Intelの苦戦をよそに、盛りあがる携帯電話用統合チップ

» 2005年02月02日 21時34分 公開
[IDG Japan]
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 安価で強力な携帯電話機への需要が爆発的に拡大していることを背景に、携帯電話用半導体メーカーから新たな統合チップ設計が続々と登場している。その一方で、半導体世界最大手の米Intelは統合チップ事業で苦戦している。

 Freescale Semiconductorは2月1日、統合型の「MXC」アーキテクチャを発表し、アプリケーションプロセッサとEDGE(Enhanced Data Rates for GSM Evolution)モデムを組み合わせた同社初の統合設計に基づく製品のサンプル製造を、以前の親会社であるMotorolaが進めていることを明らかにした。Texas Instruments(TI)も先週、アプリケーションプロセッサとモデムに加えて携帯電話に必要なほかの数種類のチップを統合した新型プロセッサ設計をNokiaが採用すると発表している(1月24日の記事参照)

 だが、こうした携帯電話用チップの統合化の流れにIntelは取り残されている。携帯電話向け市場を狙った同社初の製品として開発された「Manitoba」というコードネームの統合チップは大きな注目を集めたが、ふたを開けてみるとマスマーケット向け携帯電話での採用例は皆無だった。その次世代アーキテクチャとなる「Hermon」は今後数年間に携帯電話への採用が進むとされているが、Intelは昨年フランスで開催された3GSM World Congressで発表して以来、Hermonプロセッサについて多くを語っていない。

 携帯電話はハードウェア業界で最も急成長している分野の1つ。iSuppliのデータによると、2004年の携帯電話の出荷台数は7億300万台と前年に比べ約23%伸びた。10〜12月期にはNokiaとMotorolaがそれぞれ出荷台数で1位、2位を占め、Samsung Electronicsが3位となったという。

 「携帯電話への需要はとどまるところを知らない。携帯電話はファッションツールやゲームのプラットフォームにもなっており、誰もが最新のオプション機能を欲しがっている」とForward Conceptsの主席アナリスト、ウィル・ストラウス氏は語る。

 半導体メーカーは、一般に統合チップより強力な、2個のチップから成るパッケージでハイエンド携帯電話への需要を満たしてきた。だが、統合チップは携帯電話に組み込むコストが大幅に少なくて済むとストラウス氏は語る。統合チップでは基板上のスペースを節約でき、設計の複雑さが軽減されるからだ。

 また同氏によると、製造技術が向上したおかげで、最新の統合チップでローエンドやミッドレンジの携帯電話の性能を高めることが可能になっており、ユーザーは以前と同じ値段でより強力な携帯電話を購入できるという。

 Freescaleは、統合型のMXCチップはIntelやTIのディスクリートチップに対抗できると考えていると、Freescaleの携帯事業ワールドワイドシステムアーキテクチャ担当マネジャー、ホセ・コーレット氏は語る。

 ディスクリート(個別)チップレイアウトを支持する見解の根拠の1つは、このレイアウトでは各チップごとに専用のメモリサブシステムを用意できるというものだ。だがFreescaleは、統合チップ上でキャッシュメモリを直接使用することで、不利だった点を克服したと考えている。この手法により、頻繁に使われるデータへのアクセス時間が短縮され、統合チップの性能が基本的なスタンドアロンのアプリケーションプロセッサに対抗できるレベルに向上するとコーレット氏は語る。

 携帯電話業界の進化とともに、ますます多くの半導体メーカーが顧客に対応するために統合チップに重点を置くようになるだろうとストラウス氏は見る。

 「人々は携帯電話を求めており、より豊富な機能性を求めているが、これまでより出費は増やしたくないと思っている」とストラウス氏。「メーカーとしてはより安い製品を作るしかなく、そのための切り札となるのが統合型の半導体だ」

 これは、携帯電話向けプロジェクトを軌道に乗せられずにいるIntelにとっても朗報だろう。同社のHermonプロセッサはUMTS/WCDMA(Universal Mobile Telecommunications Services/Wideband Code Division Multiple Access)ネットワーク、つまりいわゆる3G(第3世代)ネットワークをサポートする。高速データ通信が可能な3Gネットワークは米国や新興市場諸国では広く普及していないが、携帯電話業界はいずれはこの規格に移行することになる。

 Intelのアプリケーションプロセッサ「XScale」は、ディスクリートレイアウトを採用するハイエンド機向けの技術として多くの携帯電話メーカーから高く評価されている。だが、携帯電話メーカーはIntelの通信技術に賭けることには二の足を踏んでおり、世界上位3社のうち2社がほかの半導体メーカーへの支持を鮮明にしていることから、Intelのパートナーとなりそうな企業はかなり限られている。

 Intelは、2005年と2006年にHermonが大きな反響を呼び起こすと今も考えていると、同社の広報担当マーク・ミラー氏は語る。また同氏は、現在進んでいる携帯電話用チップの統合化への流れは、Intelがこの市場への進出を決断したことが正しかったことを証明するものだが、同社の投資回収はこれからだと話している。

 Freescale、TI、Intelの3社は、2月14日にカンヌで開幕する今年の3GSM World Congressで統合チップの計画や3Gネットワークへの対応について発表を行う見込みだ。

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