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» 2006年12月18日 17時55分 公開

韓国最先端技術のトレンドが見える――「ETRI」その研究内容とは韓国携帯事情

韓国標準だけでなく、世界標準となるような多くの技術を開発し続けている「ETRI」。同国を代表する研究機関の実像と、最新の研究内容に迫った。

[佐々木朋美,ITmedia]

 韓国通信業界における2006年最大のニュースとして、「WiBro」商用化が挙げられるだろう。「ETRI」(韓国電子通信研究院)は、韓国発の技術であるWiBroの開発に参加した機関の1つだ。同機関ではWiBroのみならず、韓国および世界標準となるような多くの技術を開発し続けている。ETRIとはどういった機関なのだろうか。

韓国を代表するR&Dセンター

 ETRI(Electronics and Telecommunications Research Institute)はその名の通り、情報通信・電子分野の研究を行い、普及させることで経済や社会の発展に寄与する目的の研究機関だ。WiBro以外にも、ここで開発されたというモバイル関連技術は数多く、取得取得の件数や韓国標準および世界標準技術となったものも数多い。あまり目立つことはないが韓国のモバイル技術の発信源となっている。

 ETRIは1976年、韓国科学技術研究院の付属機関として、韓国電子通信研究所が設立されたことに始まる。その後、さまざまな研究機関の統合が繰り返され、1997年に現在の名称となった。今年、2006年はETRIがちょうど30年を迎えたことになる。

 ETRIが開発した技術は、広く運用して発展させるために韓国企業に譲渡されている。最近ではモバイル機器で電子タグを読み取り、情報参照ができる「モバイルRFID」技術を、韓SK Telecomに委託する計画の発表があった。12月には同機関が持っている1300以上もの特許を、中小企業に移管している。韓国企業が利益を得られるようにするだけでなく、特許や標準技術によるロイヤリティ収入で国全体にも寄与するという大変重要な機関だ。

 現在韓国では、IT化が進んでも使う技術が外国製のため、他国へのロイヤリティの支払いが多すぎるといった点が問題となっている。韓国は人口が5000万人にも達しない小さい市場だ。そのため、核心技術を持ち、それに関連した製品を輸出するということが大変重要視されている。それを解決するためにも核心技術を開発する先端の研究所であるETRIは必要不可欠な存在といえる。

モバイルマッシュアップ、電磁波測定システム、次世代WiBroも開発中

photo 電磁波の影響を調査するために開発された、子どもの全身モデルデータベース

 ETRIが研究・開発に携わった技術で有名なのはWiBroやWIPIDMBなどが挙げられるが、このほかにもホームネットワーク/ウェアラブルコンピュータ/ロボット/RFIDなど多岐に渡って研究を行っている。

 とくに「IEEE802.16e」として世界標準ともなっているWiBroは、次世代バージョンとして2008年頃にアップグレードする予定。現行では、最低でも時速60キロでの移動中に利用可能だが、次世代WiBroではさらに速い速度でも利用可能になるという。さまざまな機能が追加される予定で、次世代バージョンでも世界標準を狙っている。

photo WIPI基盤のモバイルマッシュアップ技術

 また、DRMの違いから互換性がないキャリアの音楽配信サービスに対し、互換性を持たせる技術「EXIM」を開発したり、CDMA/無線LAN/WiBroを連携させてエリア内では途切れなく通信が可能なソフトウェアを開発するなど、不便さを解消するような技術開発も行っている。

 さらにノキアとWiBroや画像処理、次世代モバイル通信技術などに関して技術交流するなど、海外企業や機関との交流も盛んだ。

 最近では携帯電話などの電磁波が人体にどれほどの影響を与えるのかを評価できる、韓国人の子どもの全身モデルデータベースを開発した。皮膚から血液、内蔵までを再現した人体DBで、電磁波が人にどれほど影響を与えるのか調べることが可能だ。

 基幹となる技術の開発だけでなく、それらをどのように活用するのかという取り組みも行っている。最近では、WIPIを基盤としたモバイルマッシュアップの開発にも成功した。この時運用されたのは、Google Earthの写真の上に、Yahoo!の天気情報と、携帯のカメラで撮った写真およびメッセージを一緒に記録・紹介できるようにするというものだ。

 このように次々と開発される技術は、韓国政府の政策もあり、ほとんどが韓国で実際に商用サービスとして運用される。現在韓国政府は、いわゆるユビキタス社会を構築するための戦略「u-IT839」を実行するため、さまざまなインフラ規格やソフトウェアなどの開発にたずさわっているからだ。

 ETRIの開発した技術や動向をチェックすることで、韓国の技術トレンドや政府によるIT政策が見えてくることが大変多い。ちなみに、韓国最高の研究所であるETRIは、工学系の学生の間では憧れの就職先の1つでもあるという。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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