッサを別々に搭載するシステムと比べると、実装面積や部品点数、消費電力、開発コストなどあらゆる面で有利になる。

 ただ、単純にベースバンドチップとアプリケーションプロセッサを1つのチップに入れ込んだだけでは、コア間の通信などで生じるオーバーヘッドはなくせない。それぞれのチップに必要なメモリなどの外付けコンポーネントが減らないという問題もある。そのため、MXCではすべての通信処理をDSPコアで行うように設計し、アプリケーションはすべてCPUコア上で実行するよう完全に分離した新しいコアとしている。その上で、メモリインタフェースはすべての機能で共用のものを用意して、必要な実装量を減らしている。キャッシュメモリを活用して、極力外部メモリへのアクセスをせずに済むような工夫も施した。

PhotoPhotoPhoto 既存のアーキテクチャのそれぞれのコアを単純に足したものではなく、無駄を省いて統合している。従来のベースバンドとアプリケーションプロセッサを別々に搭載するシステム(左)よりも部品点数が大幅に減っているのが分かる(中)。またベースバンドとアプリケーションプロセッサは独立しているため、異なる通信方式や別のアプリケーションプロセッサとの接続も容易に対応できる(右)

 通信処理を行うベースバンドと、OSやアプリケーションを実行するアプリケーションプロセッサが独立しているということは、相互に依存する部分がないため、設計が容易になるというメリットがある。従来は通信処理をベースバンドとアプリケーションプロセッサの両方で行っていたため、アプリケーションプロセッサが変わるとベースバンド側のソフトウェアを書き換えたり、ベースバンドが変わるとアプリケーションのプログラムを組み直す必要があったが、その手間がなくなる。

 その結果、無線インタフェースが自由に組み合わせられるようになり、同じアプリケーションを用いてUMTS(W-CDMA)、EDGE、GSM/GPRSに対応した機器が製造可能になった。逆にベースバンド部はそのままに、アプリケーションプロセッサをARM1xベースのハイエンドコアやARM11ベースのミッドレンジコア、ARM9ベースのエントリーコアに切り替えることで、異なる価格帯の端末も短期間で容易に製造できる。

 MXC300-30は、ベースバンドにSC140eコアを、アプリケーションプロセッサにARM11コアを搭載したミッドレンジ向けのモデルだ。実装面積は18×20ミリとコンパクトで、コストは同社の従来製品と比べ約30%以上減、消費電流は40から50%減を実現するという。OSはSymbianとLinuxをサポートしている。

PhotoPhotoPhoto MXC300-30のブロック図(左)。ベースバンドにStarCoreのSC140eコアを、アプリケーションプロセッサにARM11コアを搭載する。ベースバンドとアプリケーションプロセッサは分離しているためソフトウェアの開発も容易だ(中)。MXC300-30では、H.264のデコード/エンコードが可能なほか、プッシュ・ツー・トークや4Mピクセルまでのカメラなどもサポートする(右)

「日本の携帯端末メーカーにぜひ採用してほしい」

 このような特徴を持ったMXC300-30だが、フリースケール・セミコンダクタとしては、ぜひ日本の端末メーカーに採用を働きかけたいという。

Photo フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンのワイヤレスグループジェネラル・マネージャー、友眞衛氏

 世界の携帯電話市場は拡大傾向にあるものの、その成長の大部分はフィンランドのNokiaや米Motorola、韓Samsungなどの大手メーカーが担っている。日本の端末メーカーの多くは出荷台数を減らしていて、状況は厳しい。しかし、同社のワイヤレスグループジェネラル・マネージャー、友眞衛氏は「今世界の携帯電話市場で進んでいる3Gへの本格的な移行とオープンOS採用の流れは、日本の携帯電話メーカーにとって大きなチャンスだ」とする。

 その理由として挙げるのは、3G携帯電話の出荷台数が急速に伸びていることと、その増加の大部分を日本市場が占めているという事実だ。今後世界の潮流になるであろうオープンOSの採用についても日本市場は進んでいて、2005年には世界で約10%しかないオープンOSの使用率が日本市場では約40%もあり、2008年にはこれが約70%にまで高まる見込みだという。そんな日本市場を主戦場としている日本メーカーが、3G携帯電話の普及とともに世界に打って出れば、必ず活躍できると説く。

 友眞氏は、日本の携帯電話メーカーが世界をリードしていく存在になるために、

  • 低価格化
  • デュアルモード化
  • 小型化
  • 安定した伝送系(モデム)の搭載
  • オープンOSへの対応
  • 低価格モデルから高機能モデルにまで対応可能なプラットフォーム戦略

が重要だとする。それに最適なソリューションとなるのが同社のMXCだと位置づけた。

 会場ではMXC300-30のリファレンスシステムを用いたデモも行い、Linux上で「Qtopia」が動作し、ゲームなどが実行できる様子を披露した。

PhotoPhotoPhoto W-CDMAのネットワークに接続して音声通話ができる様子をデモ(左)。またリファレンスシステムではLinuxが動作しており、GUI「Qtopia」が動作すること(中)や、ペン操作でゲームが実行できること(右)などを披露した
Photo デモに使用したリファレンスボード。中央にあるチップがMXC300-30だ

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