去る12月15日〜18日、「DMB EXPO 2004」が韓国で初めて開催された。DMBとは“Digital Multimedia Broadcasting”のことで、日本でいうデジタル放送を「地上波DMB」、モバイル放送を「衛星DMB」と呼んでいる。展示会には、SamsungやLGなどのメーカから、MBCやKBCといった地上波放送局までが参加し、韓国DMBのこれからを提示した。衛星DMBを中心にリポートする。
日本では東芝が中心となって推進しているモバイル放送だが、韓国ではSK Telecomが放送事業への進出に積極的。日本のモバイル放送と提携し、日韓共同の衛星打ち上げを実現するなど衛星DMB事業に力を入れている。韓国での衛星DMB事業権を取得し、同事業を主催する「TUメディア」もSK Telecomの子会社だ。
韓国では衛星の打ち上げシーンがCMで流されるなど、大々的な宣伝活動を行ったものの、サービスはいまだ開始されておらず、認知度もいま1つだ。その理由は事業者と地域放送協議会の対立にある。
TUメディアは「(衛星DMBにおいて)衛星放送番組のほか、地上波番組も放送されていい」と主張したものの、地方の放送局は「衛星DMBが地上波番組までサービスすれば、地域の放送局が立ち行かなくなる」として反対。この問題の決定権を握る行政機関の放送委員会は後日、衛星DMB問題を議論したが、地域放送協議会の強い反発で話がまとまらず、結論は来年3月に持ち越された。そのため当初は12月だったサービス開始が、来年1月に試験放送、5月に商用放送開始と延期されている。
開始が遅れている衛星DMBだが、チャンネル数は映像14チャンネル(モバイル専用チャンネル1つ、モバイル総合編成チャンネル3つ、ジャンル別専門編成チャンネル8つ、ペイ・パー・ビュー1つ、予備1つ)、ラジオ24チャンネル(ノンストップ音楽放送11個、DJ音楽放送4つ、バラエティ放送7つ、予備2つ)と、日本のモバイル放送より多いチャンネル数で開始される予定。データ放送は2006年から開始予定だ。
番組内容についてはまだ明らかにされていないが、モバイル専用チャンネルは、モバイル用の小さな画面でも楽しむことのできるコンテンツ、またジャンル別専門編成チャンネルでは、スポーツや芸能などの分類がなされるという。
料金は、加入費が2万ウォン(約2000円)で、受信料は1カ月に一般1万3000(約1300円)ウォン、ペイ・パー・ビュー7000、3000、1500ウォンとなる予定。TUメディアでは、衛星DMBの特性に合った、新しいコンテンツ開発や映像産業の支援などのため、今後5年間で7052億ウォンを投資する計画だ。
「DMB EXPO 2004」で最も注目を集めたのは、やはりSamsungのブースだ。Samsungは、衛星DMB対応で来年1月発売予定の「SCH-B100」(SK Telecom)をはじめとした端末を展示。自社の携帯電話ブランドである「Anycall」DMB放送局と題した、DMBの体験ゾーンを設けたほか、DMBフォンにPDPをつなぎ、大画面で衛星DMBを楽しむ提案をしていた。
Samsungと双璧をなすLGのブースでも、衛星DMB対応端末などの展示が行われた。TUメディアのブースでは、衛星DMBの仕組みを図式で紹介していたほか、専用端末で衛星DMBをアピールしていた。
訪れた人の中には、衛星DMBと地上波DMBの違いが分からないといった人や、2、3年後に開始するサービスと思い込んでいる人もいるなど、一般ユーザーの認識としてはいまひとつだったが、キャリアやメーカー側の期待は大きい。SK Telecomの試算では、DMB加入者数は、2005年に100万人、2007年には黒字転換できるとされる400万人を見込んでいる。そのためにはまず、地上波放送局との折り合いをつける、コンテンツを充実させるなどの課題が不可欠だ。それは日本にもそのまま当てはまることといえるだろう。
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