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» 2006年06月19日 10時39分 公開

Interview:携帯電話ビジネスはまだ成熟しておらず、さらに拡大していく──NTTドコモ (2/2)

[神尾寿,ITmedia]
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ドコモが目指す「差別化された音楽性能」

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 902iSでもうひとつ興味深かったのが、ドコモが「音楽」分野への取り組みを積極的に打ち出したことだ。言うまでもなく、音楽はauが強い領域である。

 「音楽をドコモとしても訴求したのは、音楽が携帯電話と相性がいいという事実があるからです。ユーザーのライフスタイルの中で、音楽が重要なのは我々も(以前から)わかっていた。だから、90xシリーズではすでに音楽プレーヤーの機能は入っているわけです。今回、特に重要なのは、F902iSのWMA(Windows Media Audio)対応の部分(5月11日の記事参照)。世界中を見ても、キャリア側からWMAに対応していくというのは新しい動きです。そして、もうひとつがHSDPA対応のiXシリーズで始めるミュージックチャンネル。この2つは他キャリアにはなく、世界中を見てもユニークで独自性のある機能。ユーザー側のベネフィットも大きいから、そこで今回はドコモとしても音楽を位置づけていこう、という事になった」(夏野氏)

 さらにWMAとミュージックチャンネルは、将来への布石という位置づけが強いという。

 「今回、902iSとiXで始めますが、これは903i以降に向けて進化していきます。(ドコモが目指すのは)差別化された音楽性能。今回は1機種ずつですが、当然ながら今後ラインアップは拡大していきます」(夏野氏)

ケータイで「映像コンテンツ」の日は来るか

 HSDPA時代の本格到来を前に、音楽に並んで期待がかかるのが、映像コンテンツやサービスの行方だ。この分野をドコモではどう見ているのか。

 「携帯電話で映像コンテンツということですと、我々は「iモーション」を展開していますが、これは(サービスとしては)大ヒットであるというのが我々の評価です。現在でもパケット通信トラフィックの5割程度がiモーションですから。しかし、ビジネスとして考えると、iモーションをご利用の方は当然ながらパケ・ホーダイ利用者で、見ている映像コンテンツも一般サイトが多いので、(トラフィックの多さとは)別の話になりますが」(夏野氏)

 映像コンテンツの世界に限らず、コンテンツ分野におけるドコモの強さは「ユーザー数が多いこと」と夏野氏は話す。

 「お客さんがたくさんいるということは、求められるコンテンツにもバラエティができる。ここがiモード的プラットフォームの強さなんですけど、コンテンツ流通の仕組みを用意すると、キャリアの予想も付かないような使い方やビジネスが生まれる。映像コンテンツ分野でいうと、我々がある程度コントロールする公式コンテンツはもちろん、一般サイト向けも機能を強化していこうと考えています」(夏野氏)

競争の主戦場はベーシックなもの

 各キャリアで3Gと定額制があたりまえのものになり、音楽や映像などリッチコンテンツが注目を集める機会が増えている。ドコモも音楽・映像コンテンツ分野に力を入れているが、一方で夏野氏はシンプルかつベーシックなサービスも重要だと説く。

 「実際の(サービス/コンテンツ)競争の主戦場というのは、やはりベーシックな部分じゃないですか。例えば、コミュニケーション系だとプッシュトークのようなもの、音楽分野ではちょっと地味ですけどメロディコールはすごく伸びている。またプッシュ系のサービスとしてはiチャンネルがヒットしています。こういったサービスは一見すると先鋭的じゃないですけれど、大きく成長しているわけです。また、iDとDCMXのような金融系サービスも確実に伸びる分野ですね。

 他の部分に目を向けると、端末のデザインをよくする、全国エリアをきっちり作るというのは、もう当たり前の世界としてドコモでは取り組んできた。こうしたベーシックな部分の積み重ねがとても大事」(夏野氏)

 また、派手さはなくても、先進技術が使われている分野もあるという。

 「例えば902iSで導入した生体認証。これは技術的にはすごく先進的なものが使われている。(セキュリティのために)主力ラインアップすべてに生体認証を導入するキャリアは、世界で初めてだと思いますよ」(夏野氏)

MNPは競争構造を変えるものではない

 ドコモは最大のシェアを持つことから、業界2位で力をつけてきたauと、ボーダフォンを買収して携帯電話業界に参入したソフトバンクの激しい攻勢を迎え撃つことになる。MNPに向けたこれからの戦いをドコモはどのように見ているのだろうか。

 「MNPそのものは競争構造を変えるものではない。もちろん競争は激しくなりますけれどね。各キャリアの解約率を見ると、MNPがない現在でも、年間1000万人くらいキャリア移動をしている。(MNPで)この数は増えるのでしょうけれど、解約率を下げるために各キャリアの方針にそって様々な対策するという構図は、今と変わらないのですよ。ですから基本スタンスはこれまでの延長線上になります。

 しかし、ドコモはこれまでナンバーワン企業としては少し甘めというか、自重気味に戦う傾向があった。このままではMNPではダメだと思います。(端末やサービス開発では)もっと知恵を絞りますし、お客様にアピールすべきはアピールしていく。特に営業部門は激しい競争の中でがんばっていくことになります」(夏野氏)

 さらにMNPは、携帯電話ビジネス全体にとってはプラスに働くという。

 「(MNPは)厳しい競争をする市場環境になりますから、我々(キャリアの)サラリーマン役員にとっては厳しい話ですけど、業界全体にとっては新たなサービスを生み出す可能性がある。新たなチャレンジ、トライアルをするには、市場環境が厳しくて競争状態の方が、いい状態だと思います。

 また、おサイフケータイの登場でビジネスも大きく広がってきています。例えば、今やコンビニエンスストアなど流通業も、(おサイフケータイという視点では)携帯電話ビジネスに関わってきている。携帯電話ビジネスは成熟しておらず、さらに拡大しています」(夏野氏)

 ここ数年、キャリアをはじめとする携帯電話業界はMNPを睨んでさまざまな取り組みをしてきた。しかし、MNPは終着点ではなく、おサイフケータイをはじめとする数々の分野・ビジネスがさらに広がる、新たなステージの始発点といえるかもしれない。

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